メスガキ系幼馴染をわからせるのは諦めて普通の青春送ります……おや!? 幼馴染のようすが……!

野谷 海

文字の大きさ
20 / 54
第2章

第19.5話 幼馴染と女子会(遥香Side)

しおりを挟む


 奏向が夜空とのデートに行っちゃうのを見送ったあたしは、リビングに駆け込んで奏向ママに泣きついた。
 
「うぇーん、奏向ママぁ……奏向があたしを置いて別の女に会いにいっちゃったよぉ……」

 ソファに座っていた奏向ママは、それを聞いて飛び上がると電話を握って狼狽え始めた。

「なんですって……!?   自衛隊か?   SATか?   それともゴルゴか?   私は誰に出動要請を出せばいいんだ!?   遥香ちゃんを泣かせるとはあのドラ息子、帰ってきたら去勢してやる」

「それはダメぇ~……あたしが困るぅ……」

「そうだ遥香ちゃん、ケーキ食べる?」

「うん、食べる!」

「それじゃ、今から女子会しましょ?」


 ケーキとあま~いコーヒーを用意してくれた奏向ママは、あたしのなが~い話を「うんうん」と相槌を挟みながら聞いてくれた。すっごく聞き上手で、同級生の友達と恋バナするよりも話しやすくて、大人の余裕を感じた。

「ねぇ酷くない?   あたしが寝てる隙に黙って他の女に会いに行ってたんだよ!?   これは今のうちに矯正しとかないと絶対将来浮気とか不倫に走っちゃう兆候だよ!」

「そっかそっか……そりゃおもしろ……いや大変な状況になってるねえ」

「奏向パパは浮気とかしたことある?」

「バレたら私に殺されるのが分かってるから、あの人は多分したことないんじゃないかな」

「じゃあ奏向も大丈夫かな……?   そういうのって遺伝とかって関係あるのかな?」

「遥香ちゃんがしっかり手綱を握ってれば、奏向もしないと思うわよ?   ウチは代々女性が強い家系らしいから」

「奏向パパもドMなの?」

「それは秘密……」

 奏向ママは優しい表情で片目を閉じて、口元に人差し指を添えた。ちょっとえっちだ。

「そだね……奏向パパは、奏向ママのだもんね。そんなこと他の人には知られたくないか」

「そうじゃないよ?   いくら結婚してるとは言え、人は誰かの所有物になんてならない。1人の人として尊敬し合って、尊重し合う、その気持ちがないと夫婦なんてやってらんないと思うわ。だって元は他人だしね?」

「そっか……じゃあもし奏向ママがあたしとおんなじ状況だったら、こんな時どうするの?」

「ダメだったら私が拾ってやるから、気合い入れて行ってこい!   って背中押すかも。若い頃の恋って、他人からどうこう言われようが、止めらんないものでしょ?」

「奏向ママ、かっこいい……あたしはまだ無理だなぁ。そんなこと言えない……」

「私には私のやり方があって、遥香ちゃんには遥香ちゃんなりのやり方があっていいんだよ。誰も正解なんて分かんないんだから。これがベストだと思う方法を、全力で頑張るしかない。それを続けてると、いつの間にか大人になってるから」

「わかった。頑張る」

「早くウチの嫁にきて、孫の顔見せてね?」

「うん。あたしの予定では子供は3人って決めてるんだぁ」

「私より気が早いな!」

「てか奏向ママ、そろそろお仕事行く時間じゃない?」

「あ、本当だ。じゃあ遥香ちゃん、お留守番お願いね?   もしインターフォン鳴っても出なくていいから」

「うん、わかった」


 バタバタと急いで仕事の支度をして出掛ける直前に、奏向ママはあたしにもうひと言だけ投げかける。

「あ、そうだ。奏向の初恋は、間違いなく遥香ちゃんだから」

「なんでわかるの?」

「母親だからね」

「初恋相手よりも、最後の方がいいな……」

「じゃあ初恋で且つ、最後のひとになっちゃいな?   女は欲張ってナンボだよ?」

 その言葉を聞いた瞬間、勇気が溢れてくる気がした。

「ありがと!   ならやっぱ4人にする!」

「そっちかーい!   じゃあ行ってくるね」

「行ってらっしゃい!」


 あたしはその後、奏向の部屋で幼稚園から中学校までの卒業アルバムを順番に開いていた。

 懐かしい思い出を振り返りながら、どの写真にもやっぱり奏向の隣に写っているのは、あたしだった。

 これがあたしの自慢で、ステータスで、そして誇りだ。

 もしもこの世界がゲームの中だったなら、どんなにいいんだろう。

 だって一度手に入れた経験値は、無くなったりなんかしないから。

 頑張ったら頑張っただけ、成果が出る。

 でも現実はそうじゃないってこと、高校生のあたしにだって、少しは理解できてるつもり。

 みんなこんなこと乗り越えて恋してるとか、やっぱすごいなあ人間って。

 なんでこんな面倒くさい感情いっぱい抱えて生まれてくるんだろ。もっと気楽に恋できる構造にすればよかったのに。

 それは違うか。
 面倒くさいから、尊いのか。

 ゲームも難しい方が燃えるもんね。

 勝てないから勝とうとするし、持ってないから、いつか持てるように努力する。

 きっと、それの繰り返しなんだよね。

 奏向ママがあたしに言いたかった事は、きっとそういうことなんだ。

 大人になるって、何かを諦めることじゃない。諦めない為にはどうするかを考えるってことなのかもしれない。

 だったら、自分に言い訳なんて出来ないくらい、やるしかないんだよね。

 なんかちょっと大人になった気分。

 奏向が帰ってきたら、愛想よくしよう。

 無愛想なあたしじゃなくて、可愛いあたしを、もっと見て欲しいから。
 

「よし、じゃあ早速作戦開始といきますか!」

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

覚えたての催眠術で幼馴染(悔しいが美少女)の弱味を握ろうとしたら俺のことを好きだとカミングアウトされたのだが、この後どうしたらいい?

みずがめ
恋愛
覚えたての催眠術を幼馴染で試してみた。結果は大成功。催眠術にかかった幼馴染は俺の言うことをなんでも聞くようになった。 普段からわがままな幼馴染の従順な姿に、ある考えが思いつく。 「そうだ、弱味を聞き出そう」 弱点を知れば俺の前で好き勝手なことをされずに済む。催眠術の力で口を割らせようとしたのだが。 「あたしの好きな人は、マーくん……」 幼馴染がカミングアウトしたのは俺の名前だった。 よく見れば美少女となっていた幼馴染からの告白。俺は一体どうすればいいんだ?

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。

NOV
恋愛
俺の名前は鎌田亮二、18歳の普通の高校3年生だ。 中学1年の夏休みに俺は小さい頃から片思いをしている幼馴染や友人達と遊園地に遊びに来ていた。 しかし俺の目の前で大きなぬいぐるみを持った女の子が泣いていたので俺は迷子だと思いその子に声をかける。そして流れで俺は女の子の手を引きながら案内所まで連れて行く事になった。 助けた女の子の名前は『カナちゃん』といって、とても可愛らしい女の子だ。 無事に両親にカナちゃんを引き合わす事ができた俺は安心して友人達の所へ戻ろうとしたが、別れ間際にカナちゃんが俺の太ももに抱き着いてきた。そしてカナちゃんは大切なぬいぐるみを俺にくれたんだ。 だから俺もお返しに小学生の頃からリュックにつけている小さなペンギンのぬいぐるみを外してカナちゃんに手渡した。 この時、お互いの名前を忘れないようにぬいぐるみの呼び名を『カナちゃん』『りょうくん』と呼ぶ約束をして別れるのだった。 この時の俺はカナちゃんとはたまたま出会い、そしてたまたま助けただけで、もう二度とカナちゃんと会う事は無いだろうと思っていたんだ。だから当然、カナちゃんの事を運命の人だなんて思うはずもない。それにカナちゃんの初恋の相手が俺でずっと想ってくれていたなんて考えたことも無かった…… 7歳差の恋、共に大人へと成長していく二人に奇跡は起こるのか? NOVがおおくりする『タイムリープ&純愛作品第三弾(三部作完結編)』今ここに感動のラブストーリーが始まる。 ※この作品だけを読まれても普通に面白いです。 関連小説【初恋の先生と結婚する為に幼稚園児からやり直すことになった俺】     【幼馴染の彼に好きって伝える為、幼稚園児からやり直す私】

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

女子ばっかりの中で孤軍奮闘のユウトくん

菊宮える
恋愛
高校生ユウトが始めたバイト、そこは女子ばかりの一見ハーレム?な店だったが、その中身は男子の思い描くモノとはぜ~んぜん違っていた?? その違いは読んで頂ければ、だんだん判ってきちゃうかもですよ~(*^-^*)

処理中です...