チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號

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第1章

第百三話 エソルタ島をどうしたいのか

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 カラルに地下に隠れさせていた生存者五百人にキンガーニと同じく数日間自身の力で生き抜くように箱魔法を使い、天の声で指示をした。

 俺たちは城の中に移動して、大ホールに行き置いてあるソファやテーブルを並べなおして、食べ物と飲み物を準備する。これからの作業は地味だが重要なことだ。

「ユウキ、相談なんだけど……」

「なあに、お兄ちゃん」

 久しぶりの自宅に帰ることができて昔のことを思い出しているのか、少し影のある笑顔を浮かべる。

「……城の中の財宝をくれないか?」

「え?残っているの?……別にいいけど、思い出の物は持っていってもいいかな?」

「ああ、城の中はあまり荒らされていないようだよ、あとで見ておいて」

「うん、わかったよ」

「それから、ゾンヌフ……」

「なんだ?」

「やっぱりエソルタ島は俺がもらう!」

「「「「はい?」」」」

キョトンとする四人。

「城の中の宝だけで足らず、エソルタ島全土も手に入れようというのか」

「いや、そういうわけじゃないよ、理由はあるんだ」

 カガモン帝国の支援策でも復興すると思うが、俺は俺のやり方で支援をしたい気持ちが強い。そしてその計画について話をきいてもらった。

 とある冒険者たちの死力を尽くした戦いで数体の魔人を倒すことに成功したが、その冒険者たちは重傷を負い戦えなくなってしまった。生き残りの魔人は各地に散って、それぞれの拠点で再び全土を支配する機会をうかがっている。

 という設定にする。

 これまで見てきた、カムラドネの悪魔の塔、ザフスタの萌え系キャラ満載のダンジョン。どの街も冒険者がいきかい賑わっていた。

 雑な設定だが魔人の支配が弱まったことや財宝が多く眠っていることなど、背びれ尾ひれをつけて広めれば一獲千金を目指して冒険者は集まるはずだ。多分……まあエソルタ島までの距離が一番の問題なんだけどね。

 カラルの持つダンジョン経営ノウハウを注ぎ込み、ある程度難易度を高めにして攻略に時間をかけさせて、拠点となる街に冒険者たちが必要とするものを提供し、金を落とさせる。

 武器、防具、食料、回復薬をはじめさまざまな物資が必要になる。他にも農地をつくり田畑を耕し、居住区域、宿泊施設、飲食施設、娯楽施設は必要だ。

 エソルタ島を魔人とモンスターから奪還しただけでは、何も変わらない。

 生存者やユウキやルーミエのように難を逃れた人たちが故郷エソルタ島に戻って来て、活気のある街で暮らせるような状態になって、はじめての復興したと言えるのだ。

 かつてのような賑わいは戻ってこないかもしれない、それでもやってみたいと俺は四人に強く訴えた。

「復興させる足掛かりとしてダンジョンを中心とした経済発展を促すというのだな。そんなことは可能なのか……」

 俺の話を聞き終えたゾンヌフは眉間にしわを寄せて少し考え込んだ。

「……これまでのアキトの成果をみていると可能なのかもしれないな。この話は俺と陛下だけの機密事項として、カガモン帝国はヒト・モノ・カネを全面的に協力させてもらう」

「……うん、ありがとう。本当に助かるよ」

 まだぼんやりとしたイメージしかないが、動き出せばアイディアは出てくるだろう。方針もなんとなく決まったところでみんなに高らかに宣言する。

「よし、みんな、今夜は寝かさないぞ」

「うふふ……アキト様、大胆ね」

 カラルはかなり嬉しそうだがゾンヌフはドン引きだ。

「お、俺もなのか、そういうことは——」

「冗談だよ。単にこれからすることが多いから、夜を徹して作業かなって思って言ったまでだ。
 じゃあ役割分担をしよう。まず俺とゾンヌフは生存者の名簿作りだ。さっきルーミエが作ったものをカガモン帝国に持ち帰る用に書き写してくれ。ユウキとルーミエはエソルタ島の入り口となる始まりの街を決め、その後冒険者たちが通る攻略の道のりを考えてほしい。明日の朝からは城内の探索と宝物の収集を頼む。カラルは俺からの特別指令があるのであとで伝える」

 ゾンヌフはルーミエの作った五百人の名簿を書き写し始めた。宰相だろうがなんだろうが関係ない使えるものは使っていく。

 カラルにはゾンヌフに聞こえないように小声で作業を説明する。

「魂を取り込んだ奴の中に異世界転移魔法陣を開くことのできる空間魔導士は何人いる?」

「少しお待ちください」

 カラルは石板のようなものを取り出し、表示されている情報をタップして確認している。

「十五名います」

「開発してほしいことがある」

「はい」

「空間魔導士を違う場所にあるダンジョン内でそれぞれ召喚する。二人に魔法陣を展開させて、それぞれがいる場所につなげてほしい」

「……え!?ええと、それは異世界を繋ぐ魔法陣ではなく?」

「そうだ。この世界初の転移魔法陣をカラルが開発するんだ。地脈を使った通信用指輪や記録石(きろくせき)システムを開発しているのだし、地脈を使ってできそうじゃないか?」

「空間魔導士から聞き取りながらできますからね。やってみます」

「頼むよ」

 カラルはウキウキしならが部屋を出ていった。



 ゾンヌフは五百名の名前を書き写し、続いてこの島全土に生き残っている人を俺が読み上げ、書きだしていく。俺は極私的絶対王国(マイキングダム)でペンを動かし紙に書く。

 カラルと共同発動の極私的絶対王国(マイキングダム)をもう一つの展開し、王都を中心に広げていき、見つかった街から生存者を確認しながらモンスターを倒していく。

 作業は夜が明けるまで続けられた。

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