【完結】ピッツァに嘘はない! 改訂版

櫛田こころ

文字の大きさ
128 / 616
第四章 式典祭に乗じて

128.式典祭3日目ーギルドマスター・ルシャーターー

しおりを挟む
「あら、驚かせちまったかい?」
「あんたは色んな意味で驚くぞ……」
「そうかい?   とりあえず、そいつを離してやりなよ。エディが器用だからって、肩に乗せてるこの子が落ちかねないだろう?」
「へーへー」

 どっすんと音が聞こえてきたので、はっとして下を見れば……カイキスのお兄さんが持ってたジョッキのお酒をかぶって倒れてました。幸い、意識はあるようです。
 けど、エディオスさんはそれをそっちのけーでルシャーターさんに向き直りました。

「ギルマス自らお出ましとはどう言うことだ?」
「何、面白そうな話が聞こえてきてね?   すぐにあんたが否定してたんでおかしく笑わせてもらったが、その子のことを思って出てきたのさ」
「あ、ありがとうございます」

 助けてくれるために来ていただいたのなら、お礼言わなくちゃと上からですがしっかりお辞儀して言いました。
 すると、どうしてか今度はルシャーターさんがお口と綺麗なグリーンアイをこれでもかと開きまくってしまった。
 僕、何か粗相しちゃった?

「なんてことだい⁉︎   たった100以下の幼児なのにもう行儀作法がきちんと出来てるじゃないか!   エディ、その子は貴族の子かい⁉︎」
「いや、違うが……」

 あ、そう言えば僕の外見年齢ってこっちじゃ小学校の低学年っぽいから、さっきのは行儀良すぎだったかも。だからって、もう遅いけどね?
 エディオスさんもうっかり忘れかけてたみたい。ちらっと見たら冷や汗流してたし。

「そうかい。お嬢ちゃん、お名前を聞いてもいいかい?」
「えっと……カティアって言います」
「へぇ、『陽に愛されし神の涙』。金の髪にぴったりの名前だね。とは言え、こんなむさ苦しいとこによく来たよ。歓迎しようじゃないか」

 名字や守護名は言わないでおいても、名前を言っただけで感心されたような返事をしてくださいました。それと僕の今の名前の意味のようなものも教えてくれました。最初のもだったけど、ますますこそばゆく感じちゃう!  思わず鳥肌立って腕を摩りました。

「ふゅふゅぅ!」
「おや、随分と可愛いらしい聖獣じゃないか。カティアちゃんの守護獣かい?」
「あ、はい。クラウって言います」
「ふゅぅ!」

 ぴこっとクラウは小ちゃい手をルシャーターさんに差し出して、自分なりの自己アピールをしてみてた。上から見てもかわゆくて鼻血出そう……ルシャーターさんも口に手を当ててぷるぷるしてるよ。多分、思ってることは一緒だ。

「……エディにしては随分と可愛いらしいお連れさんじゃないか?   護衛でも頼まれたのかい?」
「いいや、親戚みてぇなもんだ。私用だよ」
「へぇ?」

 何回か使ってる言い訳だけど、ギルマスのルシャーターさんは少し疑り深いようだ。まあ、王様のエディオスさんとは違っても責任者さんだもんね。真偽がどうとかは相手が口にしても目や態度で確かめるのが普通。
 それでも、若いなりにエディオスさんだって王様だからそこはいくらでも装えるよ。問題は僕。とにかくクラウをぎゅっと抱きしめてにこにこ顔に徹します! 
 不自然かもだけど頑張るの!

「ってことは、式典祭に乗じてシュレインを観光させてるってとこかい?」
「ああ、そうだ。こいつは多少調理が出来るから、ここで売ってる商品を見せてやりたいと思ってな?」

 一介の見習い程度なので、エディオスさんの言うことに否定はしないよ?  すごいのは毎日働いてるコックの皆さんだからね。ファルミアさんもプロ級だよ?   本人の趣味から家庭料理が主流らしいけど。

「料理を?   嘘じゃないだろうね?」
「少し出来ますよー」

 ここは嘘じゃないことを僕が告げる。ピッツァは置いとくとして、城下にまで広めちゃったティラミス考案者本人とは絶対言いません!

「へぇ?   何が得意なんだい?」
「お惣菜パンみたいなのです」
「パン?   そんな小さな体で生地を仕込めるのかい?」
「頑張ってますっ!」

 ここだけは胸を張って答えてみたよ。お胸はルシャーターさんに及ぶまでもなくぺったんこだけどね。

「ふふ。そこまで言われちゃ信じないわけにはいかないねぇ?   惣菜と言うと果物よりは干し肉や燻製肉の方がいいだろうね」

 せっかくだから案内してあげるよと、ルシャーターさんが指をくいくいっと振ったので僕らはついていくことに。カイキスのお兄さんはくしゃみしながら職員のお兄さんらしい人とお片づけしていました。
 ルシャーターさんについていくと、冒険者さん達がすぐに道を開けてくれるのでエディオスさんは特に何も言うことなく歩を進められる。僕とクラウは変わらず肩に乗せてもらってます。だから、エディオスさんもだけど僕やクラウにも視線が向けられまくってるのが上からなんでよくわかります!

(僕くらいの子供がここにいないから?)

 あとは、さっき勘違いされたエディオスさんの子供なのかどうか気になったのもあるね。こっちの結婚適齢期がいくつかは聞いてないけど、フィーさんがたしかエディオスさんを蒼の世界じゃ24、5歳って言ってたから……にしても、ちょっと無理あるよ。高校生くらいで子供出来るって僕とかの感覚じゃ信じられない。一応ダメじゃなくても、気遣う事が色々あるもの。

「さて、ここいらが行商人と商業登録している冒険者達が集うとこだよ。扱ってるのは食材以外にも防具や武器など色々だね。残念ながら、調理人が扱うのはあんまし置いてないが」
「ふゅふゅぅ!」
「ふわぁ」

 掲示板とは反対の壁際に集まった、露店の並び。
 ルシャーターさんが説明してくれたように、武器、防具とか冒険者の必需品に補助用品に加えて携帯食料なんかが売られていた。たしかに調理人向けの道具類はなくても、食材も少し扱ってるようだったからすぐに気になった。お城にいる限り冒険者にはなれないから、武器があっても意味ないもの。

「……来てねぇ間に増えてんな?」
「そりゃそうさ。あんた下手したら十数年単位で来ないじゃないか?   風の噂にもほとんど聞かないから、どっかでのたれ死んでんのか心配したよ。まあ、来るたびにこんなけぴんぴんしてっから、一部じゃ『伝説の流浪人』とまで呼ばれてるよ」
「……なんじゃそりゃ」

 からからとおかしそうに笑いながら言うルシャーターさんに、エディオスさんは呆れたようなため息を吐いた。まあ、来られないのは無理ないもんね?   だって、すぐ近くのお城の王様。

「それより、そろそろ降ろしてやんなよ。カティアちゃんなら無闇に商品に触ることもないだろうし、あたしが見ててやるからさ?   後ろの連中達の相手してやっておくれよ」
「は?」

 後ろ?、と僕も振り返れば、老若男女入り乱れの冒険者さん達が何故かついて来ていた。

「………………何してんだ?」

 エディオスさんもさっぱのようで状況を読み込めてないみたい。
 すると、

「久々に来たんだったら、色々聞かせてくれよ!」
「そうだよ、前来たのだって15年前じゃないか!」
「聖獣も金髪の子も可愛いーーーっ!」
「その子本当に隠し子じゃないんだよね⁉︎」
「あちこち行ってたんだろ!   旅の話聞かせてくれよエディ‼︎」

 エディオスさんが呟いたと同時に一斉に冒険者さん達が話出しました。僕のこともだけど、滅多に来ることがないエディオスさんがやって来たことに興奮を隠せずに押しかけてきたみたい。わらわらと押し寄せて来ないのは肩に僕とクラウが乗ってるからだろうけど、どんなけいるんだろう?   ざっと50人くらい?

「ってなわけさ。ここの値段は安くしとくから引き受けてくれないかい?」
「…………しょーがねぇ、か」

 大っきくエディオスさんはため息を吐いてから、僕の脇に両手を入れてゆっくりと地面に降ろしました。

(おお、二時間くらいずっと乗ってたから地に足がつかない感覚。ちょっとふらつく)

 かく言うエディオスさんはちっとも疲れてないようで、軽く肩を回したと思えば腰の魔法袋からお財布を取り出した。この世界のお財布って、ぶっちゃけて言うとガマ口タイプのシンプルなのです。内側にはちゃんと仕切りがあって、硬貨は仕分けらるようになってるよ。まだどれがどう言うお金かは教えてもらえてないけど。

「カティア、こっちの財布預けっから気になったの買っていいぜ?   買ったもんはギルマスに渡しな。受付で預かってくれっから」
「え、でもまだお金の使い方は……」
「あら、買い物は初めてかい?   なら、あたしが教えてあげるよ。あの調子じゃすぐに終わることはないだろうから、時間は気にしなくていいさ」
「昼一にはバルに行くから、それまでには切り上げるがな」
「そうかい?」

 あれよあれよと初のお買い物イベントが決まってしまい、エディオスさんからずっしりと重い財布を渡されちゃいました。ポケットに入らない量だよ……しかも、あの口ぶりじゃあメインのお財布とかは別みたい。けど、王様だから資産はたんまりあるもんね。もしくは、もっとお若い時に冒険者として稼いだものかもしれない。
 僕にお財布渡すとエディオスさんはすぐに行ってしまい、速攻冒険者さん達に囲まれて頭しか見えなくなった。
 変装しても、すっごい人気あるなぁ。まあ、片眼鏡以外髪と目の色変えただけだから女性にはおモテになるだろう。お姉さん達にはベタベタ触られていましたが、すぐにあしらってた。ああ言うのはエディオスさんも嫌みたい。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

幼女と執事が異世界で

天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。 当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった! 謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!? おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。 オレの人生はまだ始まったばかりだ!

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

【完結】まもの牧場へようこそ!~転移先は魔物牧場でした ~-ドラゴンの子育てから始める異世界田舎暮らし-

いっぺいちゃん
ファンタジー
平凡なサラリーマン、相原正人が目を覚ましたのは、 見知らぬ草原に佇むひとつの牧場だった。 そこは、人に捨てられ、行き場を失った魔物の孤児たちが集う場所。 泣き虫の赤子ドラゴン「リュー」。 やんちゃなフェンリルの仔「ギン」。 臆病なユニコーンの仔「フィーネ」。 ぷるぷる働き者のスライム「モチョ」。 彼らを「処分すべき危険種」と呼ぶ声が、王都や冒険者から届く。 けれど正人は誓う。 ――この子たちは、ただの“危険”なんかじゃない。 ――ここは、家族の居場所だ。 癒やしのスキル【癒やしの手】を頼りに、 命を守り、日々を紡ぎ、 “人と魔物が共に生きる未来”を探していく。 ◇ 🐉 癒やしと涙と、もふもふと。 ――これは、小さな牧場から始まる大きな物語。 ――世界に抗いながら、共に暮らすことを選んだ者たちの、優しい日常譚。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡

サクラ近衛将監
ファンタジー
 女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。  シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。  シルヴィの将来や如何に?  毎週木曜日午後10時に投稿予定です。

異世界転生!ハイハイからの倍人生

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。 まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。 ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。 転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。 それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...

処理中です...