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早く家につかないかなーと、とんでもなく居心地が悪くなった馬車の中で過ごす事2時間くらいだろうか。やっと止まった。
それにしても、サスペンダーというのだったかしら? 衝撃吸収が少ししかされないからお尻と腰が痛くなっちゃったわ。
「え、どっこいしょ」
立ち上がる時ついつい口癖を言って、腰をトントン右手の拳で叩いてしまった。
「ユス、おばあさんみたいな事をしないでくれ」
「……。ごめんなさいねぇ?」
全く悪いと思っていなさそうに謝罪を口にする。
なんか、幻滅したーみたいな目で見て来るんだけど、ちょっとムカっときちゃうわね。おばあちゃんでも、腹立つ時は腹立つわよ? 仏様じゃないんだから。
「あれまあ、大きなお城だねぇ」
「……、話し方! せめて、ちゃんとご令嬢らしくして」
「あらやだ。気を付ける事にするわ。ほほほほ」
がっくり肩を落としたカクの姿を見ると、このままマイナスイメージだろうがなんだろうが、この子との結婚はなくなりそうだと、心の中でニヤリと笑った。
そっちだって、見た目は若いけど、中身50手前のバ〇アグラ必須だったおっさんのくせに!
玄関を開けて入ると、執事さんかな? すごいスラっとした、でも、しっかり胸板のあるイケメンが立っていた。年は35くらいかな?
うーん、若いわねえと思いながらニコニコ出迎えてくれたのでペコペコしながら、
「ありがとうねぇ」
って、伝えると少しびっくりしたように目を開かれてしまった。
「ゆーちゃん?」
「え?」
執事さんは、苦労しているのか、ふさふさだけど所々白髪が混じる黒髪で、アーモンドみたいなくりんとした目の色は暗い茶色で、前世でいやというほど見てきたのっぺりとした顔つきだ。
「いえ、失礼しました。旦那様がお待ちですので、どうぞこちらへ……」
周囲にもたくさんメイドさんかな? かわいい子たちが並んでいる中、イケメン執事さんについて行く。扉を開けると、そこは応接室のようだ。まるで、セレブ御用達のようなそこに、ジュスティーヌちゃんのご両親っぽい人たちがすでに座っていた。
「ジュスティーヌ……、先ぶれですでに聞いたが……。婚約破棄されて、隣国の王子と騎士団長の息子に求婚されて、しかも記憶を失ったそうだな?」
「あ、はい。そんな感じですね」
「……そんな平民のような言葉づかいに、応じ方なんて……。礼儀作法も忘れてしまったの?」
「あー、すみません。これが精一杯ですねー」
ショックを受けたジュスティーヌちゃんのご両親があまりにも気の毒で、何度も何度も頭を下げた。そうすればするほど、さらにショックが重なって、お母さんのほうは気絶してしまった。
「えらいこっちゃのすけー! ちょっと、おかーさん、しっかりー!」
慌てて立ち上がり、お母さんを介抱する。その姿を見て、部屋にいる人たち、使用人含めて10人ほどが顎が外れんばかりに驚愕していたのである。
カチコチと大きな古時計、いや、作りたてっぽいから新しいか。左右に穴があり、ジーコジーコねじを巻くやつ。振り子が左右に動く音が続き、お母さんが目を覚ました。その間に、お父さんとお話させてもらい、社交界は無理だと判断されちゃいました。
「跡継ぎは、カク君がいるし、別にいいんじゃないでしょうかー? あ、贅沢しないんで、どこか静かなところに小さな家と一生暮らせる資金とか生活必需品くれたら嬉しいです! 小さな会社とか、不労所得的なものもあるとさらに!」
「……ああ、なんという事だ……。王子の身勝手な態度のせいでうちの子が……! おのれ、許さんぞ!」
「あ、王子はどうでもいいので、今後の私の生活を考えて~」
「わたくしのジュスティーヌがぁ……。おしとやかで完璧な令嬢に育てたあの子が……! なんてこと……!」
「あ、なにかすみません……」
「謝らなくていいと思う」
「あんたにゃ謝らん。申し訳ないと思うのはお父さんとお母さんだけだから!」
苦虫を噛んだような顔をするので、ばーかばーかとカクに向かってジェスチャーつきで変顔をやって見せた。そうしていると、部屋に控えていた、お迎えの時のすらりとしたイケオジさんが口を開いた。
「旦那さま……。お嬢様は私が一生面倒を見ますから、領地の一角で暮らさせて差し上げるのが一番かと……」
「バスティアン……。お前はいずれこの屋敷の筆頭執事にする予定だったのだが」
「……。遠く離れた場所でお嬢様がかどわかされたり何かあれば大変でございます。ですから、どうぞ私にお嬢様を守らせていただけないでしょうか?」
「あなたがそう言ってくれるなら心強いけれど。田舎になるだろうし、いいの?」
「はい。一通りの家事も出来ます。お嬢様の望みのまま、平和に人生を全うできるよう誠心誠意お仕えいたします」
あらまあ、すんごいタナボタなんじゃないかしら?
どうやらこのイケメンさんは、大都会で大企業の重役ポジションを捨てて左遷ともいえる配置を自ら望んでくれるなんて神かな? あら? もしかしてここん家の仕事がブラックだったから疲れちゃったのかしら。それなら、彼の心の療養のためにも一緒に行きましょう。そうしましょう。
「あのー、わたしも、お父さんとお母さんが信頼する彼が一緒だと心強いし嬉しいですー」
見た目はピチピチだけど、中身は永遠の20歳である私に興味が一ミクロンも無くなったカクは反対する事はなかった。
ほらねー。カクは、前世で何があってもこれからは一緒だっつったって、自分の思い描く理想の女と、ちょーっとでも逸脱したらこうなるんだよー。カクみたいな男はずっと心が移ろうし、こんなセレブじゃあ浮気しほうだいだよねー。
ほんっと、こいつと結婚とかしなくてすんで良かったー!
※明日から作者のストレス発散のため、溺愛からのらぶえっちになります。
見直し時間が仕事が忙しくって足らないので、更新1~2回/日になります。
明日は2回あげれると思います。
それにしても、サスペンダーというのだったかしら? 衝撃吸収が少ししかされないからお尻と腰が痛くなっちゃったわ。
「え、どっこいしょ」
立ち上がる時ついつい口癖を言って、腰をトントン右手の拳で叩いてしまった。
「ユス、おばあさんみたいな事をしないでくれ」
「……。ごめんなさいねぇ?」
全く悪いと思っていなさそうに謝罪を口にする。
なんか、幻滅したーみたいな目で見て来るんだけど、ちょっとムカっときちゃうわね。おばあちゃんでも、腹立つ時は腹立つわよ? 仏様じゃないんだから。
「あれまあ、大きなお城だねぇ」
「……、話し方! せめて、ちゃんとご令嬢らしくして」
「あらやだ。気を付ける事にするわ。ほほほほ」
がっくり肩を落としたカクの姿を見ると、このままマイナスイメージだろうがなんだろうが、この子との結婚はなくなりそうだと、心の中でニヤリと笑った。
そっちだって、見た目は若いけど、中身50手前のバ〇アグラ必須だったおっさんのくせに!
玄関を開けて入ると、執事さんかな? すごいスラっとした、でも、しっかり胸板のあるイケメンが立っていた。年は35くらいかな?
うーん、若いわねえと思いながらニコニコ出迎えてくれたのでペコペコしながら、
「ありがとうねぇ」
って、伝えると少しびっくりしたように目を開かれてしまった。
「ゆーちゃん?」
「え?」
執事さんは、苦労しているのか、ふさふさだけど所々白髪が混じる黒髪で、アーモンドみたいなくりんとした目の色は暗い茶色で、前世でいやというほど見てきたのっぺりとした顔つきだ。
「いえ、失礼しました。旦那様がお待ちですので、どうぞこちらへ……」
周囲にもたくさんメイドさんかな? かわいい子たちが並んでいる中、イケメン執事さんについて行く。扉を開けると、そこは応接室のようだ。まるで、セレブ御用達のようなそこに、ジュスティーヌちゃんのご両親っぽい人たちがすでに座っていた。
「ジュスティーヌ……、先ぶれですでに聞いたが……。婚約破棄されて、隣国の王子と騎士団長の息子に求婚されて、しかも記憶を失ったそうだな?」
「あ、はい。そんな感じですね」
「……そんな平民のような言葉づかいに、応じ方なんて……。礼儀作法も忘れてしまったの?」
「あー、すみません。これが精一杯ですねー」
ショックを受けたジュスティーヌちゃんのご両親があまりにも気の毒で、何度も何度も頭を下げた。そうすればするほど、さらにショックが重なって、お母さんのほうは気絶してしまった。
「えらいこっちゃのすけー! ちょっと、おかーさん、しっかりー!」
慌てて立ち上がり、お母さんを介抱する。その姿を見て、部屋にいる人たち、使用人含めて10人ほどが顎が外れんばかりに驚愕していたのである。
カチコチと大きな古時計、いや、作りたてっぽいから新しいか。左右に穴があり、ジーコジーコねじを巻くやつ。振り子が左右に動く音が続き、お母さんが目を覚ました。その間に、お父さんとお話させてもらい、社交界は無理だと判断されちゃいました。
「跡継ぎは、カク君がいるし、別にいいんじゃないでしょうかー? あ、贅沢しないんで、どこか静かなところに小さな家と一生暮らせる資金とか生活必需品くれたら嬉しいです! 小さな会社とか、不労所得的なものもあるとさらに!」
「……ああ、なんという事だ……。王子の身勝手な態度のせいでうちの子が……! おのれ、許さんぞ!」
「あ、王子はどうでもいいので、今後の私の生活を考えて~」
「わたくしのジュスティーヌがぁ……。おしとやかで完璧な令嬢に育てたあの子が……! なんてこと……!」
「あ、なにかすみません……」
「謝らなくていいと思う」
「あんたにゃ謝らん。申し訳ないと思うのはお父さんとお母さんだけだから!」
苦虫を噛んだような顔をするので、ばーかばーかとカクに向かってジェスチャーつきで変顔をやって見せた。そうしていると、部屋に控えていた、お迎えの時のすらりとしたイケオジさんが口を開いた。
「旦那さま……。お嬢様は私が一生面倒を見ますから、領地の一角で暮らさせて差し上げるのが一番かと……」
「バスティアン……。お前はいずれこの屋敷の筆頭執事にする予定だったのだが」
「……。遠く離れた場所でお嬢様がかどわかされたり何かあれば大変でございます。ですから、どうぞ私にお嬢様を守らせていただけないでしょうか?」
「あなたがそう言ってくれるなら心強いけれど。田舎になるだろうし、いいの?」
「はい。一通りの家事も出来ます。お嬢様の望みのまま、平和に人生を全うできるよう誠心誠意お仕えいたします」
あらまあ、すんごいタナボタなんじゃないかしら?
どうやらこのイケメンさんは、大都会で大企業の重役ポジションを捨てて左遷ともいえる配置を自ら望んでくれるなんて神かな? あら? もしかしてここん家の仕事がブラックだったから疲れちゃったのかしら。それなら、彼の心の療養のためにも一緒に行きましょう。そうしましょう。
「あのー、わたしも、お父さんとお母さんが信頼する彼が一緒だと心強いし嬉しいですー」
見た目はピチピチだけど、中身は永遠の20歳である私に興味が一ミクロンも無くなったカクは反対する事はなかった。
ほらねー。カクは、前世で何があってもこれからは一緒だっつったって、自分の思い描く理想の女と、ちょーっとでも逸脱したらこうなるんだよー。カクみたいな男はずっと心が移ろうし、こんなセレブじゃあ浮気しほうだいだよねー。
ほんっと、こいつと結婚とかしなくてすんで良かったー!
※明日から作者のストレス発散のため、溺愛からのらぶえっちになります。
見直し時間が仕事が忙しくって足らないので、更新1~2回/日になります。
明日は2回あげれると思います。
応援ありがとうございます!
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