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さて、そろそろお部屋に戻ろうかな、と思い、残ったケーキを食べてしまおうとテーブルに向かって歩みを進めようと思った時、再びジークに名を呼ばれる。
その顔は何か決意を秘めてとても真剣な顔をしていたので、私も、背筋を伸ばして真剣に向き合った。
「どうしたの?」
「ユナ様……。けじめをつけたいんです。あなたに話したい事があるのですがよろしいですか?」
「うん」
「貴女のことをお慕いしておりました。今でもお慕いしております。ですが、貴女の気持ちがどこにあるのかは分かっているつもりです。なので、気持ちを自分に向けてくれとは言いません、ただ貴女のことを恋い慕うことをお許しください」
「ジークさん。私ね、ここで大切な人が沢山できたんだ。私みたいなよそ者はもっと冷たい扱いされても仕方ないと思っていたけれど、みんな温かくて、優しくて、最初は戸惑ったりもしたけれど、正直、嬉しかったんだ。私を受け入れてくれた人みんなが私にとって大切な人なの。もちろんジークさんもその一人。だから、その大切な人たちに、私の精一杯の気持ちで恩返しがしたいと思っている。必要とされている限りそれに応えたい。でも、だからジークさんの気持ちには、」
「わかっています。女神に生涯寄り添う相手はただ一人。それは私ではありません。あなたの心の中ではそれはもう誰か決まっているはずです。……あの人に、伝えられるといいですね」
その言葉にはにかんだまま笑う。
その時、庭の入り口からジャリっという音が聞こえた。
振り向くとエルストさんがこちらに向かって歩いてきていた。
「皆さんお揃いですね」
そういい、穏やかな目を私に向ける。
「身体は?」
「なんともありません。元気です!」
そう。私はあの時ナイフで刺されたのだが、実は無傷である。
あの時は受けた打撃の衝撃で気を失ってしまったが、傷一つない。
心配させてしまった皆さんには逆に申し訳ないくらいです。
私の元気な様子を確認してホッとしたエルストさんは手に持っていたものを私に見せる。
「それにしても、すごいですね、これ。一体何なんですか?」
「実はそれ、エルストさんにあげるために作ったのですが、なかなか渡す機会がなくてあの日も持ち歩いていたんです」
そう、私が作ったお守りがこんなところで役に立つとは思わなかった。
エルストさんの髪の色と同じ、銀の糸で刺繍が施してあった部分にちょうどナイフが当たり、貫通しなかったので私は無傷だった。
まさしく文字通りの『お守り』となった。
ナイフも貫通しない銀の糸って何?! これ、本当に手芸用の糸だったのか未だに疑問に思う……。
まあ、何にしろ無事だったからよかったけれど。
「すばらしいですわね」
そういって微笑むミルリーさんはチョコを抱っこしている。
あの時、第一王子を庇ったチョコは足に負傷を負った。
幸いすぐに応急処置が行われていたために大事には至らなかった。
それにもともと聖獣は治癒力があるらしく、傷は見る見るうちに塞がってあっという間に完治している。
そう。治っているにもかかわらず抱っこをされているのは甘えん坊さんである。
治療の時に医師からチョコの性別を聞くまで知らなかったが、実はチョコが雄だったなんて驚いた。
それにしても、目を細めてミルリーさんの二つの膨らみに顔を擦り付けて……嬉しそうだな。
何にせよ、皆がここにいて、笑いあっていて、そのことに幸せな気持ちになる。
良かった。無事に戻ってこれて。
その顔は何か決意を秘めてとても真剣な顔をしていたので、私も、背筋を伸ばして真剣に向き合った。
「どうしたの?」
「ユナ様……。けじめをつけたいんです。あなたに話したい事があるのですがよろしいですか?」
「うん」
「貴女のことをお慕いしておりました。今でもお慕いしております。ですが、貴女の気持ちがどこにあるのかは分かっているつもりです。なので、気持ちを自分に向けてくれとは言いません、ただ貴女のことを恋い慕うことをお許しください」
「ジークさん。私ね、ここで大切な人が沢山できたんだ。私みたいなよそ者はもっと冷たい扱いされても仕方ないと思っていたけれど、みんな温かくて、優しくて、最初は戸惑ったりもしたけれど、正直、嬉しかったんだ。私を受け入れてくれた人みんなが私にとって大切な人なの。もちろんジークさんもその一人。だから、その大切な人たちに、私の精一杯の気持ちで恩返しがしたいと思っている。必要とされている限りそれに応えたい。でも、だからジークさんの気持ちには、」
「わかっています。女神に生涯寄り添う相手はただ一人。それは私ではありません。あなたの心の中ではそれはもう誰か決まっているはずです。……あの人に、伝えられるといいですね」
その言葉にはにかんだまま笑う。
その時、庭の入り口からジャリっという音が聞こえた。
振り向くとエルストさんがこちらに向かって歩いてきていた。
「皆さんお揃いですね」
そういい、穏やかな目を私に向ける。
「身体は?」
「なんともありません。元気です!」
そう。私はあの時ナイフで刺されたのだが、実は無傷である。
あの時は受けた打撃の衝撃で気を失ってしまったが、傷一つない。
心配させてしまった皆さんには逆に申し訳ないくらいです。
私の元気な様子を確認してホッとしたエルストさんは手に持っていたものを私に見せる。
「それにしても、すごいですね、これ。一体何なんですか?」
「実はそれ、エルストさんにあげるために作ったのですが、なかなか渡す機会がなくてあの日も持ち歩いていたんです」
そう、私が作ったお守りがこんなところで役に立つとは思わなかった。
エルストさんの髪の色と同じ、銀の糸で刺繍が施してあった部分にちょうどナイフが当たり、貫通しなかったので私は無傷だった。
まさしく文字通りの『お守り』となった。
ナイフも貫通しない銀の糸って何?! これ、本当に手芸用の糸だったのか未だに疑問に思う……。
まあ、何にしろ無事だったからよかったけれど。
「すばらしいですわね」
そういって微笑むミルリーさんはチョコを抱っこしている。
あの時、第一王子を庇ったチョコは足に負傷を負った。
幸いすぐに応急処置が行われていたために大事には至らなかった。
それにもともと聖獣は治癒力があるらしく、傷は見る見るうちに塞がってあっという間に完治している。
そう。治っているにもかかわらず抱っこをされているのは甘えん坊さんである。
治療の時に医師からチョコの性別を聞くまで知らなかったが、実はチョコが雄だったなんて驚いた。
それにしても、目を細めてミルリーさんの二つの膨らみに顔を擦り付けて……嬉しそうだな。
何にせよ、皆がここにいて、笑いあっていて、そのことに幸せな気持ちになる。
良かった。無事に戻ってこれて。
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