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あれこれ考えていると、ヒョコ、ヒョコ、と近づいて来てスカートのポケットの辺りでクンクンと鼻を鳴らしている。
「あ、もしかして、これ?」
ポケットから小さなチョコレートを取り出した。
仕事の合間に大好きなチョコレートを食べるのが密かな楽しみで、いつもポケットに忍ばせておいた私のおやつ。
この匂いにつられて寄って来たのかな?
もしかして私と一緒で、甘いものが好きな生き物なのかな?
包みを開いて手のひらに載せてから口元にそっと持っていった。
「わ、私の手を食べないでよね……」
ドキドキしつつもじっと待っていると、一度私の顔をじっと見てから、ぺロッ、って舐めた。
「お、おいしい?」
気に入ったのか、その後は一口で口に入れて飲み込んだ。
まだ甘い匂いがするのか、手のひらをペロペロと舐めている。
「食べた! かわいい! おいしかった?」
「キュム!」
「やだ、かわいすぎる~~! ねえ、抱っこさせて~~!!」
手を伸ばすと、ふと、後ろ脚に血が滲んでいるのが見えた。
「脚、ケガしてるね。ちょっと待ってて」
私の腰に付いている移動ポケットの中を探ってみる。
私の移動ポケットは万能なのだ。
ハンカチ、ティッシュはもちろん絆創膏、目薬、ハンドクリーム、ビニール袋、メモ帳、ペン、あめ玉、チョコ。
某、青い猫の形をした未来型ロボットのポケットのようになんでも出てくる。
「あった! 絆創膏。ねえ、痛いことはしないから、ちょっとだけ触らせて? いい?」
目を見ながら告げてみる。
私の言ってることが伝わったのか、そっと寝そべった。
(よかった!)
怪我をしている足を見ると、何かが掠ったような切り傷になっている。
よかった、傷は深くなさそう。
そっと絆創膏を貼り、ハンカチで巻いてゆるく縛った。
「はい、できたよ」
ムクッと起き上がり、お礼のつもりなのか、指先をぺろぺろと舐める。
言葉がわかるのかな?
そっと抱っこしてみる。
柔らかい毛がふわふわとしていて気持ちいい。
ウルウルとした目と三角に折れ曲がった耳、尻尾は短くクルンとしている。ここまでだと、やっぱり犬に見えるんだけど、背中から生えている小さな羽が未知の生物に思わせている。空、飛んでたしね。
羽根、ツヤツヤとしてる。触り心地もいい。
羽根を触ってもらうと気持ちいいのか、目を瞑って気持ちよさそうにしている。
急に襲って来る様子はなさそう。
なにか事情があって、空から落ちてこの森の中にいたのかな。
私と一緒で迷子ってことかな?
「ねえ、一緒に行かない? 私、ゆな、君はえ~っと」
体全体が茶色いし、チョコレートが好きっぽいしな……。
「じゃあ、チョコ! 君の名前はチョコね。よろしく!」
鼻と鼻をくっつけてそう言えば、
「きゅむ~~」 と、またあのかわいい声が返ってきた。
きっと「了解!」 の返事だろう。
***
さて、とりあえずこの森をさっさと抜けないと、いずれ私たち一人と一匹は餓死し、白骨化してしまうだろう。
でも、完全に迷子状態だし。
振出しに戻ったというわけだ。
「う~~ん。どうしよう……」
「きゅむ、きゅむ」
「なあに、チョコ。チョコは人がいそうな町とか、村とか、どこにあるか知ってる? とりあえず、私たちこの森から出ないことにはいけないと思うの」
チョコを抱っこしようとしゃがむと、私の後ろに回り、背中を上ってきた。
ん?おんぶか?
と思ったら、首の後ろの襟をおおもむろに咥えた。
え!!?
次の瞬間、ゆっくりと体が持ち上がり、足が地面から離れていく。
「え、え!? なに!? きゃあ~~!!」
小さな羽で一生懸命に羽ばたいているのだろう。
パタパタパタパタとかわいらしい音が耳の後ろから聞こえる。
あの小さな体と小さな羽で、五十キロ前後はある私の体を空中で維持できるのか?!
途中でギブアップして落っことすなんてことあるんじゃないの?!
い~や~!! またもや、死亡フラグが~~~!!
ぎゃあああ!! や~~め~~て~~!!
お~ろ~し~て~~~!!!
「あ、もしかして、これ?」
ポケットから小さなチョコレートを取り出した。
仕事の合間に大好きなチョコレートを食べるのが密かな楽しみで、いつもポケットに忍ばせておいた私のおやつ。
この匂いにつられて寄って来たのかな?
もしかして私と一緒で、甘いものが好きな生き物なのかな?
包みを開いて手のひらに載せてから口元にそっと持っていった。
「わ、私の手を食べないでよね……」
ドキドキしつつもじっと待っていると、一度私の顔をじっと見てから、ぺロッ、って舐めた。
「お、おいしい?」
気に入ったのか、その後は一口で口に入れて飲み込んだ。
まだ甘い匂いがするのか、手のひらをペロペロと舐めている。
「食べた! かわいい! おいしかった?」
「キュム!」
「やだ、かわいすぎる~~! ねえ、抱っこさせて~~!!」
手を伸ばすと、ふと、後ろ脚に血が滲んでいるのが見えた。
「脚、ケガしてるね。ちょっと待ってて」
私の腰に付いている移動ポケットの中を探ってみる。
私の移動ポケットは万能なのだ。
ハンカチ、ティッシュはもちろん絆創膏、目薬、ハンドクリーム、ビニール袋、メモ帳、ペン、あめ玉、チョコ。
某、青い猫の形をした未来型ロボットのポケットのようになんでも出てくる。
「あった! 絆創膏。ねえ、痛いことはしないから、ちょっとだけ触らせて? いい?」
目を見ながら告げてみる。
私の言ってることが伝わったのか、そっと寝そべった。
(よかった!)
怪我をしている足を見ると、何かが掠ったような切り傷になっている。
よかった、傷は深くなさそう。
そっと絆創膏を貼り、ハンカチで巻いてゆるく縛った。
「はい、できたよ」
ムクッと起き上がり、お礼のつもりなのか、指先をぺろぺろと舐める。
言葉がわかるのかな?
そっと抱っこしてみる。
柔らかい毛がふわふわとしていて気持ちいい。
ウルウルとした目と三角に折れ曲がった耳、尻尾は短くクルンとしている。ここまでだと、やっぱり犬に見えるんだけど、背中から生えている小さな羽が未知の生物に思わせている。空、飛んでたしね。
羽根、ツヤツヤとしてる。触り心地もいい。
羽根を触ってもらうと気持ちいいのか、目を瞑って気持ちよさそうにしている。
急に襲って来る様子はなさそう。
なにか事情があって、空から落ちてこの森の中にいたのかな。
私と一緒で迷子ってことかな?
「ねえ、一緒に行かない? 私、ゆな、君はえ~っと」
体全体が茶色いし、チョコレートが好きっぽいしな……。
「じゃあ、チョコ! 君の名前はチョコね。よろしく!」
鼻と鼻をくっつけてそう言えば、
「きゅむ~~」 と、またあのかわいい声が返ってきた。
きっと「了解!」 の返事だろう。
***
さて、とりあえずこの森をさっさと抜けないと、いずれ私たち一人と一匹は餓死し、白骨化してしまうだろう。
でも、完全に迷子状態だし。
振出しに戻ったというわけだ。
「う~~ん。どうしよう……」
「きゅむ、きゅむ」
「なあに、チョコ。チョコは人がいそうな町とか、村とか、どこにあるか知ってる? とりあえず、私たちこの森から出ないことにはいけないと思うの」
チョコを抱っこしようとしゃがむと、私の後ろに回り、背中を上ってきた。
ん?おんぶか?
と思ったら、首の後ろの襟をおおもむろに咥えた。
え!!?
次の瞬間、ゆっくりと体が持ち上がり、足が地面から離れていく。
「え、え!? なに!? きゃあ~~!!」
小さな羽で一生懸命に羽ばたいているのだろう。
パタパタパタパタとかわいらしい音が耳の後ろから聞こえる。
あの小さな体と小さな羽で、五十キロ前後はある私の体を空中で維持できるのか?!
途中でギブアップして落っことすなんてことあるんじゃないの?!
い~や~!! またもや、死亡フラグが~~~!!
ぎゃあああ!! や~~め~~て~~!!
お~ろ~し~て~~~!!!
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