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第1章
第百四話 生存者
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明け方、生存者リストの作成は一晩かけても終わらず、作業を中断して俺はルーミエに腕枕をしながらベッドで仮眠をとっていた。
ゾンヌフがある街の生存者を見直していた時に、城中に響き渡る声で叫んだ。
「ああーーーーーー!!!こ、こ、こ、こ……」
「うるさいな、もう少し寝かしてくれよ……」
「これは!!」
といってユウキの所へ駆け寄って、リストの名前を見せている。ユウキも眠っていたようで寝ぼけまなこでゾンヌフのリストを見ている。
何を朝っぱらから大きな声出して…と思ったが……ん!?もしかしてゾンヌフが知っている名前があって、かつあの驚き方は……。
ユウキは喜びながらも戸惑っている。
「……まさか……でも、お姉様たちが……お一人なら同じ名前はありそうだけど、二人そろっているなら、可能性があるかもしれないね。アキト、その街の様子を見られるかな」
「まだ夜明け前だから顔を確認することはできない。現地に行こう!」
「うん、連れて行って」
カラルを残して、俺とユウキ、ルーミエ、ゾンヌフでユウキの姉がいると思われる街、グリンへ向かう。生存者はその街では四十人ほどだった。
箱魔法で飛び立ち、ユウキの指さす方角へ急いだ。王都ワースルから北東に三百キロほど進んだところにある街でかなり大きな部類に入る。
街の中はがらんとしており、建物のほとんどが倒壊している。スキャニング機能で建物一つ一つを探っていき、建物の中に人がいないか確認しつつ進むと、路地裏の建物の中にユウキの姉と思われる二人と他に数人が潜んでいるようだ。
きしむ階段を二階へ上がる。扉の前で止まり、ユウキがドアをノックする。
コンコン……。
「はいりまーす」
部屋に入っていくと、鉄棒で襲ってくる。それをユウキは軽々と手で受け止める。
「驚かせてごめんなさい。今、人を探しているの……ソフィア姉様、マアヤ姉様。いらっしゃいますか?」
「………その声はユウキなの?」
「…うんっ、ユウキだよ」
二人の女性が手を口に当て前に出てきて、しばらくの間ユウキと抱き合っていた。
□
ワースルに異世界転移魔法で戻る。ゾンヌフとユウキの姉たちには強制的に目を閉じてもらい魔法陣を通り抜け、城の庭に着地した後に目を開けてもらう。
「ユウキ……一体どうなっているのかしら?これは夢なの?」
「ソフィア姉様、夢ではないのよ。話せば長くなるから、ゆっくりお伝えするね。そうだ!まずはお風呂の準備をしなくちゃね。アキト、よろしく」
そういうと浴場に案内された。
広い!銭湯くらいの広さはあるが、数年間放置された石造りの浴槽はカビだらけだが、洗えばきれいになりそうだ。
ユウキが見ている前で、極私的絶対王国(マイキングダム)を使い、高圧洗浄機から噴出する水のように壁に吹き付ける。排水のつまりをとりのぞき、すべて外に押し出していく。
「すごい魔法だよね。どうしてそんなことできるようになっちゃったの?」
「どうしてだろうな……俺にもよくわかってないんだ」
「なあにそれ~変なの~」と笑いあった。本当にユウキが嬉しそうでよかった。
浴槽の清掃が終わり熱めのお湯をためつつ、次は壁や床を磨いた。蒸気が浴室を包む。ユウキがアイテムボックスから小瓶を取り出し、液体を浴槽に入れたり、あたりに振りまくと、蒸気に混じり甘い香りが立ちこめる。
「これで作業完了だ。あとはみんなでゆっくりしてくれ」
俺は退散してソフィア、マアヤ、ルーミエ、ユウキの四人でお風呂に入っていった。
作業していた部屋に戻るとカラルは部屋にはいなかった。テーブルの上にカラルからの置手紙があり、しばらく実験でダンジョンに籠り、ご飯は自分で食べると書いてあった。
この城には街の生存者が立ち入ることのできないように、箱魔法で囲っておいたので、おそらく外には出ていないだろう。極私的絶対王国(マイキングダム)を地下に向けて展開するとカラルが魔法陣を見ながら、空間魔導士と何やら話をしている。邪魔はせずにそっとしておいた。
ゾンヌフと生存者リスト作成を再開する。ゾンヌフいわく、イメノア王国側の方が圧倒的に生存者が多いそうだ。襲撃があったのはカノユール王国側だったか……抵抗した結果、命を落としたのか、それとも魔人が転移魔法陣を通るための供物とされたか。
リストは完成しだが、ゾンヌフの知るカノユール王国側の人間は数人の貴族が生き残っているようだった。
「お疲れ、ゾンヌフ。そしたら朝飯にするか」
「ああ」
朝食の準備をしていると、「いやーお兄ちゃん、ありがとう~」といってユウキたちが戻ってきた。風呂から上がってきた四人の女性にしばし目を奪われていると、分析能力が働く。
◇ ◇ ◇
ソフィア
レベル5 B84cm W55cm H82cm 24歳 元イメノア王国 第一王女
◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇
マアヤ
レベル4 B85cm W56cm H84cm 23歳 元イメノア王国 第二王女
◇ ◇ ◇
長い捕らわれの身でやせてしまったのだろう、かなり細い。会った時は疲れ果て、ボロボロな感じだったが、髪もしっかり手入れされて、きちっと服をきると、貫禄というか気品というものが出てきた。
「ああ!、またアキトでれ~っとした顔しているよ、お姉様たちはダメだからね!」
ユウキが姉2人の前に立ちはだかった。
「いや、別にそういう訳じゃないんだけど……。初めましてソフィアさん、マアヤさん。アキトと申します。お聞きになられたかもしれませんが、ユウキさんと結婚しているのでお義姉さんとお呼びした方が良いのかな?」
「そんなにかしこまらないでください。こちらは助けていただいた身です。まずはなんてお礼を言っていいのやら……。ユウキから話を聞いていましたが、あまりに長くてのぼせてしまったくらいなの、それに大切にされていることはよくわかりましたよ、ねえソフィア姉様」
「ええ、ユウキやルゥちゃんも幸せそうでほんとうによかったわ。本当に夢のようで、まだ信じられません。……これまで希望もなく、死を常に意識して毎日を過ごしていましたが、まさかユウキが助けに来てくれるなんて思わなかったわ。本当にありがとうございます」
そういうと二人は頭を深々と下げた。
ゾンヌフがある街の生存者を見直していた時に、城中に響き渡る声で叫んだ。
「ああーーーーーー!!!こ、こ、こ、こ……」
「うるさいな、もう少し寝かしてくれよ……」
「これは!!」
といってユウキの所へ駆け寄って、リストの名前を見せている。ユウキも眠っていたようで寝ぼけまなこでゾンヌフのリストを見ている。
何を朝っぱらから大きな声出して…と思ったが……ん!?もしかしてゾンヌフが知っている名前があって、かつあの驚き方は……。
ユウキは喜びながらも戸惑っている。
「……まさか……でも、お姉様たちが……お一人なら同じ名前はありそうだけど、二人そろっているなら、可能性があるかもしれないね。アキト、その街の様子を見られるかな」
「まだ夜明け前だから顔を確認することはできない。現地に行こう!」
「うん、連れて行って」
カラルを残して、俺とユウキ、ルーミエ、ゾンヌフでユウキの姉がいると思われる街、グリンへ向かう。生存者はその街では四十人ほどだった。
箱魔法で飛び立ち、ユウキの指さす方角へ急いだ。王都ワースルから北東に三百キロほど進んだところにある街でかなり大きな部類に入る。
街の中はがらんとしており、建物のほとんどが倒壊している。スキャニング機能で建物一つ一つを探っていき、建物の中に人がいないか確認しつつ進むと、路地裏の建物の中にユウキの姉と思われる二人と他に数人が潜んでいるようだ。
きしむ階段を二階へ上がる。扉の前で止まり、ユウキがドアをノックする。
コンコン……。
「はいりまーす」
部屋に入っていくと、鉄棒で襲ってくる。それをユウキは軽々と手で受け止める。
「驚かせてごめんなさい。今、人を探しているの……ソフィア姉様、マアヤ姉様。いらっしゃいますか?」
「………その声はユウキなの?」
「…うんっ、ユウキだよ」
二人の女性が手を口に当て前に出てきて、しばらくの間ユウキと抱き合っていた。
□
ワースルに異世界転移魔法で戻る。ゾンヌフとユウキの姉たちには強制的に目を閉じてもらい魔法陣を通り抜け、城の庭に着地した後に目を開けてもらう。
「ユウキ……一体どうなっているのかしら?これは夢なの?」
「ソフィア姉様、夢ではないのよ。話せば長くなるから、ゆっくりお伝えするね。そうだ!まずはお風呂の準備をしなくちゃね。アキト、よろしく」
そういうと浴場に案内された。
広い!銭湯くらいの広さはあるが、数年間放置された石造りの浴槽はカビだらけだが、洗えばきれいになりそうだ。
ユウキが見ている前で、極私的絶対王国(マイキングダム)を使い、高圧洗浄機から噴出する水のように壁に吹き付ける。排水のつまりをとりのぞき、すべて外に押し出していく。
「すごい魔法だよね。どうしてそんなことできるようになっちゃったの?」
「どうしてだろうな……俺にもよくわかってないんだ」
「なあにそれ~変なの~」と笑いあった。本当にユウキが嬉しそうでよかった。
浴槽の清掃が終わり熱めのお湯をためつつ、次は壁や床を磨いた。蒸気が浴室を包む。ユウキがアイテムボックスから小瓶を取り出し、液体を浴槽に入れたり、あたりに振りまくと、蒸気に混じり甘い香りが立ちこめる。
「これで作業完了だ。あとはみんなでゆっくりしてくれ」
俺は退散してソフィア、マアヤ、ルーミエ、ユウキの四人でお風呂に入っていった。
作業していた部屋に戻るとカラルは部屋にはいなかった。テーブルの上にカラルからの置手紙があり、しばらく実験でダンジョンに籠り、ご飯は自分で食べると書いてあった。
この城には街の生存者が立ち入ることのできないように、箱魔法で囲っておいたので、おそらく外には出ていないだろう。極私的絶対王国(マイキングダム)を地下に向けて展開するとカラルが魔法陣を見ながら、空間魔導士と何やら話をしている。邪魔はせずにそっとしておいた。
ゾンヌフと生存者リスト作成を再開する。ゾンヌフいわく、イメノア王国側の方が圧倒的に生存者が多いそうだ。襲撃があったのはカノユール王国側だったか……抵抗した結果、命を落としたのか、それとも魔人が転移魔法陣を通るための供物とされたか。
リストは完成しだが、ゾンヌフの知るカノユール王国側の人間は数人の貴族が生き残っているようだった。
「お疲れ、ゾンヌフ。そしたら朝飯にするか」
「ああ」
朝食の準備をしていると、「いやーお兄ちゃん、ありがとう~」といってユウキたちが戻ってきた。風呂から上がってきた四人の女性にしばし目を奪われていると、分析能力が働く。
◇ ◇ ◇
ソフィア
レベル5 B84cm W55cm H82cm 24歳 元イメノア王国 第一王女
◇ ◇ ◇
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マアヤ
レベル4 B85cm W56cm H84cm 23歳 元イメノア王国 第二王女
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長い捕らわれの身でやせてしまったのだろう、かなり細い。会った時は疲れ果て、ボロボロな感じだったが、髪もしっかり手入れされて、きちっと服をきると、貫禄というか気品というものが出てきた。
「ああ!、またアキトでれ~っとした顔しているよ、お姉様たちはダメだからね!」
ユウキが姉2人の前に立ちはだかった。
「いや、別にそういう訳じゃないんだけど……。初めましてソフィアさん、マアヤさん。アキトと申します。お聞きになられたかもしれませんが、ユウキさんと結婚しているのでお義姉さんとお呼びした方が良いのかな?」
「そんなにかしこまらないでください。こちらは助けていただいた身です。まずはなんてお礼を言っていいのやら……。ユウキから話を聞いていましたが、あまりに長くてのぼせてしまったくらいなの、それに大切にされていることはよくわかりましたよ、ねえソフィア姉様」
「ええ、ユウキやルゥちゃんも幸せそうでほんとうによかったわ。本当に夢のようで、まだ信じられません。……これまで希望もなく、死を常に意識して毎日を過ごしていましたが、まさかユウキが助けに来てくれるなんて思わなかったわ。本当にありがとうございます」
そういうと二人は頭を深々と下げた。
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