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くすぐられて、自分に還るということ
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くすぐったさの余韻に包まれた茜は、ベッドの上で静かに深呼吸をしていた。
全身は熱く、まるで湯に浸かった後のようにぽかぽかと心地よい。
笑いすぎたせいか、喉は少し乾き、でも、心の底から満ちていた。
「茜さん、もうひと息。ここからは、本当の“癒し”が始まります」
池尾の声はやさしくも、どこか艶を帯びていた。
「笑うことは、心の深層に繋がっています。
たくさん笑うほど、人は自分自身の“芯”に還っていけるんですよ」
佐伯は茜の枕元に座り、その髪を撫でながら微笑む。
「ここからは、茜さんの“無意識”と向き合っていただきます。
私たちが、その扉をくすぐりでそっと叩いて差し上げますね」
ゆっくりと、再び始まる。
足首を包み込むような池尾の指先。
くすぐったさは、すでに知っているはずの感覚――けれど、それが同じでないとすぐに分かる。
くすぐられる間隔が、少しずつ短くなっていく。
優しい撫で、くすぐるような円を描く動き、それが断続的に、しかし確実に茜の足裏から足指、足の甲に波状攻撃のように届く。
「あはっ……んっ、ふふふ……あっ、ああっ……」
茜の笑い声は浅く、けれどそこには、くすぐったさへの“抗えなさ”が色濃く混じっていた。
佐伯は上半身を担当し、脇腹から肋骨、そして二の腕へと、丹念に探るように指先を滑らせる。
肘の内側をくすぐられるたび、茜の肩がぴくんと跳ねる。
池尾の指が足指の間に入り込むと、喉の奥からひときわ高い笑いが漏れた。
「んんっ、ふはっ……あ、あははは……やっ、だめぇっ……!」
声が裏返る。
けれど止めない。
その“翻弄される姿”こそが、茜が抱えていた“抑圧の殻”を砕く鍵なのだ。
「今は、考えなくていいんですよ」
佐伯の声が、笑いの渦の中で心に届く。
「日常のことも、仕事も、人間関係も……全部、いったん脱ぎ捨ててしまってください。
茜さんは、ただ“笑って、感じる”存在でいてください」
「ふふふ……あっ、ううっ……もう……わたし……へんになっちゃ……ううっ……!」
笑いが涙に混じり、声が震える。
けれど、それは壊れるためではない。
心の一番奥を、誰にも見せられなかった柔らかな部分を、今、包まれているのだ。
池尾の手が足の甲からかかと、アキレス腱を撫で上げ、再び足指に戻る。
佐伯は脇の下を片方ずつじっくり、丁寧に。ときには爪を使って、くすぐりの強弱を微妙に変える。
茜の体は跳ね、ねじれ、汗ばんでいた。
だがその姿は苦悶ではなく、解放だった。
笑いが止まらない。くすぐったさが止まらない。
でも、それでいいと、茜はどこかで分かっていた。
「……くすぐったい、のに……心地いい……っ……なんで……?」
息も絶え絶えに、絞り出されたその問いに、
池尾が、そっと囁いた。
「それは、茜さんが、いま本当に“生きている”からです」
佐伯が、その言葉に続ける。
「五感が、今ここにしかない。くすぐったさに完全に包まれたとき、人は“自分”に還るのです」
くすぐりの波は、少しずつ穏やかになりながらも、心の奥底に余韻を残していった。
笑い疲れた茜は、目を閉じながら、柔らかな涙をこぼした。
それは、癒しの涙だった。
全身は熱く、まるで湯に浸かった後のようにぽかぽかと心地よい。
笑いすぎたせいか、喉は少し乾き、でも、心の底から満ちていた。
「茜さん、もうひと息。ここからは、本当の“癒し”が始まります」
池尾の声はやさしくも、どこか艶を帯びていた。
「笑うことは、心の深層に繋がっています。
たくさん笑うほど、人は自分自身の“芯”に還っていけるんですよ」
佐伯は茜の枕元に座り、その髪を撫でながら微笑む。
「ここからは、茜さんの“無意識”と向き合っていただきます。
私たちが、その扉をくすぐりでそっと叩いて差し上げますね」
ゆっくりと、再び始まる。
足首を包み込むような池尾の指先。
くすぐったさは、すでに知っているはずの感覚――けれど、それが同じでないとすぐに分かる。
くすぐられる間隔が、少しずつ短くなっていく。
優しい撫で、くすぐるような円を描く動き、それが断続的に、しかし確実に茜の足裏から足指、足の甲に波状攻撃のように届く。
「あはっ……んっ、ふふふ……あっ、ああっ……」
茜の笑い声は浅く、けれどそこには、くすぐったさへの“抗えなさ”が色濃く混じっていた。
佐伯は上半身を担当し、脇腹から肋骨、そして二の腕へと、丹念に探るように指先を滑らせる。
肘の内側をくすぐられるたび、茜の肩がぴくんと跳ねる。
池尾の指が足指の間に入り込むと、喉の奥からひときわ高い笑いが漏れた。
「んんっ、ふはっ……あ、あははは……やっ、だめぇっ……!」
声が裏返る。
けれど止めない。
その“翻弄される姿”こそが、茜が抱えていた“抑圧の殻”を砕く鍵なのだ。
「今は、考えなくていいんですよ」
佐伯の声が、笑いの渦の中で心に届く。
「日常のことも、仕事も、人間関係も……全部、いったん脱ぎ捨ててしまってください。
茜さんは、ただ“笑って、感じる”存在でいてください」
「ふふふ……あっ、ううっ……もう……わたし……へんになっちゃ……ううっ……!」
笑いが涙に混じり、声が震える。
けれど、それは壊れるためではない。
心の一番奥を、誰にも見せられなかった柔らかな部分を、今、包まれているのだ。
池尾の手が足の甲からかかと、アキレス腱を撫で上げ、再び足指に戻る。
佐伯は脇の下を片方ずつじっくり、丁寧に。ときには爪を使って、くすぐりの強弱を微妙に変える。
茜の体は跳ね、ねじれ、汗ばんでいた。
だがその姿は苦悶ではなく、解放だった。
笑いが止まらない。くすぐったさが止まらない。
でも、それでいいと、茜はどこかで分かっていた。
「……くすぐったい、のに……心地いい……っ……なんで……?」
息も絶え絶えに、絞り出されたその問いに、
池尾が、そっと囁いた。
「それは、茜さんが、いま本当に“生きている”からです」
佐伯が、その言葉に続ける。
「五感が、今ここにしかない。くすぐったさに完全に包まれたとき、人は“自分”に還るのです」
くすぐりの波は、少しずつ穏やかになりながらも、心の奥底に余韻を残していった。
笑い疲れた茜は、目を閉じながら、柔らかな涙をこぼした。
それは、癒しの涙だった。
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