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二章 相棒です
十六話
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「相棒です」
「ちぅ」
部室にて白ネズミのお披露目。
来る途中で仕込んだお辞儀の破壊力が大爆発。そのえげつない威力にみんながメロメロだ。
当の白ネズミはお辞儀が済んだらさっさと俺の肩の上に戻り、毛繕いを始めている。
「翼のあるネズミ。見たことないエネミーだ」
「ウイングラットっていう種族みたいですよ」
俺は鞄からプリントを出して、机の上に置く。参考資料として白沢先生がくれたんだ。相変わらず白沢先生は面倒見が良いな。
俺はもう読み終わったから、興味を持った川上先輩に渡しておく。
「この子、なに食べるんだ?」
「食事は基本的に要らないみたいだよ。ただ、ダンジョンの外にいる時は消耗していくらしいから、たまに魔石をあげた方が良いってさ」
「え?じゃあ、オレがあげても良い?」
「なんでだよ吉根。俺の従魔だぞ」
テイムされたエネミーの事は、従魔って呼ぶらしい。なんでも、鑑定宝珠にそうやって表示されるんだって。
「よし、じゃあ今度オレがフロアボスの魔石を持ってきてやるよ」
「金屋先輩も止めて下さいよ。あんまり強いやつ食べてお腹壊したらどうするんですか」
「む、そ、そうか」
白ネズミは一躍模型部のアイドルになったな。
川上先輩以外は作業そっちのけで白ネズミをかまおうとしている。当の本ネズミは知らん顔して毛繕いをしてるけど。
「ところで、この子の名前はどうするんだ?」
「名前、ですか?」
「あぁ、名無しなんて可哀想だろ?」
「そうっスね。名前つけましょうよ」
名前かずっと白ネズミって脳内で呼んでたから考えた事もなかったな。
「毛色が白いから、ツクモなんてどうかな?」
「ツクモ、ですか?」
川上先輩が作業を続けながらも、名前の候補を挙げてくれる。
「あ、『伊勢物語』か。そういえばこの前授業でやったな」
「え、『伊勢物語』?授業?なんなんス?」
白とツクモがどう繋がってるか分からない俺と吉根に、金屋先輩が解説してくれた。
要するに白って漢字は百に一足りないから、白を九十九と読むそうだ。『伊勢物語』の歌にあるらしく、授業で習ったばかりの川上先輩が提案したみたいだ。
川上先輩はともかく金屋先輩も意外と真面目に授業受けてるんだな。もっと脳筋だと思ってたよ。
「ややこしいんスね」
「でも、ちょっと捻った感じが良いかも。どうだ?ツクモで良いか?」
白ネズミ改め、ツクモに聞いてみると、満足そうに「ちぅ」と鳴いた。
どうやら気に入ったようだ。
「じゃあ、これからお前はツクモだ」
「ちぅ」
「おめでとう。これ、名付け記念にどうぞ」
川上先輩が綺麗な箱を差し出してくれた。
開けてみると中には小さな杖が入っていた。
「え、これは?」
「ツクモちゃん、スキルに風魔法ってあったから、ちょうど魔法の発動体とトレントの端材を持ってたから、ちゃちゃって作ってみたんだ。どうかな?」
さっきから黙々と何か作ってると思ってたけど、これだったのか。
ちゃちゃって作ったって言ってるけど、細工とかかなり手が込んでるんですけど。単なるミニチュアサイズって感じじゃないよ。
錬金術士の本気を見た気分だよ。
「あれ、気に入らなかったかな?」
「い、いえ。ありがとうございます。ほらツクモ、川上先輩がお前に杖を作ってくれたぞ。良かったな」
「ちぅ」
「気に入ってくれて良かったよ」
一瞬、ニコリと笑う川上先輩の目の奥に、ヤンデレ風味を少しだけ感じたけど、気のせいだろう。
ホント気のせいであってくれ!
この後、皆でツクモの装備品を作り、部活を終えたのであった。
「ちぅ」
部室にて白ネズミのお披露目。
来る途中で仕込んだお辞儀の破壊力が大爆発。そのえげつない威力にみんながメロメロだ。
当の白ネズミはお辞儀が済んだらさっさと俺の肩の上に戻り、毛繕いを始めている。
「翼のあるネズミ。見たことないエネミーだ」
「ウイングラットっていう種族みたいですよ」
俺は鞄からプリントを出して、机の上に置く。参考資料として白沢先生がくれたんだ。相変わらず白沢先生は面倒見が良いな。
俺はもう読み終わったから、興味を持った川上先輩に渡しておく。
「この子、なに食べるんだ?」
「食事は基本的に要らないみたいだよ。ただ、ダンジョンの外にいる時は消耗していくらしいから、たまに魔石をあげた方が良いってさ」
「え?じゃあ、オレがあげても良い?」
「なんでだよ吉根。俺の従魔だぞ」
テイムされたエネミーの事は、従魔って呼ぶらしい。なんでも、鑑定宝珠にそうやって表示されるんだって。
「よし、じゃあ今度オレがフロアボスの魔石を持ってきてやるよ」
「金屋先輩も止めて下さいよ。あんまり強いやつ食べてお腹壊したらどうするんですか」
「む、そ、そうか」
白ネズミは一躍模型部のアイドルになったな。
川上先輩以外は作業そっちのけで白ネズミをかまおうとしている。当の本ネズミは知らん顔して毛繕いをしてるけど。
「ところで、この子の名前はどうするんだ?」
「名前、ですか?」
「あぁ、名無しなんて可哀想だろ?」
「そうっスね。名前つけましょうよ」
名前かずっと白ネズミって脳内で呼んでたから考えた事もなかったな。
「毛色が白いから、ツクモなんてどうかな?」
「ツクモ、ですか?」
川上先輩が作業を続けながらも、名前の候補を挙げてくれる。
「あ、『伊勢物語』か。そういえばこの前授業でやったな」
「え、『伊勢物語』?授業?なんなんス?」
白とツクモがどう繋がってるか分からない俺と吉根に、金屋先輩が解説してくれた。
要するに白って漢字は百に一足りないから、白を九十九と読むそうだ。『伊勢物語』の歌にあるらしく、授業で習ったばかりの川上先輩が提案したみたいだ。
川上先輩はともかく金屋先輩も意外と真面目に授業受けてるんだな。もっと脳筋だと思ってたよ。
「ややこしいんスね」
「でも、ちょっと捻った感じが良いかも。どうだ?ツクモで良いか?」
白ネズミ改め、ツクモに聞いてみると、満足そうに「ちぅ」と鳴いた。
どうやら気に入ったようだ。
「じゃあ、これからお前はツクモだ」
「ちぅ」
「おめでとう。これ、名付け記念にどうぞ」
川上先輩が綺麗な箱を差し出してくれた。
開けてみると中には小さな杖が入っていた。
「え、これは?」
「ツクモちゃん、スキルに風魔法ってあったから、ちょうど魔法の発動体とトレントの端材を持ってたから、ちゃちゃって作ってみたんだ。どうかな?」
さっきから黙々と何か作ってると思ってたけど、これだったのか。
ちゃちゃって作ったって言ってるけど、細工とかかなり手が込んでるんですけど。単なるミニチュアサイズって感じじゃないよ。
錬金術士の本気を見た気分だよ。
「あれ、気に入らなかったかな?」
「い、いえ。ありがとうございます。ほらツクモ、川上先輩がお前に杖を作ってくれたぞ。良かったな」
「ちぅ」
「気に入ってくれて良かったよ」
一瞬、ニコリと笑う川上先輩の目の奥に、ヤンデレ風味を少しだけ感じたけど、気のせいだろう。
ホント気のせいであってくれ!
この後、皆でツクモの装備品を作り、部活を終えたのであった。
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