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第61話 思念への闇

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 良き……良き。

 あの者らには、更なる苦しみを与えることが出来た。

 愛し子は未だ目覚めぬが……思念で探ろうにも、心を閉ざしているのか。探ろうにも、殻にこもっておるようだ。

 子らが見守っていても……未だ目覚めぬ。

 夢路を通じて……『膿』を落とすだけのはずが、何やら深く潜ってしまったやもしれぬ。

 我は、子らに頼んで愛し子の手を取ることにした。


(……子よ、子よ。願う者がおる。我も願う……目を覚まさぬか)


 お主が恐れている者は……お主に与えていた苦しみ以上のモノを与えた。すべて、我の加護が足りぬ所為。

 あの者らが……我欲にまみれ、己だけを可愛がっていた所為だ。

 お主は……お主の幸せをこれから掴めるのだぞ?

 お主を幸せにしたい者らが、ここには数多くいる。

 だから……と、我は、思念だけを愛し子の中に沈めた。

 暗い……昏き、闇深き場所。

 身体は出来上がったが、は完全に精霊のそれではないので、夢路を通して組み替えている途中であろうが。

 この幼き者の中に……よくこれだけの『』があるものよ。


(……我が、手を差し伸べるのが遅かったせいか)


 助けるのが遅かった所為か?

 これほど……深き、昏い闇の中を。ヒトもだが精霊の中に潜って見たことは、数えるほどしかない。幾千幾万超えようが……それほどしかなかった。

 であれば、早く引き上げねば。

 奥へ奥へ、歩みを進めていくと……闇の深さがさらに増し、中に何かがあるのが見えた。


『……嫌、い……や』


 我が愛し子。

 純金の髪を持つ、我らが愛すべき愛し子。

 闇を纏いながらも……かぶりを振りながら、何かを懸命に拒絶していた。


【……何を拒む】


 しかし、我が近づけぬわけではないので……出来るだけ、優しく声音を整えてやった。


『…………つ、の。み……な、わ、私……ぶつ、の』

【……ここには、お主を傷つける者は居らぬ】

『で……も、い……たい……』

【案ずるな。ここも、外も……今はお主を慈しむ者達だけだ】

『……い、たく……しない?』

【ああ、誰もせぬ】



 全く……あの愚かな者どもは。

 どれだけ、この愛し子を傷めつけていたのか。だが……我も落ち度はある。手出し出来なかったとは言え、この愛し子を放置していたのと同じだからな。


『……い、たく……ない』


 我が手を掴んでやれば、愛し子の手にあった粘っこい闇は少しずつ晴れ……引っ張ってやると、愛し子の身体が金色に輝き出した。

 これで……あの風の子も安堵するであろうな?

 我は一気に引っ張り、思念を外に出すことにした。
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