メスガキ系幼馴染をわからせるのは諦めて普通の青春送ります……おや!? 幼馴染のようすが……!

野谷 海

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第2章

番外編 メスガキ中学生『卒業式』

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 これは――俺と遥香がまだ中学3年生だった頃の、些細な日常の記憶。

 俺とメスガキ系幼馴染との、ありふれているけど大切で、かけがえのない思い出の物語。


 ***


 卒業式――中学3年間を締めくくる、この晴れの式典で卒業生を代表して挨拶をしたのは、俺の幼馴染である黒川遥香だった。

 壇上に立つ遥香の堂々且つ凛とした姿勢は、到底いつものメスガキとは思えない。

 普段近くにいると気付かなかったけれど、俺の幼馴染はやっぱりとんでもなくスペックが高いのではなかろうか。

 見た目は言わずもがなの美少女で、成績優秀、そして何より明るい性格から人望もある。

 俺はアイツに敵うところなんて、現状では何ひとつとして持ち合わせていない。それでもいつかと願ってやまないのは、いつの日か対等以上の存在になってやるという決意の表れなのかもしれない。
 

 挨拶を終えると、壇上を降りた遥香は席へと戻る。

 その道中、俺へ向けて小さく振られた手に、思わずドキリとさせられてしまう。

 ムカつくが、こんな時までいちいち可愛い。

 卒業式が終わると、俺は特に別れを惜しむような友達もいなかったから、1人で校内を歩き回って校舎を目に焼き付けていた。

 これで見納めかと思うと、なんだか名残惜しくもある。

 それに、どこを歩いても遥香との思い出に溢れていて、俺の人生はどこをどう振り返っても遥香と共に過ごしてきたのだと、改めて気付かされてしまう。

 遥香の嫌がらせから逃げるようにやってきても、なぜかすぐに見つかってしまった屋上。

 体育祭の二人三脚では盛大に2人でズッコケたグラウンド。

 放課後、バドミントン部だった遥香が練習をしていた体育館。

 そして、たまに帰る時間が合い、偶然会えると嬉しくなった下駄箱。

 その全てが今日で終わりだと思うと、柄にもなく涙腺にくるものがあった。

 まぁ遥香とは高校も同じな訳で、周りの風景が多少変わるだけで、この日々はまだ続いていくことは分かっている。

 それでも、俺はこのままで良いのだろうか。俺たちの関係はこのままで……

 ふと、そんなことを考える。  

 告白したところで、どうせ振られるのはわかりきっていることなのだけど。
 

 校舎の外へ出ると、遥香はまだ女子生徒に囲まれていた。

 最後くらい一緒に帰れたらなんて淡い期待を抱いていたけど、こりゃ無理そうだ。

 俺はその様子を横目で見ながら校門を抜ける。

「待って!」

 ――いきなり、後ろから腕を掴まれた。

「……っ」

 振り返ると、幼馴染が怒った顔をしている。

「ねぇ、なんで先に帰ろうとするの?」

「そ、そりゃお前、人気者だったし……」

「少しくらい待っててくれたっていいじゃん」

「でも一緒に帰る約束とかしてなかっただろ……」

「してなくても……わかるでしょ普通……」

「そりゃ、俺も校内散歩してちょっとは待ってたけど……」

 何故か気まずくなった俺たちは、互いに目を逸らした。

「ねぇ奏向、ゲームしたい」

「またかよ……てか普通、卒業式の後って友達とどっか遊びに行くもんじゃねーの?   お前なら誘われただろ?」

「だってあたしはカラオケなんか行くより、ゲームで奏向ボコってる方が楽しいし……」

「喜んでいいのか、わかんねーな」

「どうせ誰からも誘われなかった奏向を、あたしが誘ってあげてるんだから喜んでいーよ」

「それもそうか」

「それと、今日はゲームでさ……賭けしようよ?」

「金ならねーぞ?」

「そうじゃなくて、お互いの制服賭けようよ?   現役JCのセーラー服なんて売ったらきっとお金になるしさ。別に奏向が持っててもいいけど……」

「俺がそんな変態だと思ってんのか?   てかそれじゃお前が勝っても旨みねーじゃん」

「そ、そうだけど……ま、たまには奏向が有利な勝負を受けてあげてもいいかなーって」

「まぁそういうことならいいけど……」


 こうして始まったゲーム対決だったが、もちろん俺は木っ端微塵に負けてしまい、俺の学ランは遥香に奪われてしまった。

 あんなものを貰って何が嬉しいのかはわからなかったが、遥香の顔は、すこぶる満足げだったのを覚えている。
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