その花びらが光るとき

もちごめ

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そうして再びやって来た『王家の森』

 国王、王太子、エルストさん、ジークさんらと共にたどり着いた森の奥にある湖にはキラキラとした粒子が湖の上いっぱいに広がっていて、どこか幻想的な雰囲気を思わせる。辺りには静寂が漂っていて、この場に来たものすべての心が凪いていくのを感じた。


 その光景にしばし見とれ、本来の目的を忘れそうになってしまったが、気持ちを引き締め、隣に立つエルストさんを見上げた。

 私の視線に気づいたエルストさんは私に対し微笑みをこぼし、一つ頷く。

 それにつられ私も笑みを返して小さく頷いた。


 よし!! 頑張るぞ!!


 私は小さく手を握り、覚悟を決めて冷たい湖の中へとゆっくりと足を入れた。

 う――っ。やっぱり冷たい!!


 水の冷たさは以前とは変わらないけれど、前ほどの刺すような冷たさを感じない。
 前とは違って、身体全体が温かい膜に覆われているように感じた。
 
 ゆっくりと水の中を歩き、私の進む方へと波紋が綺麗に広るのを目に収めながら少しずつ前へと進んで、そしてようやく石板の前へとたどり着いた。その石板は以前と変わらずに冷たく、そしてなぜだか寂しそうに佇んでいるように感じた。


 石板と向かい合い、ゆっくりと一つ深呼吸をする。そして気持ちを落ち着かせてからゆっくりと冷たい古びた石板に手を当てた。

 ヒヤリとした冷たさが手のひらに伝わったが、一瞬のことで。あの時とは違って、温かい光が手のひらを通して私の中へと入りこんできた。

 なんだか温かい。ふわふわとして気持ちいい。私、もしかして浮かんでいるのかな?

 そして心が、身体の感覚すべてが何かの膜につつまれて、その中で涙が出そうなほどの幸福感に包まれる。

 嬉しいこと。楽しいこと。みんなと笑い合ったこと。そして愛する人がいて想い合う気持ち。
 そのすべてがこんなにも愛しいなんて。


 この気持ちを皆にも届けたい。

 強くそう感じ、私はこの気持ちを胸に抱き、石板に強く願った。

 みんなが幸せに笑っていられるようにと。
 そして、こんな気持ちにしてくれた皆にありがとうと感謝を込めて――。
 
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