41 / 54
第2章
第33話 転校生はかまってちゃん(遥香Side)
しおりを挟む「夜空……ホントのこと教えてくれてありがとう」
「で、でも……私のことなんか気にしなくていいです。夜木君には遥香ちゃんのほうが、ずっとお似合いですし、私はそれを外から見てるだけで幸せ、ですから……」
「幸せなら、なんで今辛そうなの?」
「そ、それは……」
やっと顔を上げた夜空だったけど、続く言葉が喉に詰まってるみたいだった。
「夜空って友達には、嘘つかないんだよね?」
「す、すみません……本当はあの日、ライブから帰ってきてから、すっごく泣いてしまいました。悲しくって、切なくって、もしもお家に猫ちゃんたちが居なかったら、未だに泣いていたかもしれません……」
「ねぇ、ちゃんと言葉で聞かせてよ……奏向のこと、どう思ってるの?」
「……わ、私は夜木君が、好き、です……初めて、恋を、してしまったみたいです……」
照れながら本音を話してくれた夜空に、ホントの初恋なんだって伝わってきた。
あたしとおんなじだ。
「そっか。じゃあこれでやっと対等だね?」
あたしが笑顔を向けると、夜空はポカンと口を開けていた。
「ど、どうして怒らないんですか……? 遥香ちゃんには、私は邪魔者じゃないですか……」
「てかさ、夜空ってやっぱあたしのこと舐めてるよね? 言っとくけど、あたしと奏向はもうベロチューまでしちゃってるから!」
「べ、ベロチュー……!!」
真っ赤にさせた顔を、両手で覆う夜空。
「ま、あれは、あたしから無理やりしちゃったんだけどさ……」
「や、やっぱり遥香ちゃんは大人です……」
「夜空は、これ聞いてどう思った?」
「し、心臓が、チクってしました……」
「あたしも、奏向から夜空とのデートの話を聞かされる度に、おんなじ気持ちだった。羨ましいとも思ったし、心が痛くもなった。でもだからこそ、もっと頑張ろって思うこともできたんだよね」
「でも私は、遥香ちゃんと争いたくなんてありません……」
真っ直ぐに向けられたうるうるとした瞳を、直視できない。
「あたしは……夜空が身を引いてくれたことは、正直言って嬉しい。性格悪いって思われても、嬉しいものは嬉しいもん。でもさ、わかんないけど、ムカついてもいるんだよね……」
「わ、私はどうすればいいんでしょうか……」
「そんなの知らない。でもこっちが頼んでもないのに、夜空が勝手に身を引いたんだったら、そんな悲しそうな顔しないでよ。ずっと仲良くしてたいって、そんなのあたしだって同じだよ。きっと奏向だってそう思ってるよ。それでもこうなっちゃった以上は、どっかで折り合いつけなきゃいけないじゃん! その役目は夜空でもないし、あたしでもない。奏向なんだよ……この先は全部、奏向が決めなきゃいけないことなの! だからあたしたちは、それを待つしかない。恋は先に惚れた方が負けって、そういうことなんだって思う……なんかごめん、あたしばっか言いたいこと言っちゃった……」
顔を横にブンブンと振ってから、夜空は返す。
「い、いえ、確かに私、遥香ちゃんに何も相談せず勝手な事をして、すみませんでした……」
「別にあたしに相談なんてしなくてもいいけどさ……恋のライバルの前に、あたしら友達でしょ……? 夜空だけが辛い思いするのは、フェアじゃないよ。でも勘違いしないでね、奏向を譲るつもりは1ミリも、1ミクロンもないから!」
それを聞いた夜空は、さっきよりも顔を上げて、少しだけ嬉しそうに尋ねる。
「じゃ、じゃあ私……夜木君と、シマウマさんを見に行ってもいいですか……?」
「勝手にすれば? あたしは絶対負けないから。ベロチューもしたし……」
こんなことでまたマウントをとっちゃってることに、自分でも子供だって思う。
「べ、べろ……ちゅう……わ、私も、してみたいです……」
何を言い出すかと思ったら、夜空の予想外のセリフにあたしは笑ってしまった。
「アハハ……夜空ってホント正直だね……でもダメー!!」
「そんな……遥香ちゃんだけズルイです……」
「あたしは幼馴染だからいいのー!」
「えっ……じゃあ、我慢します……」
「だからさぁ……まぁいいや。ちゃんと話せてスッキリしたし。あたしの言いたいことは全部言ったから、今度は夜空の番だよ?」
「えっ……何を言えばいいんですか……?」
「あたしへの文句でも、なんでもいーよ?」
「そ、そんな文句なんて……」
「本当にー?」
申し訳なさそうにしながらも、あたしが念を押したら夜空は恐る恐る口を開いた。
「ひ、ひとつだけあるとすれば……遥香ちゃんが、羨ましいです。遥香ちゃんばっかりいつも夜木君と一緒に居られて、なんでも話せる関係で、ズルイです……私だって、もっと夜木君にいっぱい、構って欲しいです……!」
「ちゃんとあるじゃん」
「す、すまません……!」
すぐに小さく縮こまる夜空。
「いいんだよ? それで……」
「き、嫌いにならないで下さい……!」
「嫌いになれたら、楽なんだろね……」
「ど、どういう意味ですか……?」
「ううん、なんでもない。せっかくだからカラオケしよっか?」
「は、はい……!」
この子を嫌いになれたら、どんなにいいんだろう。でも好きな人の好きな人を、たったそれだけの理由で嫌いになるような、そんなイヤな女を、奏向はきっと選ばない。
あたしは、そう自分に言い聞かせることにした。
0
あなたにおすすめの小説
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
覚えたての催眠術で幼馴染(悔しいが美少女)の弱味を握ろうとしたら俺のことを好きだとカミングアウトされたのだが、この後どうしたらいい?
みずがめ
恋愛
覚えたての催眠術を幼馴染で試してみた。結果は大成功。催眠術にかかった幼馴染は俺の言うことをなんでも聞くようになった。
普段からわがままな幼馴染の従順な姿に、ある考えが思いつく。
「そうだ、弱味を聞き出そう」
弱点を知れば俺の前で好き勝手なことをされずに済む。催眠術の力で口を割らせようとしたのだが。
「あたしの好きな人は、マーくん……」
幼馴染がカミングアウトしたのは俺の名前だった。
よく見れば美少女となっていた幼馴染からの告白。俺は一体どうすればいいんだ?
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。
NOV
恋愛
俺の名前は鎌田亮二、18歳の普通の高校3年生だ。
中学1年の夏休みに俺は小さい頃から片思いをしている幼馴染や友人達と遊園地に遊びに来ていた。
しかし俺の目の前で大きなぬいぐるみを持った女の子が泣いていたので俺は迷子だと思いその子に声をかける。そして流れで俺は女の子の手を引きながら案内所まで連れて行く事になった。
助けた女の子の名前は『カナちゃん』といって、とても可愛らしい女の子だ。
無事に両親にカナちゃんを引き合わす事ができた俺は安心して友人達の所へ戻ろうとしたが、別れ間際にカナちゃんが俺の太ももに抱き着いてきた。そしてカナちゃんは大切なぬいぐるみを俺にくれたんだ。
だから俺もお返しに小学生の頃からリュックにつけている小さなペンギンのぬいぐるみを外してカナちゃんに手渡した。
この時、お互いの名前を忘れないようにぬいぐるみの呼び名を『カナちゃん』『りょうくん』と呼ぶ約束をして別れるのだった。
この時の俺はカナちゃんとはたまたま出会い、そしてたまたま助けただけで、もう二度とカナちゃんと会う事は無いだろうと思っていたんだ。だから当然、カナちゃんの事を運命の人だなんて思うはずもない。それにカナちゃんの初恋の相手が俺でずっと想ってくれていたなんて考えたことも無かった……
7歳差の恋、共に大人へと成長していく二人に奇跡は起こるのか?
NOVがおおくりする『タイムリープ&純愛作品第三弾(三部作完結編)』今ここに感動のラブストーリーが始まる。
※この作品だけを読まれても普通に面白いです。
関連小説【初恋の先生と結婚する為に幼稚園児からやり直すことになった俺】
【幼馴染の彼に好きって伝える為、幼稚園児からやり直す私】
手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない
みずがめ
恋愛
宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。
葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。
なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。
その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。
そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。
幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。
……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。
女子ばっかりの中で孤軍奮闘のユウトくん
菊宮える
恋愛
高校生ユウトが始めたバイト、そこは女子ばかりの一見ハーレム?な店だったが、その中身は男子の思い描くモノとはぜ~んぜん違っていた?? その違いは読んで頂ければ、だんだん判ってきちゃうかもですよ~(*^-^*)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる