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第二十四章 小森の場合⑫
第2話 偶然での頼み事②
しおりを挟む「……本当にありがとうございます、小森さん!」
智也に言われて……彼から、昼飯以外にも材料費に当ててくれと渡されたお金で、材料などを購入した。
ふたりの新居、もとい皐月と智也の同棲先のマンションに……裕司は智也からもらった地図を頼りに行くことが出来た。
時間はまだ夕方なので、智也がいないのは仕方ない。皐月は今日バイトがないからか、大学から家に直行していたようだ。
そして、智也からどう言う説明があったかわからないが、裕司がインターフォンを鳴らした後に……腰を深く折って、礼を言ってくれたのだ。
「いや、まあ……大変そうなら力になるし」
「本当に……私、最近作っても全然なんで」
「とりあえず……中に入っても?」
「あ、はい。どうぞ」
智也は社会人一年目であるし、皐月もまだ学生の身分。
部屋も2DKらしいが、思っていたより部屋もキッチンスペースも広い。リビングなども綺麗に整えられていて……肝心のキッチンもひとまず綺麗だ。
皐月のバイト内容を聞いてはいないが、片付けは得意なのだろう。バイトでしかまともに片付けが出来ない裕司とは大違いだ。裕司も、最低限……料理の時は洗い物などをするようにはしているが。
「んじゃ、今日作るのは……ちょっと変わった肉じゃがだよ」
「……肉じゃがに種類があるんですか?」
「うん。普通の砂糖と醤油じゃなくて、塩肉じゃがって呼ばれているやつなんだ」
「塩味の肉じゃが……?」
使うメイン食材は。
豚の細切れ肉。
じゃがいも。
玉ねぎ。
ニンニク。
刻みネギ。
と言った、半分以上は通常の肉じゃがに使うのと同じ材料だ。
まずは下ごしらえから……と皮剥きなどをしていても、皐月が玉ねぎで涙を流すことはなかった。成功はしていないが、作り慣れてはいるのだろう。
「まずは、スライスしたニンニクをごま油でゆっくり炒めて」
香りが立ったら、肉などを入れて火が通るまで炒めて行く。
「ニンニクの肉じゃが?」
「ニンニクはあと入れでもいいけど、俺の試しってことで今日は先に炒めるよ」
「それが絶対じゃないんですか?」
「試行錯誤で料理は変わるからね? 伊東さんもそうでしょ?」
「はい。……やり過ぎの自覚はありますが、どうしてか」
「あはは……」
度を越えるとダークマターになる理由がよくわかった。
とりあえず、炒めるのは交代しながら進めることにして……片付けなどは主に皐月がやってくれた。
今回はじゃがいもが煮えれば出来上がりなので、もう何品か用意しようと決め。
冷蔵庫の中身を使っていいか聞くと、皐月は大丈夫だと答えてくれた。
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