その花びらが光るとき

もちごめ

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「美味しい! うん、これも!」

 白いテーブルに所狭しと並べられている、色とりどりのお菓子を、一つづつ摘まんで食べては感想を述べている。
 
 甘いもの好きの私としては目の前の至福の光景にうっとりとして、濃いめの紅茶と共にお菓子を楽しんでいるが……。

「まだまだたくさんありますから、お好きなだけ食べてください」 と私の皿に乗り切らないくらいのお菓子を乗せ、
「ケーキはまだあります。他にも持ってきましょうか?」 って、近くの侍女さんに持ってくるようにお願いをしている。

 ……って、ミルリーさん、もう、さすがに、”うっぷ”状態です……。




 なぜ私が今、食べきれないほどのたくさんのお菓子に囲まれている状態になっているのかと言うと……。


 遡る事、二時間前。


 目が覚めた私は、見上げた天井が、見知った自分の部屋の天井であることに心底ほっとした。
 ぐっすり寝ていたのであろう。カーテンから差し込む光は若干高く、昼近くまで寝ていたように思われる。
 いつから寝ていたのかはわからないけれど、記憶が鮮明に残っているのは昨日の図書室までで。
 そのあとに起こったことは、正直、夢見が悪くての悪夢だったのでは……。と思いたい。

 だけど、手と足に残る赤い痣が”夢でなかった” と、目を背くことを許されない現実へと引き戻す。

 手の痣をさすりながら、悪夢から救い出してくれた人のことを思い出す。

 (あの人のあんな焦った姿見るの、初めてだったな)

 銀の髪はほつれ、額にはうっすらと汗を掻き、エメラルドグリーンの瞳に映す私は不安のためか揺れていた。
 安心して涙腺が緩んだ私を優しく抱きしめてくれた。


(いい香りがしたな……)

 広くて温かい胸は、爽やかな清潔感が溢れる香りがしたのを思いだす。
 胸いっぱいに吸い込めば、恐怖心で強張った身体が自然と和らいだ。
 それと同時に、あんなに火照っていた身体の熱がスーッと醒めていったのも覚えている。

 今も、あの広い胸に包まれた感触を思いだすと、怖かった思い出が少しずつ抜け落ちていく。

 そうやって、昨日の出来事を自分の中で整理付けていたら、誰かが部屋をノックした。

「ユナ様、起きてらっしゃいますか……?」

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