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第81話 元聖女の変身①

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 次に確かめたいことは。

 大精霊になったことで……『簡易体』や『精獣化』が出来るかと言うことだ。

 しかし……元は人間であったのと、ほとんど魔法を会得していなかった私が……変身(?)のようなことが出来るのか不安だが。

 まずは、珀瑛ハクエイ様がお手本を見せてくださることに。


「簡易体の方が簡単やんな?」


 とおっしゃって、すぐに『ぽん』と音が聞こえると……あの凛々しいお姿から、可愛らしいもふもふの簡易体に変身なされた。

 抱きしめてしまいたいが……これは私の特訓だ。

 私自身も簡易体にならなくてはいけない。


『簡単やろ?』

「え、えーと……」


 たしかに、すぐに変身なされたが……どこが簡単なのかが、私にはいまいちわからなかった。

 生返事をすると……珀瑛様は『あ』と声を上げられた。


『せやな。ミラは姿を変えるんが初めてや。雑な教え方やあかんわ』

「い、いえ! ただどうすれば良いかと」

『やったら……ちょい、地面に座り?』

「は、はい……」


 おっしゃる通りに……芝の上に座ると、珀瑛様は何故か……私の膝上に乗られた!?


『ミラ、ちょい屈んで』

「は、はい」


 少しだけ屈むと……珀瑛様は小さなお手を私の額に軽く当てられた。


『目閉じて』

「はい?」

『んで、考えて。自分がどんな姿か』

「……はい」


 考えてみる。

 どんな自分か。

 どのような自分になるのかを。

 珀瑛様に触れていただいている部分が……少しずつ、温かくなってくる。

 そしてそこから……体全体に温かさが広がっていくようだ。

 だんだんと、温かさが全体に行き渡ると……珀瑛様が手を離された。


『……へ?』


 ただ何故か。

 珀瑛様が不思議そうな声を上げられ、私も目を開けてみると。

 簡易体である珀瑛様のお顔が、すぐ目の前にあったのだ。


『……わ、たし?』


 声の感じが違う。

 私もきちんと簡易体になれたのか、少し嬉しくなっていると……離れたところにいらっしゃった、風珀フウハク様が『はい』と少し大きめの鏡を持ってきてくださったが。


『……え?』


 簡易体、なのだろうか?

 私は……聖女の法衣もだが、ただの小さな子供になっていただけだった。
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