16 / 58
13歳、初めての戦場にて②R15(残虐行為の方)
しおりを挟む
死刑確定の罪人の命を断ち切ります。戦場に行くための通過儀礼のような設定です。ご注意ください。
ここも、読まなくても物語は進みます。(今後出たとしてもにおわせ程度ですので次回以降はご安心ください)
「ぼっちゃん、まずはそこにいて見ていてください。質問には必ず答えるように。いいですね? おい、連れて来い」
クロヴィスが、サヴァイヴを連れて拷問用の地下牢につくと、屈強な牢番が一人のやせ細った後ろ手に縛られ、重り付きの足かせをつけた男を乱暴に引きずるように連れて来た。いや、荷物を運んできたといったほうが正確だろう。
サヴァイヴは、すでに拷問の様子を知っており参加していたため、何か機密事項を吐かせるためにこれから男をそうするのだろうかと思った。それにしては、クロヴィスの様子が、一見平常だがいつも一緒にいるサヴァイヴにしてみればピリピリしており雰囲気がおかしい。
「お、おゆるしを……、いのち、いのちだけはぁ、ぐあっ!」
男が、命乞いを始めた途端、血と体液で汚れがこびりついた冷たい床に投げ出され野太い枯れた咽から悲鳴が上がる。
「この男は、山賊の一味で、殺人、婦女暴行、誘拐などを犯した死刑囚です」
「……」
なぜ、今更罪がはっきりしており処刑が確定している男を連れて来たのか分からず首を傾げる。
「ぼっちゃん、ここは戦場です。床に寝そべった男がいます。この場合手足がしばられ身動きすら叶いませんし戦意を消失しております。一撃で戦闘不能になる効果的な場所、あるいは即死する場所を言ってください」
サヴァイヴは、目下の男を見た。すでに命乞いしかできない男だ。
「生かす必要があるのなら、足の腱や、上腕の神経を横なぎに断ち切る」
すると、クロヴィスはおもむろに剣を抜き、サヴァイヴの言った通りの事を瞬時にやってのけた。血が飛び散り、男の悲鳴が部屋全体を埋め尽くし、耳をふさぎたくなったが、塞げばクロヴィスの血濡れの剣先がサヴァイヴのほうへ向くだろう。
驚愕しつつ、これはいつもの拷問ではないと確信して冷や汗を流す。
「ひぃいいぎぃ! た、たすけ、て……! たすけてくれええええ!」
「ここが戦場なら、声が大きくて周囲に気付かれる。どうしましょうか? あなたの言う通りにしたら、男の援軍が来て包囲されて全滅したかもしれませんね?」
「……!」
情報量が少ないとはいえ、戦場ならばそんな事は当たり前だ。その中での一瞬の判断ミスが大勢の、自分の命を危うくする。
「まず、情報が必要か必要でないか、そのような状況を作ってはなりません」
クロヴィスの剣が、男の首をかっきる。痙攣をおこしたのち、男は命の灯を消した。
「……」
「次、連れて来い」
クロヴィスの表情からは何も読み取る事ができない。牢番は言い知れぬ恐ろしさが体の奥底から湧き出て、操り人形のように言われたように次々と死刑囚を運んできた。
「……、もう、やめてください……先生、やめて」
「なぜです? 最初に伝えたはずです。この者たちは死刑囚だと。彼らに命を弄ばれ散った、罪のない人がたくさんいます。ここで処刑執行したまでです」
「これは、処刑ではない、私刑、とも違う気がしますけれど、こんなのは間違っている!」
「なるほど、手を汚し、目と心に焼き付ける事は他人がやればいいと」
「そんな事は、言ってない!」
「意図は違うにしても、結果はそうですよ? で、次のこの男はどうしましょうか?」
「もういい……、せめて、一撃で殺してやってくれ……」
サヴァイヴは、視線を床に落とした。体の力が入らない。殺されていった罪人たちよりももっと心が擦り切れてしまい、何も考えられなくなっていた。
「剣も上達し、体も鍛え上げられました。自信もつき、一日も早く戦場に出て、領主様の手伝いをしたいという心意気はご立派です。ですが、戦というのはもっと理不尽な命のやり取りの場です。感情を殺せ、とまではいいません。ですが完璧にコントロールし、他者に見せてはなりません。あなたは一兵卒ではないのです。あなたの一言が、部下を、仲間を、領民を、そして、ご領主様の命を奪う一投石になりえるのです」
「だからといって、こんな……」
「この程度で心折れるくらいなら、砦の角で震えて膝を抱えていなさい。曲がりなりにも次期領主たるあなたを、皆が守ってくれますよ」
「……!」
「ぼっちゃん、いえ、サヴァイヴ様。目をそらさず見るのです。それが出来ないのならお飾りの領主と家に震えながら閉じ籠りお生き下さい。周囲の者だけが、敵襲や小さな小競り合いで大ケガや命を落とすでしょう」
いつの間にか、両目から大量の涙を流していた。
こんなに泣くのは物心ついてからなかった。無表情の、自分よりも背の高い先生が見下ろしている。彼の瞳は凍てつくようだ。このまま何もしなければ、もう彼に見放されて、先程言われた通りの人生を歩む事になるだろう。
サヴァイヴは、右の前腕でぐいっと顔を乱暴に拭う。キッと先生を睨みつけるように真剣にその無感情の瞳を見返した後、腰に挿した、お飾りではない愛用の剣を手に取った。
新たに連れてこられた男の罪状など知らない。いつ、処刑になる予定だったのかも。だが、過去には残虐だったであろう男が、震えて懇願する瞳を見ても恐ろしいとも憐れだとも思えない。
サヴァイヴは、目をしっかり開けたまま、男のさらけ出された無防備な首に剣を突き立てたのであった。
ここも、読まなくても物語は進みます。(今後出たとしてもにおわせ程度ですので次回以降はご安心ください)
「ぼっちゃん、まずはそこにいて見ていてください。質問には必ず答えるように。いいですね? おい、連れて来い」
クロヴィスが、サヴァイヴを連れて拷問用の地下牢につくと、屈強な牢番が一人のやせ細った後ろ手に縛られ、重り付きの足かせをつけた男を乱暴に引きずるように連れて来た。いや、荷物を運んできたといったほうが正確だろう。
サヴァイヴは、すでに拷問の様子を知っており参加していたため、何か機密事項を吐かせるためにこれから男をそうするのだろうかと思った。それにしては、クロヴィスの様子が、一見平常だがいつも一緒にいるサヴァイヴにしてみればピリピリしており雰囲気がおかしい。
「お、おゆるしを……、いのち、いのちだけはぁ、ぐあっ!」
男が、命乞いを始めた途端、血と体液で汚れがこびりついた冷たい床に投げ出され野太い枯れた咽から悲鳴が上がる。
「この男は、山賊の一味で、殺人、婦女暴行、誘拐などを犯した死刑囚です」
「……」
なぜ、今更罪がはっきりしており処刑が確定している男を連れて来たのか分からず首を傾げる。
「ぼっちゃん、ここは戦場です。床に寝そべった男がいます。この場合手足がしばられ身動きすら叶いませんし戦意を消失しております。一撃で戦闘不能になる効果的な場所、あるいは即死する場所を言ってください」
サヴァイヴは、目下の男を見た。すでに命乞いしかできない男だ。
「生かす必要があるのなら、足の腱や、上腕の神経を横なぎに断ち切る」
すると、クロヴィスはおもむろに剣を抜き、サヴァイヴの言った通りの事を瞬時にやってのけた。血が飛び散り、男の悲鳴が部屋全体を埋め尽くし、耳をふさぎたくなったが、塞げばクロヴィスの血濡れの剣先がサヴァイヴのほうへ向くだろう。
驚愕しつつ、これはいつもの拷問ではないと確信して冷や汗を流す。
「ひぃいいぎぃ! た、たすけ、て……! たすけてくれええええ!」
「ここが戦場なら、声が大きくて周囲に気付かれる。どうしましょうか? あなたの言う通りにしたら、男の援軍が来て包囲されて全滅したかもしれませんね?」
「……!」
情報量が少ないとはいえ、戦場ならばそんな事は当たり前だ。その中での一瞬の判断ミスが大勢の、自分の命を危うくする。
「まず、情報が必要か必要でないか、そのような状況を作ってはなりません」
クロヴィスの剣が、男の首をかっきる。痙攣をおこしたのち、男は命の灯を消した。
「……」
「次、連れて来い」
クロヴィスの表情からは何も読み取る事ができない。牢番は言い知れぬ恐ろしさが体の奥底から湧き出て、操り人形のように言われたように次々と死刑囚を運んできた。
「……、もう、やめてください……先生、やめて」
「なぜです? 最初に伝えたはずです。この者たちは死刑囚だと。彼らに命を弄ばれ散った、罪のない人がたくさんいます。ここで処刑執行したまでです」
「これは、処刑ではない、私刑、とも違う気がしますけれど、こんなのは間違っている!」
「なるほど、手を汚し、目と心に焼き付ける事は他人がやればいいと」
「そんな事は、言ってない!」
「意図は違うにしても、結果はそうですよ? で、次のこの男はどうしましょうか?」
「もういい……、せめて、一撃で殺してやってくれ……」
サヴァイヴは、視線を床に落とした。体の力が入らない。殺されていった罪人たちよりももっと心が擦り切れてしまい、何も考えられなくなっていた。
「剣も上達し、体も鍛え上げられました。自信もつき、一日も早く戦場に出て、領主様の手伝いをしたいという心意気はご立派です。ですが、戦というのはもっと理不尽な命のやり取りの場です。感情を殺せ、とまではいいません。ですが完璧にコントロールし、他者に見せてはなりません。あなたは一兵卒ではないのです。あなたの一言が、部下を、仲間を、領民を、そして、ご領主様の命を奪う一投石になりえるのです」
「だからといって、こんな……」
「この程度で心折れるくらいなら、砦の角で震えて膝を抱えていなさい。曲がりなりにも次期領主たるあなたを、皆が守ってくれますよ」
「……!」
「ぼっちゃん、いえ、サヴァイヴ様。目をそらさず見るのです。それが出来ないのならお飾りの領主と家に震えながら閉じ籠りお生き下さい。周囲の者だけが、敵襲や小さな小競り合いで大ケガや命を落とすでしょう」
いつの間にか、両目から大量の涙を流していた。
こんなに泣くのは物心ついてからなかった。無表情の、自分よりも背の高い先生が見下ろしている。彼の瞳は凍てつくようだ。このまま何もしなければ、もう彼に見放されて、先程言われた通りの人生を歩む事になるだろう。
サヴァイヴは、右の前腕でぐいっと顔を乱暴に拭う。キッと先生を睨みつけるように真剣にその無感情の瞳を見返した後、腰に挿した、お飾りではない愛用の剣を手に取った。
新たに連れてこられた男の罪状など知らない。いつ、処刑になる予定だったのかも。だが、過去には残虐だったであろう男が、震えて懇願する瞳を見ても恐ろしいとも憐れだとも思えない。
サヴァイヴは、目をしっかり開けたまま、男のさらけ出された無防備な首に剣を突き立てたのであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
幼馴染の許嫁
山見月 あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。
彼は、私の許嫁だ。
___あの日までは
その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった
連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった
連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった
女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース
誰が見ても、愛らしいと思う子だった。
それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡
どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服
どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう
「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」
可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる
「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」
例のってことは、前から私のことを話していたのか。
それだけでも、ショックだった。
その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした
「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」
頭を殴られた感覚だった。
いや、それ以上だったかもしれない。
「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」
受け入れたくない。
けど、これが連の本心なんだ。
受け入れるしかない
一つだけ、わかったことがある
私は、連に
「許嫁、やめますっ」
選ばれなかったんだ…
八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。
ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~
cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。
同棲はかれこれもう7年目。
お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。
合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。
焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。
何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。
美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。
私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな?
そしてわたしの30歳の誕生日。
「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」
「なに言ってるの?」
優しかったはずの隼人が豹変。
「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」
彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。
「絶対に逃がさないよ?」
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる