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第29話 天神様と武器屋①

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「いらっしゃーい!」


 武器屋らしい店の中に入ると、明るい声に出迎えられた。

 狼ではなく……狐耳。明るい茶色が特徴の耳を持つ、これまた性格もかなり明るそうな男がいたよ。外見の年齢くらいなら……トビトと同じくらいだろうか?


「こんにちは。僕達、武器を新調したいのですが」

「うんうん。いいよー! 特に、レイバンに気に入られたんなら、尚更いいよー!」

「え?」

「む?」


 どうして、レイバンの情報が……と思ったら、彼はトビトの前に立ち、軽くアーマーを小突いた。


「わざわざ、これ貸すくらいだもん? 俺んとこで役に立てるんなら、いいの選ばせてあげちゃう!」

「……わかるのか?」

「専門家じゃないけど、近所だし見慣れているしね?」

「「……なるほど」」


 そこは、さすがに職人というわけか。

 であれば、この男の勧めるものを選んだ方が良いだろう。


「お願いします。僕ら駆け出しなので……冒険者カードはこうなんですが」


 それぞれのカードを見せて、職業などを確認してもらうと……男はすぐに目を丸くしたのだった。


「え、え? アサシンはまあ……けど、精霊術師ぃ?」

「えっと……契約している精霊はこの子、フータです」

『ぼ……く!』


 フータが身体を揺らせば、店主らしい男はさらに目を丸くしたのだ。この後の反応は……だいたい予想がつく。


「……駆け出しが、中級精霊と?」

「……採取で出会ったんです」

「……あ、そう」


 納得してくれたのか、何度か頷いてからこっちに来るように手招きされた。


(……おお)


 工房の中なのか、様々な武器が揃っていた。

 弓は見たことのない形状もあるが……刀はやはりなく、大小様々な剣に槍など。

 触れはしないが、近くで見ると色々興味深いものばかりだ。


「俺が作った武器だけど。ど? 気にいるのありそう?」

「手にとっても?」

「いいよ? そっちの兄さんもうずうずしてるし」


 トビトを見れば……たしかに触れたくて仕方がないのが表情から見てとれた。

 私のこと以外で、このように高揚感を得ているとは……武器を扱うことに目覚めたのか? とは言え、無闇に殺生を好むようにしないようには言いつけてはいるが。

 やはり……特性となった『冒険者アサシン』であるから、武器への感心は私以上かもしれないね?

 とは言え、私も興味がないわけではない。

 フータを床の上に置いていいか、店主に聞いてから弓を手に取ることにした。


「……うーん」


 平安の世では、学者でしかなかったが。

 全く、『武』をしなかったわけではない。

 そのひとつが……弓だ。

 長弓を扱っていたのでだが……ここにあるのは、基本的に短いようだ。長さが今の私の半分程度。

 しかし……下手に長いと移動には不便だ。壊れる可能性だってあるだろうから……慎重に選ばねば。

 ひとつずつ手に取り、弦を引っ張ってみるが……なかなかしっくりとこない。

 神だった頃は特に扱わなかったが……人間のフリをしている精霊の身体だと、元の存在に合わせているのか?
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