あれな除霊屋さん

むふ

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あれな除霊屋さん

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 時折聞こえる軋んだ音と、布が擦れる音。くぐもった声と、甲高い喘ぎ声が絶え間なく水音と一緒に響いていた。
 クイーンサイズの大きなベットに、純白のシルクのシーツに投げ出された脚がシワを作っていた。

『ぁっ、んんっ……、だめ……』
「だめじゃないだろう?こんなに、俺を締め付けて……っ」

 茂みを掻き分けて入ってきたものを、無意識に締め付けていた。前戯でトロトロに解かされた入口は喜んでいる様で、入れたばかりで少々キツくても愛液を溢れさせていた。
 絡みつく足を肩にかけて、ゆっくり律動を始めた。

『……、ぁ、んっ、動いちゃだめだよ。……ぁあ、まっ、てっ』
「待てないっ。結が可愛いから、我慢ができないんだ」
『……ぁぁっ、ぁっ、ぁっ、……ぁっ』

 ――……あ、れ?私何してるんだっけ?
 師匠が目の前にいるけど、結って誰だっけ?

 汗でしっとり濡れた髪を掻き上げる仕草がとても艶やか。腰を動かす度に聞こえる音が、凄く大きく聞こえる。抜けてしまうと思うほどに、腰を引いたと思うと奥まで響くくらい深い所まで突かれる。向かい合わせで膝の上に跨る様に抱かれ、密着する肌から熱を感じた。
 ズグズグとお腹の奥から何かが徐々に迫ってくるのがわかるくらいに。

『……きもっち、ぃい、……ぁん、ぁ! あ!』

 ―― ぁ、自分で腰振っちゃてる。

 少々恥ずかしいと思いながらも、どこか第三者の目線で見ていて自身の表情には全く現れない。

「っ、そろそろ……はぁっ、イクよっ……」

 キスをしながら、擦り合わせるスピードが速くなる。跨っているいる私は、自身の重さで奥へ奥へとせがんだ。
 先端が中のイイ所ばかり刺激してきて、大きな波が近くまできていた。グチュグチュという濡れた音で更に興奮が高まる。

『……あ! あ! あっ……んんんん!』

 思いっきり奥まで突かれると、足先まで電気が走った。足は小さな痙攣と共に指先が丸まり、押し寄せる快感を受け止めている。うねる中は小刻みに収縮を繰り返して、一層中のものを締め付けた。
 腰を抱いたまま、首に顔を埋めて、くっ、と小さく息を詰まらせた。ビクビクと小刻みに揺れると、じんわりとお腹に温かいものを感じた。



「……ふぅ、除霊完了だ」

 結と呼ばれた子の体から、淡い光が上に向かってキラキラと登っていく。











「……起きろ。鈴、終わったぞ」

 事情のすぐ後、全裸のまま気を失った様に倒れた体を揺すられた。

「ん?……んん、……ししょう?」
「全く、また途中乗っ取られたな。自我をしっかり持てと教えているだろう」





 説明しましょう。
 私の名前は佐山 鈴さやま すず、年齢は22歳のOLです。
 比較的冷静で表情はあまり動かないタイプですが、恥ずかしがり屋です。そして面食いです。メガネです。
 基本年上には敬語を使っておりますが、敬語キャラではありませんが皆様へ説明なので敬語で悪しからず。

 先程「ゆい」と名前を呼ばれておりましたが、私に取り憑いていた幽霊の名前です。
 そして私の目の前いるイケメンの男性は大木 大和おおき やまと霊媒師をしております。芸名は天の斗と書いて天斗あまとと仕事際は名乗っております。
 ここ天斗事務所に私は日雇いのバイトとして入っています。普段はスポーツ用品メーカーで仕事をしています。
 そんな私には霊能力がありまして、天斗師匠にはその制御も教えもらっているのです。
 仕事以外の時は大和さんと呼ばせていただいております。





「ほら、風呂は沸かしてあるから、先に入って来い」
「ぁ、はい」

 事情が終わったばかりで、裸でいたのを忘れていた。
 師匠に渡されたバスタオルで体の前を隠して、お風呂場に急いで向かった。

 こう言った事情は今回が初めてではない。師匠は私に性に関する思い残りがある霊を連れてきて、私に憑依させる時がたまにある。憑依された状態で、自我を保つ訓練だと言っていた。
 以前、わざわざ性の思い残しのある幽霊じゃなくても良いんじゃないかと問うた事があった。
 しかし、適当な理由を付けられはぐらかされてしまった。
 除霊しやすい、成仏しやすい、霊力消費を抑えられる、私の訓練に一番手っ取り早い、気持ちが良い、お前も抱かれて光栄だろう。と断言されてしまった。

 俺様な所は、イケメン故許される。
 なんてったって、私自身面食いであった。


 頭から被ったお湯が気持ちが良い。ゴム越しに出されても、中に伝わる感覚はまだ残っていた。

 そっと下腹部に手を添えてみると、先程の余韻で下腹部がキュンとする。
 私の身体なのに、意識を幽霊に持ってかれちゃうと気持ちが良いのもぼんやりとしたものになってしまう。

 少々残念がってる気持ちを、そっと別のところへ閉まって無かったことにする。
 師匠は、幽霊に乗っ取られ無い様に訓練してくれてる。
 気持ち良さなんて求めて、道徳心とか恋心とかこういう事はまた今度。
 自分の命が一番大事。
 それを師匠は身をもって教えてくれてる。

 頬に手を当てて、フルフルと頭を振った。
 ガシャガシャと少し乱暴に頭を洗う。身体に残った火照りを、シャワーの熱でごまかした。






「遅いぞ。待ち切れなくて入りに行く所だった」
「すみません。師匠」

 服を部屋に置きっぱなしにしていたので、バスタオルを巻いて師匠がいる寝室に戻って来た。
 いつからか、師匠との距離感がおかしい。
 浴槽に2人で入っても十分なスペースはあるが、そういう話では無い。


 まぁ、いい。とボソッと呟いて師匠は優美な身体を隠すことなくお風呂へと向かった。

 いそいそとメガネをかけて着替えて、師匠がお風呂から上がってくる前にシーツを取り替える。


 現在いる部屋は場所はこと、天斗の事務所。7階建ビルの2階ワンフロア全部天斗1人の事務所兼休養所である。
 このビルはセレブ向けのテナントが多く入ってる。
 6、7階にはこのビルの社員と、テナント毎の太客しか会員になれないプライベートジム。もちろん個室あり、プールあり、サウナあり。5階にはタレント事務所と撮影ルーム。4階は美容室やサロン。3階はアパレル、アクセサリーのショップが複数店入っている。そして2階ワンフロアが前記の通り事務所。
 どれだけ広いかお分かりになると思う。師匠自身で好き勝手にいじった結果、事務所というより家に近い。
 入ってすぐの所に打ち合わせに使う応接室。簡易的なキッチンも付いている。隣にダブルサイズのベッドもあり、トイレ、バス、シャワー、脱衣所もある。これが天斗の事務所。ただ、事務所だけではフロアの半分程度も使っていない。
 同じフロア、事務所に併設して更にアイランドキッチンが付いたリビングダイニング、クイーンベッドが置いてある寝室にお風呂場、シアタールームと書斎がある。
 そして、お客様用のエレベーター以外にプライベート用のエレベーターも付いている。
 自室に直で入りたい際は、そちらを使い、専用のカードキーを使用しないと入れない仕組みである。



 二世帯暮らせますよ。
 皆様が薄々お気づきの方もいらっしゃるかも知れません。
 師匠はプレイボーイ。
 師匠が女の人とよろしくしてるのは事務所の方のベッドでを使用している。
 以前、鉢合わせをしたことがあり、お綺麗な女性からちんちくりんと馬鹿にされたことで、その女性と喧嘩になった事がある。
 私も若かった。
 それ以降、もう一つのプライベート用のエレベーターのカードをもらって、基本そちらから入って終わるまで待機する形になった。
 壁が防音なのがとてもありがたくて、さすがセレブ用なだけあると感心した。

 あと、もう1つ家があって、基本はそちらに住んでいるとも以前言っていたような、いないような。
 師匠の事は知らない事ばかり、聞かないようにしているせいでもあるけど。



 考えごとをしながら、シーツを変えて、布団を正して床の掃除をしてなんてしてたら、ガチャと音共に、腰にタオルを巻いた師匠が戻ってきた。
 巻いていたタオルは部屋に戻ると同時に外された。
 
 巻いた意味はあったのだろうか。

 元気じゃなくても立派なそれを隠さず、仁王立ちしている様は自分の身体に相当自信を持っているんだなと感じさせた。


「師匠。服を着てください」
「うるさい」


 ズンズンと歩みを進める師匠は私の腰を捕まえた。顔に息がかかりそうなくらいの近さ、髪から滴る滴が顔にかかる。
 見つめられてどんどん近くなる顔に、私も体をそらして逃げたが、体を反らすにも限界というものがある。鼻と鼻が当たってようやく師匠の動きは止まった。

「うるさくして良いのは、俺が鈴の事可愛がっている時だけだ」

 チュっと、可愛いリップ音。おでこに軽くキスをされて離れて行く。
 ドキッと心臓が音を立てた。
 反り返った状態をゆっくり戻して、キスされたおでこを押さえた。


 イケメンの攻撃力は凄まじい。
 私でもドキッとしてしまった。
 世の女性達は骨抜きにされて、騙されていくんだ。






 小学5年生の時に、霊能力に目覚めてから約12年間、霊能力があるせいでまず友達がまず少ない。
 ましてや、彼氏なんてものは出来た事も無いので色恋にはとても疎かった。初めての経験と、これまでの経験は全て師匠だけ。
 そして、少し鈍感というか、他人に興味が無いゆえに色恋に発展する事はないのかも知れない。



「師匠はキザですか」
「何言ってるんだ。良いから、髪乾かすぞ。こっち来い」

 師匠は話を全く聞かずに、動きやすいパンツとパーカーに着替えてもう一つのプライベート用のリビングに引っ張ってこられた。
 パンツもパーカーもブランドの物で、肌触りがとても良さそう。シンプルなデザインが師匠の優雅さを引き立たせていた。
 黒髪、黒目で少し切れ長な目。鼻筋も通ってて、薄めの唇。この唇がキスをすると、赤の色が濃くなり、少しぷっくりとするのが凄く色っぽい。
 身長は180は無いけど、スラッとした少し細身の身体はモデルの様だった。筋肉もほどよくついていて、健康的に見える肌。パーフェクトボディ。その上、お金も持っていて、某有名大学経済学部卒業という学歴も持っている。バリバリのモテ男。

 リビングには真ん中に鎮座するカウチソファ。壁に埋め込まれた大きなテレビにスピーカー。事務所を抜けて入ってすぐの応接室は白と黒でシックに統一されている部屋に対して、こちらのリビングは木を基調とした暖かい印象を受ける。
 濃い茶色の本革で出来た高級感漂うソファに先生が座る。ソファに座る師匠の足の間、フワフワのカーペットが敷かれた床に座らされた。

「ちゃんと髪乾かせ」
「ぁ、すみません。シーツ変えないとと思って」

 ドライヤーで髪を乾かしてくれるあたり、俺様なくせに面倒見が良いなと思う。

「前よりは意識が浮上するのが速くなったな」
「そうですか?」

 師匠と私は中学生からの付き合い。私が霊に悩まされていた時に、母親が霊媒師を探してくれて顔で選んだ結果先生に行き着いた。
 身体の関係と言うか、除霊とかの仕事で行為はするけど基本的には妹とか弟子とか面倒を見る感覚に近いのではないだろうか。

「……でも、俺が居ない時は霊に近づくなよ」

 優しい手付きで、髪を乾かすのはお手の物。黒のストレートの髪が師匠に乾かしてもらうと、天使の輪が出来る。ドライヤーの音で何を言っているか聞き取れなかった。




「終わったぞ。冷蔵庫にあるケーキとコーヒーをいれたら今日は帰って良い」

 冷蔵庫からラズベリー系のケーキだろうか、赤く丸いケーキをお皿に移してパックのコーヒーをいれる。

「豆あるだろうが。ちゃんといれろ」

 豆を挽いて、コーヒーをいれろと毎回言われるがやり方がわからないので、いつも無視してお湯を注ぐだけのドリップコーヒーをテーブルに持って行く。
 ここに置いてあるコーヒーはパックの物でも値段が高い気がする。スーパーとかで見た事がない様な物が多い。豆も何種類か置いてあり、豆引きまである。
 私の分もあるかなと期待するが、私の分のケーキがあった試しがない。2つあったも全て師匠の物。コーヒーは勝手に飲んでいる。

「自分でやってください」

 チラッと不満の色を含んだ視線を送られた気がする。コップに手を付けて無言で飲むのを見届けてから部屋を出る。

「俺からの連絡はすぐ出れる様にしておけ」
「仕事中は基本的には無理なので、それ以外でしたら出れる様にはしています」

 部屋を出る間際に声をかけられた。
 返答には対して興味が無いのか、こちらを見ずに手を振られた。

 お先に失礼します。と軽い挨拶をして扉を閉めた。




 ――「あれな除霊屋さん」

 これは俺様無自覚世話焼き霊媒師と、いまいち自分をわかっていない現実逃避気味な弟子との恋愛?ラブストーリー?でちょびっとホラーな小説になる予定である。
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