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第一章 異界渡り
037.不人気な果物はキウイ-①
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どうしてキウイがこんなにも山積みにと首を傾げたくなった。
フィーさんも僕が黙り出したのが気になって視線を辿られ、その箱に気づいた。
「ああ、アルグタ?」
「あるぐた?」
キウイとはやっぱり言わないようだ。
「不人気な果物だよ?」
と言って彼は箱から一つ取り出し、手刀?か魔法かで半分にカットしてくれた。中身は予想通りの緑に黒のつぶつぶの断面。
「酸っぱすぎだし、熟し過ぎると食べにくいんだよねー」
「……これ使いましょう!」
「えぇえ⁉︎」
「ど、どうされました?」
フィーさんの大声にライガーさんがこっちにやってきた。
「ライガー、カティアがアルグタをお菓子の材料にするんだって!」
「え、アルグタ……を?」
そんなに意外なものだろうか?
好き嫌いは多くある果物だと僕も知っているが、使い用によってはかなり重宝されるものだ。栄養価とビタミンも豊富で美容にもいい。
「大丈夫です。これだけあるならたくさん作りましょう!」
それでもうだうだ言いそうな二人を引っ張って、キウイことアルグタの箱をいくつか厨房まで運び出した。
厨房に行くと他のコックさん達も目が点状態に。
(そこまで……?)
何か訳でもあるのかと疑ったが、時間もあまりないので下処理に移る。ライガーさんとフィーさんは僕の調理法を見るのとアルグタにあまり触りたくないのか観察しているだけだ。いいけど。
ごく普通に皮とヘタを取ってさいの目状にカットしたら、
「え! 種ごと使うの⁉︎」
いきなりフィーさんが大声を出した。
「普通ですよね?」
僕にはその意味がわからずでいたら、二人以外にもコックさん達全員が激しく首を横に振った。
「アルグタは中心部はすべて除去するものだよ? カティアちゃん知らないのかい?」
「え、ぼ、僕は皮とヘタ以外は全部食べてましたが?」
「す、酸っぱ過ぎないかい?」
どうやらここでも異世界常識だと違うようだ。
けど、白い部分と種無しって正直美味しくない気がする。その知識すら輸入食材のキウイの食べ方の一部だけかもしれないが。
「じゃあ、美味しい食べ方を伝授させてください」
不人気の理由が間違った食べ方のせいなら悲しい。
食材はなんでも美味しく食べてあげなきゃ。
僕はカットしたのとは別で少し熟しているアルグタをただ半分に切ってミニスプーンで中心と外の果肉をくり抜く。
「こう食べるんですよ」
「え、そのまま?」
「はい。ライガーさん食べてみてください」
「えー……」
そこまで露骨に嫌な顔をしなくても。
仕方ないか、と僕が手本でくり抜いた部分を自分の口に運ぶ。
周囲の息を飲む音を気にせずに口に含めば、酸味が際立つがほのかに甘くしゃくしゃくとした歯ごたえが心地良いキウイの味。不味いどころか全然美味しい。
この美味しさを理解出来ないのは正直もったいないと思う。
「美味しいですよ?」
嘘じゃないとそのまま半分をすべて平らげたけど、
『……………………』
まだ信じられないって感じに皆さん目を丸くして口がぽかーんと開いたままだ。
「ほ、ほんとに美味しいの?」
「なんなら輪切りにしたのをたっぷり食べたいですね」
「えぇえ⁉︎」
この世界の神様なのになんで存在する食べ物の調理法を知らないんだろう?
いっそ食べさせた方がいいかと思ったが、やっぱり時間がないから調理に戻ることにした。
少しスピードを上げて必要な分のアルグタを剥いてカットし、ボウルにある程度溜まったら昼間覚えたばかりの魔法を使うことに。
「斬切」
風の刃を纏った球体はアルグタのボウルの中に落ち、刃が当たったとこからペーストになっていく。
けど、フィーさんが書き込んだような命令がないからか一定方向にしか回らない。
仕方ないので、未だ呆気になってる彼をここに連れてくることにした。
「フィーさん、付与術ってどうするんですか?」
「え、あ、付与?」
やっと正気に戻ったようで僕を見てくれた。
「これを……ソースみたいにするの?」
「ええ。このまま使う訳じゃないんですが」
「……わかった。付与術は君にわかりやすく言うと詠唱部分のことだよ。慣れれば無詠唱とか術の名前を言わなくても出来るけど……この場合は」
風の球が回っているボウルに手をかざした。
「……縦横無尽に回れ」
キィンっと耳鳴りに近い音がした気がしたが、球の方を見れば昼間のように電動フードプロセッサーと変わりない動きをしてアルグタ達をペースト状にしていく。
「これだけで大丈夫だと思うよ?」
「あとで冷却と……水気を抜く方法ってありますか?」
「なくもないけど何に使うの?」
「今から言う材料を集めてから教えます」
「?」
不思議がるフィーさんの耳に近づいてこしょこしょと欲しい材料を告げ、探しながら記憶を読んでもらって判明してからライガーさんにも告げて必要な材料達を用意してもらう。
「パルフェに牛乳。マザランと生クリームに蜂蜜と砂糖……ゼリーかムースなのかな?」
ライガーさんは貯蔵庫での僕らの会話を聞いてないから確認のために僕に問いかけてきた。
ちなみにパルフェはヨーグルト、マザランはゼラチンだった。板ゼラチンじゃなくて粉でした。
乳製品の原材料なんかは異世界でも呼び名は同じなようだ。
「はい。アルグタのピューレを混ぜたムースと二層仕立てのゼリーを」
「……あれごと?」
「まあ、見ててください」
「僕も手伝うよ」
魔法の伝授もあるのでフィーさんと手分けして作業することに。
ライガーさんもはっと我に返って手伝いを申し出てくれました。なので、ムースに必要な生クリームの泡立てをお願いした。
「出来上がったピューレの一部を水を足してカサ増しして小鍋で火にかけて」
縁が泡立ってきたら砂糖とほんの少し水を加えてふやかしたマザランを投入し、よく混ぜる。混ざり切ったら大きめのガラス容器に移して粗熱を取ること。
普通はこれでいいんだけど、時短のためにフィーさんから冷却魔法を教わることになった。
「冷却は火を起こすのと同じ要領でいいよ。氷と風を混ぜ込んだ魔力を対象物に送り込んで冷やすんだ。加減は火を強めたりするのと同じ」
イメージしてみても冷風機の要領かな?としかわからない。
まあやってごらんと実践するように言われたので、ボウルに手をかざして魔法をイメージしてみる。
「ん、出来てるね」
フィーさんが言うように、冷却魔法がちゃんと出来ていた。
自分の手のひらから氷の結晶達が吹き出し、目標のキウイゼリー液の器に向かうとガラスの表面を覆っていく。
表面に張り付いた結晶達が溶けてしまってから触ると、器はキンキンに冷えていた。ゼリーをスプーンで軽く押すと液状ではなくゼラチン効果でぷるぷるになっていた。
(魔法初心者でも、転移?か転生特典に多いチートってやつかな?)
魔力量は底辺らしいけど、イメージすればちゃんと出来てるし今のところ失敗はない。
でも、いつ付いたかわからない未知の能力には少し不安を抱いてしまう。その部分は記憶などを封印されてるせいで誰にもわからない。
仕様がないことだが、今は忘れておこう。
「しっかし、すっごい色……」
フィーさんが苦渋を飲んだような顔になるのは無理ないかも。元々の調理法の相違があるものじゃ、黒いつぶつぶが浮かんだ緑色のゼリーは美味しく見えないんだろうな。
フィーさんも僕が黙り出したのが気になって視線を辿られ、その箱に気づいた。
「ああ、アルグタ?」
「あるぐた?」
キウイとはやっぱり言わないようだ。
「不人気な果物だよ?」
と言って彼は箱から一つ取り出し、手刀?か魔法かで半分にカットしてくれた。中身は予想通りの緑に黒のつぶつぶの断面。
「酸っぱすぎだし、熟し過ぎると食べにくいんだよねー」
「……これ使いましょう!」
「えぇえ⁉︎」
「ど、どうされました?」
フィーさんの大声にライガーさんがこっちにやってきた。
「ライガー、カティアがアルグタをお菓子の材料にするんだって!」
「え、アルグタ……を?」
そんなに意外なものだろうか?
好き嫌いは多くある果物だと僕も知っているが、使い用によってはかなり重宝されるものだ。栄養価とビタミンも豊富で美容にもいい。
「大丈夫です。これだけあるならたくさん作りましょう!」
それでもうだうだ言いそうな二人を引っ張って、キウイことアルグタの箱をいくつか厨房まで運び出した。
厨房に行くと他のコックさん達も目が点状態に。
(そこまで……?)
何か訳でもあるのかと疑ったが、時間もあまりないので下処理に移る。ライガーさんとフィーさんは僕の調理法を見るのとアルグタにあまり触りたくないのか観察しているだけだ。いいけど。
ごく普通に皮とヘタを取ってさいの目状にカットしたら、
「え! 種ごと使うの⁉︎」
いきなりフィーさんが大声を出した。
「普通ですよね?」
僕にはその意味がわからずでいたら、二人以外にもコックさん達全員が激しく首を横に振った。
「アルグタは中心部はすべて除去するものだよ? カティアちゃん知らないのかい?」
「え、ぼ、僕は皮とヘタ以外は全部食べてましたが?」
「す、酸っぱ過ぎないかい?」
どうやらここでも異世界常識だと違うようだ。
けど、白い部分と種無しって正直美味しくない気がする。その知識すら輸入食材のキウイの食べ方の一部だけかもしれないが。
「じゃあ、美味しい食べ方を伝授させてください」
不人気の理由が間違った食べ方のせいなら悲しい。
食材はなんでも美味しく食べてあげなきゃ。
僕はカットしたのとは別で少し熟しているアルグタをただ半分に切ってミニスプーンで中心と外の果肉をくり抜く。
「こう食べるんですよ」
「え、そのまま?」
「はい。ライガーさん食べてみてください」
「えー……」
そこまで露骨に嫌な顔をしなくても。
仕方ないか、と僕が手本でくり抜いた部分を自分の口に運ぶ。
周囲の息を飲む音を気にせずに口に含めば、酸味が際立つがほのかに甘くしゃくしゃくとした歯ごたえが心地良いキウイの味。不味いどころか全然美味しい。
この美味しさを理解出来ないのは正直もったいないと思う。
「美味しいですよ?」
嘘じゃないとそのまま半分をすべて平らげたけど、
『……………………』
まだ信じられないって感じに皆さん目を丸くして口がぽかーんと開いたままだ。
「ほ、ほんとに美味しいの?」
「なんなら輪切りにしたのをたっぷり食べたいですね」
「えぇえ⁉︎」
この世界の神様なのになんで存在する食べ物の調理法を知らないんだろう?
いっそ食べさせた方がいいかと思ったが、やっぱり時間がないから調理に戻ることにした。
少しスピードを上げて必要な分のアルグタを剥いてカットし、ボウルにある程度溜まったら昼間覚えたばかりの魔法を使うことに。
「斬切」
風の刃を纏った球体はアルグタのボウルの中に落ち、刃が当たったとこからペーストになっていく。
けど、フィーさんが書き込んだような命令がないからか一定方向にしか回らない。
仕方ないので、未だ呆気になってる彼をここに連れてくることにした。
「フィーさん、付与術ってどうするんですか?」
「え、あ、付与?」
やっと正気に戻ったようで僕を見てくれた。
「これを……ソースみたいにするの?」
「ええ。このまま使う訳じゃないんですが」
「……わかった。付与術は君にわかりやすく言うと詠唱部分のことだよ。慣れれば無詠唱とか術の名前を言わなくても出来るけど……この場合は」
風の球が回っているボウルに手をかざした。
「……縦横無尽に回れ」
キィンっと耳鳴りに近い音がした気がしたが、球の方を見れば昼間のように電動フードプロセッサーと変わりない動きをしてアルグタ達をペースト状にしていく。
「これだけで大丈夫だと思うよ?」
「あとで冷却と……水気を抜く方法ってありますか?」
「なくもないけど何に使うの?」
「今から言う材料を集めてから教えます」
「?」
不思議がるフィーさんの耳に近づいてこしょこしょと欲しい材料を告げ、探しながら記憶を読んでもらって判明してからライガーさんにも告げて必要な材料達を用意してもらう。
「パルフェに牛乳。マザランと生クリームに蜂蜜と砂糖……ゼリーかムースなのかな?」
ライガーさんは貯蔵庫での僕らの会話を聞いてないから確認のために僕に問いかけてきた。
ちなみにパルフェはヨーグルト、マザランはゼラチンだった。板ゼラチンじゃなくて粉でした。
乳製品の原材料なんかは異世界でも呼び名は同じなようだ。
「はい。アルグタのピューレを混ぜたムースと二層仕立てのゼリーを」
「……あれごと?」
「まあ、見ててください」
「僕も手伝うよ」
魔法の伝授もあるのでフィーさんと手分けして作業することに。
ライガーさんもはっと我に返って手伝いを申し出てくれました。なので、ムースに必要な生クリームの泡立てをお願いした。
「出来上がったピューレの一部を水を足してカサ増しして小鍋で火にかけて」
縁が泡立ってきたら砂糖とほんの少し水を加えてふやかしたマザランを投入し、よく混ぜる。混ざり切ったら大きめのガラス容器に移して粗熱を取ること。
普通はこれでいいんだけど、時短のためにフィーさんから冷却魔法を教わることになった。
「冷却は火を起こすのと同じ要領でいいよ。氷と風を混ぜ込んだ魔力を対象物に送り込んで冷やすんだ。加減は火を強めたりするのと同じ」
イメージしてみても冷風機の要領かな?としかわからない。
まあやってごらんと実践するように言われたので、ボウルに手をかざして魔法をイメージしてみる。
「ん、出来てるね」
フィーさんが言うように、冷却魔法がちゃんと出来ていた。
自分の手のひらから氷の結晶達が吹き出し、目標のキウイゼリー液の器に向かうとガラスの表面を覆っていく。
表面に張り付いた結晶達が溶けてしまってから触ると、器はキンキンに冷えていた。ゼリーをスプーンで軽く押すと液状ではなくゼラチン効果でぷるぷるになっていた。
(魔法初心者でも、転移?か転生特典に多いチートってやつかな?)
魔力量は底辺らしいけど、イメージすればちゃんと出来てるし今のところ失敗はない。
でも、いつ付いたかわからない未知の能力には少し不安を抱いてしまう。その部分は記憶などを封印されてるせいで誰にもわからない。
仕様がないことだが、今は忘れておこう。
「しっかし、すっごい色……」
フィーさんが苦渋を飲んだような顔になるのは無理ないかも。元々の調理法の相違があるものじゃ、黒いつぶつぶが浮かんだ緑色のゼリーは美味しく見えないんだろうな。
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