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第2章

第百四十七話 カンパニー

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 翌日、カムラドネを出発するときにくれぐれも遠夜見(とおよみ)の巫女をお守りくださいと執事の爺やさんから頼まれる。

 巫女の存在は国宝級であり、いつ神託が降りてくるか分からないので、本来であれば外出なんてもってのほかだった。レイラの時代も街の外から出ることは許されなかったが、そのことを考えると随分と巫女の職場環境改善に役立っている。

 翌日の昼前には戻ってくることを約束して俺たちはカムラドネを後にし、異世界転移魔法を使い一瞬でドルトミア上空に到着した。

「わぁ~、建物がこんなにあるなんて……見渡す限りすべて建造物ですよ」
初めて見る景色にノイリが喜んでいる。

 俺にとっては眼下に広がるドルトミアの景色は、高い建物がない東京のように見える。いくつか宮殿や、西洋風の城、敷地が広い施設も数多くあり、街の中には森などもあって、今回も目星のつけておいた森に着陸する。

 通りに出てタクシーならぬ馬車を探して歩くとすぐに見つけることができた。街の中は大通りでは馬車の往来が可能となっており、狭い生活道路では通行禁止など交通ルールが決めてあるようだ。止まっている馬車に声をかける。

「ネネコーラン社まで頼む」

「はいよ~」

 景気よくおっちゃんが返事をする。

 石畳の道路をがたがたと進む馬車。乗り心地は最悪だが馬車から眺める町の風景もなかなか味があって楽しい。三十分ほどでカンパニー前に到着し料金を支払い降りた。

 先日の第四ダンジョンの開口式で、確か設立六百年とか言っていたか……。なかなか格式のある大きな屋敷の入り口に二人の門番が立っている。ルーミエが馬車の中で装着していたワッペンを見せて通してもらう。エントランスホールにはホテルのような受付があり、ルーミエが受付嬢に用件を伝えると、愛想良く対応をしてくれた。

「先日の第四ダンジョン開口式では大変活躍されましたね。こちらの方へどうぞ」

 どうやら俺たちを見ていてくれた人のようだ。そして別の部屋に案内されると中は体育館にバスケットコート二面はとれそうな広さはある倉庫のような所へ案内された。

「では記録石(キロクセキ)をご提示ください。それと開口式での報酬計算とその後のダンジョン探索で得られましたモンスターや提供してもいい素材などがありましたら、換金いたしますのでご提出ください」

 この部屋では大型のモンスターを出してもいいようになっている。中には数人の男女がいて、換金計算を行ってくれるのだろう。

 ルーミエとユウキと俺の記録石を提出して計算を開始する。

「それでは第四ダンジョンで倒したモンスターをご提出をお願いします」

 一人ずつモンスターを一体ずつ床に出していく。値段を決めて、アイテムボックスへ取り込む作業を繰り返していく。

 待っている間に担当しているお姉さんがルーミエに話しかけてくる。

「開口式いかがでしたか~?」

「本当にたくさんのモンスターが出てきて、とても刺激的だったわ」

「モンスターパレードの時間は丸一日もなくて、短い方だったと思うんですけど戦力配置がなかなか難しかったですね」

「あの二番手で入れ替わったところが、大変そうだったわね」

「そうでしたね、それでもルーミエ隊のあの白の聖騎士というのでしょうか?あの騎士の破壊力はすさまじかったのですが、あの方はパーティメンバーですか?」

「……」

 返事に詰まるルーミエ。それを見かねた俺が助け船を出す。

「あれはね、彼女の国に伝わる召喚術でしてね」

「ああ、なるほど。召喚の類いでしたか。人型というのはあまり聞いたことがないのですが……」

「門外不出の秘技なんだ。過去の彼女の国の英雄を召喚して使役していて、なかなかレアなものでね。あまり口外して欲しくないんだけど……」

「あっ、申し訳ございません。分かりました私の興味本位で聞いたものですので口外はいたしません」

 他の場所から転移魔法を使って呼び寄せたというのも、転移する術がない世界ではそれはそれで大事件にもなる。

「では、続いてルーミエさん提出をお願いします」

 ユウキが戻ってきてルーミエがモンスターの提出し始める。

「そうだ、聞いておきたいことがあったんだ。ルーミエとユウキが魔法の習得をしたくてね。訓練させてくれる所を紹介してほしい」

「魔法訓練所ですね。それなら社内にもありますので……えっとルーミエ隊の契約はスポット契約でしたね。それでは後ほどご案内させていただきます」

「ありがとう。習得期間はどのくらいかかりそう?」

「そうですね、人によってまちまちですので、習得期間はやってみないとわからないですね。週五回の半日の午前か午後を選択できます。そのコースだとお値引きさせてもらって……えーっと一人一ヶ月あたり金貨五枚の授業料で受講が可能ですよ」

 習得までの期間は本人の資質にもよるのだろう。

「はい、次アキトさんお願いします」

 アイテムボックスにしまっておいたモンスターを出していく。ほとんどがカラルのダンジョン用として取り込んでいるので、ここで提出できるのは十数体だけだった。

「はい、ご協力ありがとうございます。皆さんの報酬をまとめてお支払いということで良いでしょうか?」

「ええ」

「……金貨百四十五枚になります」

「うん、ありがとう。あと明細を記録石にいれといてくださる?」

「かしこまりました。あと、冒険者ランクについては今回の結果を反映させて後日ご連絡しますね。……以上で手続きは終わりになります。それでは本日から魔法訓練所を利用されるということで、私が引き続き担当させていただきますね」

 魔法習得の適正を確認するため、別室に案内される。
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