その花びらが光るとき

もちごめ

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「き、来たよ!」 
 その声に弾かれたように慌てて外に出ると、そこには同じように外に出てきたらしい村人達が、皆同じ方を向いてこの村にはいささか不釣り合いな華美な団体を見つめていた。

 この古びたサボナ村では浮きまくっている集団の中心から青緑の騎士服をまとった一人の青年が真っ直ぐこちらに向かって歩いてきた。そして私の前まで来て、膝間づいて見上げてきた。

「お迎えに上がりました。ユナ様。」

 え――……。本当に来ちゃったよ……。

***
 神堂由那(しんどう ゆな)二十歳。
 短大を卒業して、この春から晴れて社会人デビューを迎えようとしていたはずですが、急に足元に浮かび上がったブラックホールに引きずり込まれ、気が付いたら森の中。あっぱれ、いとも簡単に異世界デビューしてしまいました。

 なぜ自分がいる場所が異世界であるのかが分かったかというと、

 そりゃ、誰でもわかりますよ。

 だって、見上げた空には地球にはいない生き物がフヨフヨと空を飛んでいるのですから――。

 なんか、小型犬みたいなのに、小さな羽が生えた不思議な生き物が空を飛んでるし……。

 この限りなく犬に近いかわいい生き物は、この世界の侵入者に対し、威嚇したり攻撃しに来たりする様子はないから、あの生き物は安全と判断していいのかな。
 とにかく、この世界がまだどのような世界かわからないし、いつ魔物が現れて生命の危機に陥るかもわからない。

 異世界デビューして三分であの世デビューとか嫌すぎる。

 とにかく、早く森から出たほうがいいのは確かなはず。
 そして、人という生物がいるのかは分からないけど、とにかく人を探したい。

 そうと決まれば、いつまでもここに座っていても仕方がない。と立ち上がり辺りを見回してみる。
 森から出るにはどっちの方角を目指して歩いていけばいいんだろう。
 森の中で死亡フラグが立つのだけは何としてでも避けたい。
 私の人生、まだまだこれからなんだから!


 ひとまず、真っすぐに歩いていけばいずれ外に出るだろうと考え森の奥に向かって歩くことだいたい十分くらい。

 完全に迷い子です……。


 辺りははいつの間にか真っ黒な闇が広がり、鬱蒼と生い茂る木々がザワザワと不気味に音を鳴らしている。

 真っ暗になった事への恐怖心で完全に脚が進まなくなってしまい、前にも後ろにも進めず立ち往生していると、突然、急に目の前の草木がガサガサと音を立てて揺れ始めた。

(やだ、何か出てくる! 怖い!)

 恐る恐る待ち構えていると、草木の間から顔を出したのは、あの犬のような生き物だった。

「きゅむ~~」

 なにこれ、かわいい!!
「きゅむ~~」 ってなくの!?
 すごく、かわいい!
 今すぐ抱っこしたい!!

 ……。いや、まてまて。

 早まるな、落ち着こう。

 かわいい顔をしていても、森の奥から来たってことは、危険生物かもしれないよね。

 近づいて来た人間を頭からガブリといっちゃう獰猛な肉食獣かもしれないし……。

 いやだ、異世界こわい。

 ど、どうしよう?! 

 
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