【完結】パンでパンでポン！！〜付喪神と作る美味しいパンたち〜

第48話 付喪神のつぶやき①

　ほほほ……ほほほ。


『……うむうむ』


　良い……良い。


　良い傾向じゃ。


　あちきと……もう二度と遊ばないでいたと思った、幼子。


　桜乃さくのが……あちきの『主』となってくれた。


　嬉しい……実に嬉しいぞ。


　あちきが付喪神として、顕現した最初の主は段蔵だんぞうであったが。


　幼子でなくなり、知識も経験も得たことで……あちきから巣立たせたのだが。


　そのことで、あちきは顕現する力を失い……段蔵に子らが出来てもそれは変わらず。蔵の中で……ただただ、『ままごとキッチン』の本体に宿ったままだった。


　それを変えてくれたのが、段蔵の孫である桜乃。


　あれも、今よりさらに幼子の時は力がなかったが。


　やはり、段蔵の血縁ゆえか……今の年頃で開花させたのじゃ。段蔵の時も同じじゃったか。


　そして、覗き見したとは言え……共に作る相手も出来た。


　あやつらは、あちきを気味悪いものと思わず……桜乃と同じように受け入れてくれたのじゃ。


　良い……良いことじゃ。


　段蔵の身体も……パンの効能のお陰で、いくらか落ち着いた。樹いつきの場合は、効き過ぎと言っていいくらいじゃったが。


　あちきは付喪神ゆえに……顕現の姿は変わらぬが。


　あれらは……随分と歳を重ねてしもうた。


　いつか……冥府に旅立ってしまうか。


　桜乃らは……その頃あちきをどう扱ってくれるか。


　段蔵は、再会した時……いくらか負い目を感じているようじゃったが。


　理解者が居れば……今後は違うじゃろう。


　桜乃にも、まだまだパンの技術は伝えたいわ。


『さてさて……次は何を作ろうぞ？』


　揚げ物をいくらか作ったのであれば。


　日本独自のパン……カレーパンはどうじゃろうか？


　桜乃向けには、ルゥは甘めでなくてはなあ？


　ひと口、自分で淹れた茶を飲んでから……あちきは作り方を考えで巡らせたのじゃった。