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マリッジブルー
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それからが結構大変だった。オルグレン邸でいることに生命の危険を感じた私は、理由をつけてミルドレイル伯爵家に滞在しながら花嫁修業を行う事にした。
さすがに何代も続く名門オルグレン伯爵家の歴史や、その人間関係を覚えるのはかなりの大仕事だった。しかも伯爵家と交流のある人物を含めると、それは王族から始まり末端の貴族や商人まで何千人もの顔と経歴を覚えなければいけない。
毎日さして興味のない人の事を覚えるばかりで、このまま逃げ出したい気持ちに駆られたが、ダニエルとの婚約をこの上なく喜んでくれたお父様やお母様の事を考えるとそうはいかない。
キャサリンとの午後のティータイムが私の唯一の心の安寧の時間になっていた。
今日も中庭に面した少し高い場所のテラスで向かい合ってお茶を飲む。周囲には満開の花々が競うように咲き乱れて、色とりどりの美しい色をそこここに落としている。お茶を飲み終わってまだ時間があまっていたので、テラスに腰かけたまま編み物をすることにした。
キャサリンは白い糸で凝った模様のレース編みをしている。少し肉付きの良い指が器用にかぎ針を動かしていき、綿密な繊細な模様が形作られていく。編み物や刺繍はキャサリンの得意分野なのだ。素晴らしい指使いに思わず見惚れる。
「まさかお父様までが、エミリーとダニエル様の事を応援していただなんて知らなかったわ。私、余計なことをしてしまったわね。他の男性を貴女に紹介するだなんて・・」
私は太めの茶色のコットンの毛糸を、かぎ針を使って右手を器用に動かしながら目を拾っては編み込んでいく。そうして途中で編み目を落としたことに気が付き、大きくため息をついた私は編み目を一段ほどくことにした。
実はもうこれで三回目だ。全く編み物に集中できていない。でもその理由を私は自分自身よく理解していた。
「いいのよ、そのくらい。それにダニエルが邪魔しに現れたしね。まさかあの時は彼と婚約することになるだなんて思ってもみなかったわ」
私は真性変態のドSのダニエルという悪い意味で言ったのに、キャサリンはそれを全く逆のいい意味に捉えたようだ。ぽうっと頬を赤らめながら夢見心地の目をして答える。
「確かにダニエル様は本当に女性にもてていらっしゃるものね。エミリーと婚約してから、ダニエル様に一度でいいから抱かれてみたいっていう女性が急増しているのですってよ」
そういってキャサリンが編み物の手を止めずに、私の方を向いた。私は少し頬を膨らませながら、もう一度かぎ針を穴に通して編み物を始めた。
「そうね。私と結婚するくらいだからそんなに女性の理想は高くないとでも思ったのでしょうね。でも本当に一度でもダニエルに抱かれたらそんな事二度と言わないに違いないわ」
あんなドSで鬼畜な・・・絶倫夜通しセックスを経験すれば、普通の女性は根を上げて逃げ出すに違いないもの・・・。
私は心の中で毒づいた。でも確かに今の私はダニエルの事で猛烈に悩んでいる。婚約発表の後に初めて夜会の席に二人で出席してからというもの、私はここ数日理由をつけてはダニエルを避け続けているのだ。
あの夜会の日、ダニエルの周りには彼に群がる大勢の女性やその才能を賛辞する紳士らで一杯になっていた。ダニエルは私を気遣ってうまくあしらい、すぐにアーロン様やキャサリンのいる場所に連れて行ってくれたが、その時の光景が目に焼き付いて離れない。
今まで話したことも無い有力貴族の方々と対等に話をするダニエルを見ると、自分との格の差を見せつけられるような気がして自信が失くなってきた。その場に居合わせた私よりも身分の高くて美しい聡明な女性たちが、ダニエルを羨望の眼差しで見ていたのも見逃さなかった。
実際、オルグレン伯爵家の夫人として私にどれだけの事が出来るのかといえば・・・いまでも名前と経歴を覚えるだけでこんなに苦労をしているのだ。大して貢献できないばかりか迷惑さえかけてしまいそうだ。
『本当にダニエルは私でいいのだろうか?』
とどのつまりはそういう事だ。この疑問がいつも頭の中を一巡しては、また舞い戻ってきて私に問いかけてくる。
ダニエルは八年前一度会ったきりの私に恋におちたのだ。八年待っている間にそれが段々と美化されてしまったという事は往々にしてあるだろう。そうして実際の私と付き合ってみて、想像と違ったという事になる可能性だってゼロではないはずだ。
「もうこのままどこかに逃げてしまおうかしら・・・」
「ふふっ・・・エミリーは本当にダニエル様が大好きなのね」
キャサリンが笑いながら微笑ましそうにいう。どこをどう取ったらそういった話になるのか理解に苦しむが、確かに私はダニエルが好きなのだ。
最近ではそれが愛に変わってきているのも自覚している。でもこれ以上ダニエルを好きになってしまうと、彼が私に幻滅したときの衝撃は計り知れないものになるだろう。
そうして私は大きくため息をついた。
そう・・・私は怯えているのだ。私が引き返せないほどにダニエルを愛してしまった後、ダニエルが私への興味を失ってしまったらと考えるだけで、胸が締め付けられるように苦しくなってどうしようもなくなる。
四歳という年齢の差も私に重くのし掛かってくる。
「今日もオルグレン様の屋敷にはいかないの?ダニエル様が会いに来ても勉強が忙しいとかで、顔も見せないで断っているのでしょう?昨日なんか本当に心配なさっていて見ていられないほどだったわよ」
「・・・・行かない・・・もうこのまま会わないほうがいいのかも知れない・・・」
私は編み物を終えて最後の目の始末をしながら俯きがちに答えた。
「・・どうして?エミリーはダニエル様と愛し合っているのよね」
「だってダニエルったらあんなにモテるのよ。私よりも若くて条件のいい女性は沢山いるわ。いつかあの天使の様な笑顔で、『もう好きじゃなくなったからさよなら』って、軽く言われるのじゃないのかと思うと・・・想像だけで目の前のダニエルを殴ってしまいそうになるの。だからダニエルに会いたくないのよ」
そうだ・・・そんなことを本当に言われたとしたら・・きっと私はダニエルを凌辱して苦痛を与えて、死ぬよりも辛い目に合わせてしまわないと気が済まなくなるはずだ。王国史上最も残忍な事件としてエミリー・スタインズの名を遺すのは私も本望ではない。
そうだ、今ならまだ引き返せる。まだ婚約の段階なら多少の傷は女側が負うだろうが仕方がない。このままだと私の心の平穏どころかダニエルの体にまで傷をつけてしまいそうだ。
私は決意を込めてその場で立ち上がった。その時、中庭の方から何者かがテラスに向かってきている気配を感じた。ふと目をやると、中庭の花の生垣の陰からダニエルが出てきたのが見えた。
いつもの柔らかい表情ではなくてまるで敵を見るような鋭い目をしたダニエルは、私を見つめたまま近くにゆっくりと歩いてきた。その背後にはルーク様が、心配そうな表情で見守っている。立ち上がったままの私の体がテーブルに当たって、空のティーカップがカチャリと音を立てた。
そうしてしばらくすると、そのまた後ろからミルドレイル家の執事が走って息を切らせて追いかけてきた。どう考えても執事の案内を待たずに勝手に屋敷に入ってきたのだろう。
キャサリンが執事に一言声をかけてその場をさがらせる。ダニエルはいつもの微笑みを浮かべてはいるが、体全体からあふれ出てくる空気を切り裂かんばかりの気迫に、その場にいる者たちは完璧に気押されていた。
「勉強が忙しくて・・気分がすぐれないと聞いたけれど、今日は元気なようだね、エミリー。ああ・・・頭痛がしているとも言っていたね。あれは三日前だったかな?」
相変わらず嫌味な男だ。そんな調子で私にも簡単に別れを囁くに違いない。ああ・・考えたら、また殴りたくなってきたわ。
「おかげさまで良くなってきていたのだけど、また気分が悪くなってきたみたいだわ。部屋に戻って休まないと倒れてしまいそうなの。せっかく来ていただいたけれど部屋に戻るわね」
私は本心を隠してにっこりと笑うと、額に手を当てて少しよろけて見せた。するとダニエルが私の体を横抱きに抱き上げたかと思ったら、私を睨んだままで優しい声で耳元で囁く。
「じゃあ僕が抱いて連れて行ってあげるね。僕は君の婚約者だから・・・。でもどうして僕を避けるんだい?エミリー。誰かに何かをいわれたの?だったらそいつは僕が対処するから君は心配しなくていい」
一瞬ダニエルの目から鋭い殺気が放たれて、ぞくっと冷たいものが背中を這っていった。彼からできるだけ目を逸らせながら小さい声でわざと素っ気なく話す。
「・・・そうじゃないわ。これは私自身の問題だから・・・。マリッジブルーなのかも知れないわね。結婚が怖くなったのよ」
「それって僕との結婚が怖いということなの?僕が嫌になった?」
ダニエルが思い切り悲しそうな顔をして私を見る。切なさに満ちたその緑の瞳に太陽の光が当たって少し潤んでいるようにも見えた。極力ダニエルの顔を見ないように、言葉を選んで気持ちを伝える。
「そうじゃないわ。要するに私が臆病だってことよ。わざわざ天使と恋をして地上に落ちてしまうリスクを負うより、地上で人間と恋をした方がいいのかなって考えているだけよ」
更に眉根を寄せて目を細めながらダニエルが真剣な顔つきで私を見つめる。そうして呼吸が荒くなるのを必死で押さえているかのように、重い息をゆっくりと吐いた。
「・・・僕は君が思っているほど完璧じゃないよ。君がいなければもう既にこの世にすらいなかった」
私を抱え上げたまま、ダニエルは屋敷の中ではなく中庭の方に向かった。黄色の花びらをした薔薇が一面に咲いていて、とても静かで心地のいい風が吹いている。私の着ている淡いブルーのドレスの裾が風にあおられてふわりと舞う。
「そんな怖いこと言わないで、大体、ダニエルと私じゃあ釣り合いが取れないのよ。こういう場合、下の身分の方が何かと辛いのよ」
「でもあの森で・・・君が僕に言ったんだよ。運命を変えるってね。僕が君を選んで君の運命を変えてしまったのかもしれない。でも君なら僕と変えられた運命の中で一緒に笑って楽しく生きてくれると思った」
そんな事を言われても私はさっぱり森での出来事を覚えていないのだ。そんな程度の記憶しかない出来事で、ここまで運命を変えられたダニエルの気が知れない。十五歳の私が、そんなにいいことを言ったであろう覚えも全くない。
「私は聖女でも何でもないわよ。普通の女よ?何の特技もないし、貴方を笑わせるような面白いことも言えないわよ?」
「ああ・・・僕は八年前、君に選ばれて運命を変えさせられたネズミで、君は僕が選んだネズミだ。それに君は全く普通の女性じゃあない。普通の男では君の相手は絶対に無理だよ」
「さっぱり意味が分からないわ、ダニエル」
私は大きくため息をついて、にっこりと微笑むダニエルの顔を見つめた。金色の前髪が風に揺れて更に格好良さを増している。
それにしても訳の分からないことを言う男だ。ダニエルが天才だと皆はいうけれど、私の前で話す彼はただのドSで鬼畜の変態だ。確かに普通の女性なら三日と持たないだろう。私はその点ダニエルとはもう二か月以上も一緒に過ごしている。という事は彼は意外と私と合っているといえるのかもしれない。
「とにかく僕は君を手放すつもりは全くないという事だ。だからこのまま僕の屋敷に連れて帰る。二度とエミリーが僕から離れないようにね」
そういって太陽の光をその金色の柔らかい髪にいっぱい浴びながら、ダニエルが私の方を向いてにこやかに微笑んだ。私はそんなダニエルを睨みつけながら叫んだ。
「そんなの横暴だわ!私はまだ貴方との結婚を悩んでいるんだから!」
「どうして?僕が嫌いなの?エミリー」
そういってダニエルは金色の睫毛を伏せ・・・寂しそうな目で私を見る。その仕草があまりにも可愛らしくて、胸の奥がきゅーんと痛む。この顔に私は弱いのだ。その瞳をあまり見ないようにしてそっぽを向き、わざと大きな声を出す。
「・・・そういう問題じゃなくて・・・なんていうか・・その・・もういいわ!そういえばダニエルの下着をまだもらっていないわって思ったの!!」
「ふっ・・・ははは、そんなものでいいなら今すぐにでも君にあげるよ」
そう微笑んで片手で私を抱きながら、ダニエルが反対の手でズボンのベルトを外そうとする。思わず両手でダニエルの顔を押さえてその瞳を力を込めて見つめた。
「やっ!ここでズボンを脱ぐのは止めて!」
すると大人しく私の命令に従って手の動きを止めたダニエルは、その手を私の頬に当てて愛おしそうに見つめた。そうして親指で私の唇を大切なものを触るような手つきで撫でつける。何だか照れくさくなった私は、頬を赤らめながら早口で話し始める。
「そうだわ、わたし貴方にプレゼントがあるの。それを身につけてくれたらダニエルの愛情を信じて、天使と恋におちて見せるわ。そうして何があろうが他の天使から羽を奪ってでも天にしがみ付いて見せる」
そうして決意のこもった目をして、勢いよくさきほど編んでいて完成した茶色の小さな袋の様なものをダニエルに差し出した。それは熊の形をした帽子で、親指よりも少し・・・いやもう二回りくらい大きなものが入る太さだ。
ダニエルがそれを見て顔を青くして目を大きく見開いた。さすがに勘のいい男だ・・・。
私はまたダニエルのうろたえた顔が見ることができて、満足の微笑みを漏らした。
「・・・これって・・・まさか・・・エミリー!」
「そうよ、あの可愛らしいモノの姿をもう一度見せて欲しいの。アレにこれを被せて私に見せてちょうだい?うさぎに熊も作ったのよ?可愛いでしょう。もちろん貴方の大好きなネズミもあるわ」
私はドヤ顔でダニエルに向かって言い放った。しばらく絶句したダニエルは、しばらくたって再び口を開いた。私はワクワクしながら期待に満ちた目をしてダニエルの返事を待つ。
「あの・・・エミリー。これは物凄く難しいよ。いくら天才の僕でもできないことだ・・・」
「あら、どうして?」
「僕の陰茎は君に見られていると思っただけですぐに勃起してしまうからだよ。今ですらもう半勃ち状態だ」
そういわれて私はポッと頬を赤らめた。それを見て頬を緩ませたダニエルが優しい笑顔で私に笑いかける。その笑顔があまりにも格好いいのできゅんと胸がときめいた。
「なら朝まだダニエルが眠っているときに、私がこっそりつけてもいいかしら?ゆっくりと起こさないように慎重にやれば大丈夫じゃない?」
「・・・なら朝はやめておいた方がいい。深夜の時間帯なら何とかなるかも知れないね」
「でもそうしたら蝋燭の灯りで見なければいけないじゃない。私は日光の下でこれを貴方がつけているところを見たいのよ」
ワクワクしながら私がおねだりをする目で見るので、さすがに観念したらしい。ダニエルは仕方がないと言った風にため息をつき、私を見て顔全体に微笑みを浮かべた。
「ははっ・・負けたよ、エミリー。善処はする、でも期待はしないでね。でも可愛い姿を君に見せられなくても、僕の君への愛は真実だからね。逆に君への愛が真実だからこそ、可愛い姿を見せてあげられない。僕は君の為なら世界でもなんでも手に入れて見せるよ」
その言葉には嘘は含まれていないのだろう。ダニエルなら本当に私の為に王国を戦争に導くことさえやりかねない。世界を手に入れた自分を頭の中で少しだけ想像してみた。
「分かったわ。でも世界はいらないわ、維持するのが大変そうだもの」
そうだ・・・スタインズ家のあの小さな城でさえ、維持費にかなりのお金と労力がかかっている。世界だなんてとんでもない。
「ははっ・・・君らしい答えだね。愛しているよ、エミリー」
そういってダニエルは私の腰を持って高くまで持ち上げた。
「きゃっ!!」
腰の部分がダニエルの胸に当たって、ダニエルの顔がかなり下の方に見える。不安定なので私は両腕をダニエルの両肩につけてバランスを保つ。そうして私は未来の旦那様の顔をまじまじと見つめなおした。
金色のカールした柔らかい髪に・・・エメラルドグリーンの瞳。睫毛がびっしりと生えた瞳はアーモンド形で整っている。きめ細かな肌に、程よい筋肉ののった体。全てが完璧な男性だ・・・。
私の大切な年下ドSの騎士様・・・しかも八年越しの執念深いストーカーで私をこの上なく愛してくれている。
「ダニエル・・・今夜は覚悟なさいね。絶対に貴方を跪かせて懇願させてあげるわ」
私はそういって思い切りダニエルを抱きしめた。
Fin.
さすがに何代も続く名門オルグレン伯爵家の歴史や、その人間関係を覚えるのはかなりの大仕事だった。しかも伯爵家と交流のある人物を含めると、それは王族から始まり末端の貴族や商人まで何千人もの顔と経歴を覚えなければいけない。
毎日さして興味のない人の事を覚えるばかりで、このまま逃げ出したい気持ちに駆られたが、ダニエルとの婚約をこの上なく喜んでくれたお父様やお母様の事を考えるとそうはいかない。
キャサリンとの午後のティータイムが私の唯一の心の安寧の時間になっていた。
今日も中庭に面した少し高い場所のテラスで向かい合ってお茶を飲む。周囲には満開の花々が競うように咲き乱れて、色とりどりの美しい色をそこここに落としている。お茶を飲み終わってまだ時間があまっていたので、テラスに腰かけたまま編み物をすることにした。
キャサリンは白い糸で凝った模様のレース編みをしている。少し肉付きの良い指が器用にかぎ針を動かしていき、綿密な繊細な模様が形作られていく。編み物や刺繍はキャサリンの得意分野なのだ。素晴らしい指使いに思わず見惚れる。
「まさかお父様までが、エミリーとダニエル様の事を応援していただなんて知らなかったわ。私、余計なことをしてしまったわね。他の男性を貴女に紹介するだなんて・・」
私は太めの茶色のコットンの毛糸を、かぎ針を使って右手を器用に動かしながら目を拾っては編み込んでいく。そうして途中で編み目を落としたことに気が付き、大きくため息をついた私は編み目を一段ほどくことにした。
実はもうこれで三回目だ。全く編み物に集中できていない。でもその理由を私は自分自身よく理解していた。
「いいのよ、そのくらい。それにダニエルが邪魔しに現れたしね。まさかあの時は彼と婚約することになるだなんて思ってもみなかったわ」
私は真性変態のドSのダニエルという悪い意味で言ったのに、キャサリンはそれを全く逆のいい意味に捉えたようだ。ぽうっと頬を赤らめながら夢見心地の目をして答える。
「確かにダニエル様は本当に女性にもてていらっしゃるものね。エミリーと婚約してから、ダニエル様に一度でいいから抱かれてみたいっていう女性が急増しているのですってよ」
そういってキャサリンが編み物の手を止めずに、私の方を向いた。私は少し頬を膨らませながら、もう一度かぎ針を穴に通して編み物を始めた。
「そうね。私と結婚するくらいだからそんなに女性の理想は高くないとでも思ったのでしょうね。でも本当に一度でもダニエルに抱かれたらそんな事二度と言わないに違いないわ」
あんなドSで鬼畜な・・・絶倫夜通しセックスを経験すれば、普通の女性は根を上げて逃げ出すに違いないもの・・・。
私は心の中で毒づいた。でも確かに今の私はダニエルの事で猛烈に悩んでいる。婚約発表の後に初めて夜会の席に二人で出席してからというもの、私はここ数日理由をつけてはダニエルを避け続けているのだ。
あの夜会の日、ダニエルの周りには彼に群がる大勢の女性やその才能を賛辞する紳士らで一杯になっていた。ダニエルは私を気遣ってうまくあしらい、すぐにアーロン様やキャサリンのいる場所に連れて行ってくれたが、その時の光景が目に焼き付いて離れない。
今まで話したことも無い有力貴族の方々と対等に話をするダニエルを見ると、自分との格の差を見せつけられるような気がして自信が失くなってきた。その場に居合わせた私よりも身分の高くて美しい聡明な女性たちが、ダニエルを羨望の眼差しで見ていたのも見逃さなかった。
実際、オルグレン伯爵家の夫人として私にどれだけの事が出来るのかといえば・・・いまでも名前と経歴を覚えるだけでこんなに苦労をしているのだ。大して貢献できないばかりか迷惑さえかけてしまいそうだ。
『本当にダニエルは私でいいのだろうか?』
とどのつまりはそういう事だ。この疑問がいつも頭の中を一巡しては、また舞い戻ってきて私に問いかけてくる。
ダニエルは八年前一度会ったきりの私に恋におちたのだ。八年待っている間にそれが段々と美化されてしまったという事は往々にしてあるだろう。そうして実際の私と付き合ってみて、想像と違ったという事になる可能性だってゼロではないはずだ。
「もうこのままどこかに逃げてしまおうかしら・・・」
「ふふっ・・・エミリーは本当にダニエル様が大好きなのね」
キャサリンが笑いながら微笑ましそうにいう。どこをどう取ったらそういった話になるのか理解に苦しむが、確かに私はダニエルが好きなのだ。
最近ではそれが愛に変わってきているのも自覚している。でもこれ以上ダニエルを好きになってしまうと、彼が私に幻滅したときの衝撃は計り知れないものになるだろう。
そうして私は大きくため息をついた。
そう・・・私は怯えているのだ。私が引き返せないほどにダニエルを愛してしまった後、ダニエルが私への興味を失ってしまったらと考えるだけで、胸が締め付けられるように苦しくなってどうしようもなくなる。
四歳という年齢の差も私に重くのし掛かってくる。
「今日もオルグレン様の屋敷にはいかないの?ダニエル様が会いに来ても勉強が忙しいとかで、顔も見せないで断っているのでしょう?昨日なんか本当に心配なさっていて見ていられないほどだったわよ」
「・・・・行かない・・・もうこのまま会わないほうがいいのかも知れない・・・」
私は編み物を終えて最後の目の始末をしながら俯きがちに答えた。
「・・どうして?エミリーはダニエル様と愛し合っているのよね」
「だってダニエルったらあんなにモテるのよ。私よりも若くて条件のいい女性は沢山いるわ。いつかあの天使の様な笑顔で、『もう好きじゃなくなったからさよなら』って、軽く言われるのじゃないのかと思うと・・・想像だけで目の前のダニエルを殴ってしまいそうになるの。だからダニエルに会いたくないのよ」
そうだ・・・そんなことを本当に言われたとしたら・・きっと私はダニエルを凌辱して苦痛を与えて、死ぬよりも辛い目に合わせてしまわないと気が済まなくなるはずだ。王国史上最も残忍な事件としてエミリー・スタインズの名を遺すのは私も本望ではない。
そうだ、今ならまだ引き返せる。まだ婚約の段階なら多少の傷は女側が負うだろうが仕方がない。このままだと私の心の平穏どころかダニエルの体にまで傷をつけてしまいそうだ。
私は決意を込めてその場で立ち上がった。その時、中庭の方から何者かがテラスに向かってきている気配を感じた。ふと目をやると、中庭の花の生垣の陰からダニエルが出てきたのが見えた。
いつもの柔らかい表情ではなくてまるで敵を見るような鋭い目をしたダニエルは、私を見つめたまま近くにゆっくりと歩いてきた。その背後にはルーク様が、心配そうな表情で見守っている。立ち上がったままの私の体がテーブルに当たって、空のティーカップがカチャリと音を立てた。
そうしてしばらくすると、そのまた後ろからミルドレイル家の執事が走って息を切らせて追いかけてきた。どう考えても執事の案内を待たずに勝手に屋敷に入ってきたのだろう。
キャサリンが執事に一言声をかけてその場をさがらせる。ダニエルはいつもの微笑みを浮かべてはいるが、体全体からあふれ出てくる空気を切り裂かんばかりの気迫に、その場にいる者たちは完璧に気押されていた。
「勉強が忙しくて・・気分がすぐれないと聞いたけれど、今日は元気なようだね、エミリー。ああ・・・頭痛がしているとも言っていたね。あれは三日前だったかな?」
相変わらず嫌味な男だ。そんな調子で私にも簡単に別れを囁くに違いない。ああ・・考えたら、また殴りたくなってきたわ。
「おかげさまで良くなってきていたのだけど、また気分が悪くなってきたみたいだわ。部屋に戻って休まないと倒れてしまいそうなの。せっかく来ていただいたけれど部屋に戻るわね」
私は本心を隠してにっこりと笑うと、額に手を当てて少しよろけて見せた。するとダニエルが私の体を横抱きに抱き上げたかと思ったら、私を睨んだままで優しい声で耳元で囁く。
「じゃあ僕が抱いて連れて行ってあげるね。僕は君の婚約者だから・・・。でもどうして僕を避けるんだい?エミリー。誰かに何かをいわれたの?だったらそいつは僕が対処するから君は心配しなくていい」
一瞬ダニエルの目から鋭い殺気が放たれて、ぞくっと冷たいものが背中を這っていった。彼からできるだけ目を逸らせながら小さい声でわざと素っ気なく話す。
「・・・そうじゃないわ。これは私自身の問題だから・・・。マリッジブルーなのかも知れないわね。結婚が怖くなったのよ」
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「そうじゃないわ。要するに私が臆病だってことよ。わざわざ天使と恋をして地上に落ちてしまうリスクを負うより、地上で人間と恋をした方がいいのかなって考えているだけよ」
更に眉根を寄せて目を細めながらダニエルが真剣な顔つきで私を見つめる。そうして呼吸が荒くなるのを必死で押さえているかのように、重い息をゆっくりと吐いた。
「・・・僕は君が思っているほど完璧じゃないよ。君がいなければもう既にこの世にすらいなかった」
私を抱え上げたまま、ダニエルは屋敷の中ではなく中庭の方に向かった。黄色の花びらをした薔薇が一面に咲いていて、とても静かで心地のいい風が吹いている。私の着ている淡いブルーのドレスの裾が風にあおられてふわりと舞う。
「そんな怖いこと言わないで、大体、ダニエルと私じゃあ釣り合いが取れないのよ。こういう場合、下の身分の方が何かと辛いのよ」
「でもあの森で・・・君が僕に言ったんだよ。運命を変えるってね。僕が君を選んで君の運命を変えてしまったのかもしれない。でも君なら僕と変えられた運命の中で一緒に笑って楽しく生きてくれると思った」
そんな事を言われても私はさっぱり森での出来事を覚えていないのだ。そんな程度の記憶しかない出来事で、ここまで運命を変えられたダニエルの気が知れない。十五歳の私が、そんなにいいことを言ったであろう覚えも全くない。
「私は聖女でも何でもないわよ。普通の女よ?何の特技もないし、貴方を笑わせるような面白いことも言えないわよ?」
「ああ・・・僕は八年前、君に選ばれて運命を変えさせられたネズミで、君は僕が選んだネズミだ。それに君は全く普通の女性じゃあない。普通の男では君の相手は絶対に無理だよ」
「さっぱり意味が分からないわ、ダニエル」
私は大きくため息をついて、にっこりと微笑むダニエルの顔を見つめた。金色の前髪が風に揺れて更に格好良さを増している。
それにしても訳の分からないことを言う男だ。ダニエルが天才だと皆はいうけれど、私の前で話す彼はただのドSで鬼畜の変態だ。確かに普通の女性なら三日と持たないだろう。私はその点ダニエルとはもう二か月以上も一緒に過ごしている。という事は彼は意外と私と合っているといえるのかもしれない。
「とにかく僕は君を手放すつもりは全くないという事だ。だからこのまま僕の屋敷に連れて帰る。二度とエミリーが僕から離れないようにね」
そういって太陽の光をその金色の柔らかい髪にいっぱい浴びながら、ダニエルが私の方を向いてにこやかに微笑んだ。私はそんなダニエルを睨みつけながら叫んだ。
「そんなの横暴だわ!私はまだ貴方との結婚を悩んでいるんだから!」
「どうして?僕が嫌いなの?エミリー」
そういってダニエルは金色の睫毛を伏せ・・・寂しそうな目で私を見る。その仕草があまりにも可愛らしくて、胸の奥がきゅーんと痛む。この顔に私は弱いのだ。その瞳をあまり見ないようにしてそっぽを向き、わざと大きな声を出す。
「・・・そういう問題じゃなくて・・・なんていうか・・その・・もういいわ!そういえばダニエルの下着をまだもらっていないわって思ったの!!」
「ふっ・・・ははは、そんなものでいいなら今すぐにでも君にあげるよ」
そう微笑んで片手で私を抱きながら、ダニエルが反対の手でズボンのベルトを外そうとする。思わず両手でダニエルの顔を押さえてその瞳を力を込めて見つめた。
「やっ!ここでズボンを脱ぐのは止めて!」
すると大人しく私の命令に従って手の動きを止めたダニエルは、その手を私の頬に当てて愛おしそうに見つめた。そうして親指で私の唇を大切なものを触るような手つきで撫でつける。何だか照れくさくなった私は、頬を赤らめながら早口で話し始める。
「そうだわ、わたし貴方にプレゼントがあるの。それを身につけてくれたらダニエルの愛情を信じて、天使と恋におちて見せるわ。そうして何があろうが他の天使から羽を奪ってでも天にしがみ付いて見せる」
そうして決意のこもった目をして、勢いよくさきほど編んでいて完成した茶色の小さな袋の様なものをダニエルに差し出した。それは熊の形をした帽子で、親指よりも少し・・・いやもう二回りくらい大きなものが入る太さだ。
ダニエルがそれを見て顔を青くして目を大きく見開いた。さすがに勘のいい男だ・・・。
私はまたダニエルのうろたえた顔が見ることができて、満足の微笑みを漏らした。
「・・・これって・・・まさか・・・エミリー!」
「そうよ、あの可愛らしいモノの姿をもう一度見せて欲しいの。アレにこれを被せて私に見せてちょうだい?うさぎに熊も作ったのよ?可愛いでしょう。もちろん貴方の大好きなネズミもあるわ」
私はドヤ顔でダニエルに向かって言い放った。しばらく絶句したダニエルは、しばらくたって再び口を開いた。私はワクワクしながら期待に満ちた目をしてダニエルの返事を待つ。
「あの・・・エミリー。これは物凄く難しいよ。いくら天才の僕でもできないことだ・・・」
「あら、どうして?」
「僕の陰茎は君に見られていると思っただけですぐに勃起してしまうからだよ。今ですらもう半勃ち状態だ」
そういわれて私はポッと頬を赤らめた。それを見て頬を緩ませたダニエルが優しい笑顔で私に笑いかける。その笑顔があまりにも格好いいのできゅんと胸がときめいた。
「なら朝まだダニエルが眠っているときに、私がこっそりつけてもいいかしら?ゆっくりと起こさないように慎重にやれば大丈夫じゃない?」
「・・・なら朝はやめておいた方がいい。深夜の時間帯なら何とかなるかも知れないね」
「でもそうしたら蝋燭の灯りで見なければいけないじゃない。私は日光の下でこれを貴方がつけているところを見たいのよ」
ワクワクしながら私がおねだりをする目で見るので、さすがに観念したらしい。ダニエルは仕方がないと言った風にため息をつき、私を見て顔全体に微笑みを浮かべた。
「ははっ・・負けたよ、エミリー。善処はする、でも期待はしないでね。でも可愛い姿を君に見せられなくても、僕の君への愛は真実だからね。逆に君への愛が真実だからこそ、可愛い姿を見せてあげられない。僕は君の為なら世界でもなんでも手に入れて見せるよ」
その言葉には嘘は含まれていないのだろう。ダニエルなら本当に私の為に王国を戦争に導くことさえやりかねない。世界を手に入れた自分を頭の中で少しだけ想像してみた。
「分かったわ。でも世界はいらないわ、維持するのが大変そうだもの」
そうだ・・・スタインズ家のあの小さな城でさえ、維持費にかなりのお金と労力がかかっている。世界だなんてとんでもない。
「ははっ・・・君らしい答えだね。愛しているよ、エミリー」
そういってダニエルは私の腰を持って高くまで持ち上げた。
「きゃっ!!」
腰の部分がダニエルの胸に当たって、ダニエルの顔がかなり下の方に見える。不安定なので私は両腕をダニエルの両肩につけてバランスを保つ。そうして私は未来の旦那様の顔をまじまじと見つめなおした。
金色のカールした柔らかい髪に・・・エメラルドグリーンの瞳。睫毛がびっしりと生えた瞳はアーモンド形で整っている。きめ細かな肌に、程よい筋肉ののった体。全てが完璧な男性だ・・・。
私の大切な年下ドSの騎士様・・・しかも八年越しの執念深いストーカーで私をこの上なく愛してくれている。
「ダニエル・・・今夜は覚悟なさいね。絶対に貴方を跪かせて懇願させてあげるわ」
私はそういって思い切りダニエルを抱きしめた。
Fin.
13
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・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
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