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第83話 天神様と怒り②

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 光った。

 私の目でも、確認出来るくらいに。

 上だ。

 建物の上からだ。

 見慣れてきた、赤紫の光。

 次第に、下が騒いできたが……私達は気にせずに飛んでいくしかない。

 そこに、聖樹石があるのなら。

 世界樹に送るべき……存在があるのなら。

 行くまでだ。

 私達の使命……成すべきことなのだから。

 光は強くなっていき、下の騒ぎも大きくなっていくが……気にせずに行く。

 開いていた窓から入っても……人間達が右往左往していて、逃げているだけだった。

 異変はわかるが、どうすればいいのかわからないのだろう。

 なら、フェアリーらから……早く、聖樹石を取り返さなければ。

 トビトらと目配せし、少し高い天井に沿って……飛翔していく。

 石の方向には、衛士らと違う……少し豪奢な服装をして剣を持つ人間らが向かっていくが。

 行かせはしない。

 私達が先に向かい、石を取り返さなければならないのだから。


(……しかし、私達が少し近づいただけで石が呼応してくれたのだろうか?)


 邪気のようなものは、こちらに届いていないし……トビトも無事だ。

 なら、石そのものが……森であったように、意識体を出そうとしているのか?

 それにしては……こちらに姿を見せようとはしないが。

 人間らを越えて、光の方向に飛ぶと……先に小さな子供が走っているのが見えた。

 その後ろ姿に……少し、見覚えがあったが。


「お待ち下さい! レイン王子!!」


 後ろの人間のひとりが声を上げたのに、私達は慌てて自分らの口を塞いだ。この『闇霧』は姿を隠せても声などは筒抜けであるのを、事前に確認したから。


(……レイン!)


 宿屋の温泉で出会った……狐耳の子供。

 人間に呼ばれて、振り返った狐耳の子供の顔は。

 たしかに……温泉で仲良くなった、あの子供と同じであった。

 何故、このような場所にいるのだろうか?!
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