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『限界突破のくすぐり解放セッション ― 三重奏(トリオ)の悦楽』
しおりを挟むセッションルームは、ほのかにラベンダーとオレンジの香りが漂っていた。
柔らかな照明、低く流れるヒーリングミュージック。けれど、その静謐な空間の奥に、微かに緊張と興奮が混じっている。
茜は、特別なベッドに仰向けに横たわっていた。
両手は頭の上、脚はやや開かれ、しなやかな拘束具で留められている。まるで“花束”のように。
池尾セラピストがそっと声をかける。
「茜さん……本日は、あなた自身がご希望された“限界の先”にご案内します。準備は、よろしいですか?」
茜は小さく頷く。
その瞳はほんのり涙ぐみながらも、確かな意志に光っていた。
佐伯セラピストが、茜の足元に膝をつく。「じゃあ、始めるね……」
そして、もう一人――第三のセラピスト、穏やかで美しい笑顔をした長身の女性・水無瀬が、静かに背後から茜の脇へと手を添えた。
指先が、動き出す。
最初は、脇腹にそっと忍ばせるように。指の腹で、そろそろとくすぐる。
それと同時に、足の裏へ滑り込んでいく指たち。足指の付け根を、円を描くように撫でる。
さらに、池尾の手が茜の膝裏へと伸びる。内腿をすべりながら、絶妙な速さと圧で、皮膚をさざ波のように揺らしていく。
「ん、っ……ふっ、あ、あははっ、く、くすぐった……やっ、やだ……あ、ふふっ、ふあっ……あはははっ!」
茜の笑い声が、ひときわ高く弾けた。
両脇が責められながら、足の裏と膝裏が絶え間なく刺激される。呼吸が追いつかない。くすぐったさの波が、途切れなく押し寄せる。
とくに水無瀬の指は、ただ“上手”なだけではなかった。
まるで茜の呼吸や微細な動きを読むように、追い詰め、逃がさず、慈しむようにくすぐる。
「もう、あ、ふふふっ、やっ……! だめっ、ほんとに……あははははっ!」
声も涙も止まらない。
けれど、それは決して苦しみではなかった。
日常の思考も、肩書きも、責任も、今この瞬間だけは何ひとつ要らない。
笑い、身を任せ、感覚の奔流に没入する――それが、どれほど自由なことか。
三人の指は、それぞれ異なる“旋律”を持っていた。
池尾は滑らかで撫でるような優雅なリズム。佐伯は予測のつかないフェイントと突き上げ。水無瀬は、静かで深く、核心に触れるような的確さ。
それらが、ひとつの“くすぐりの交響曲”を奏でている。
茜の身体が、笑いと涙のまま、その旋律にゆだねられていく。
「もう……っ、だめぇ……だめなのに……あはっ、ふぁ、あっ……! なに、これ、こんな……こんなの……!」
言葉は意味を成さず、笑いと声が混じっていく。
指が、足指の間を這い、脇腹の裏側を責め、太腿の内側をなぞるたびに、茜の身体は甘く跳ねる。
やがて――
全身が、呼吸も声も追いつかぬほどの幸福に満たされていった。
時間が止まったかのように、
ただただ笑って、泣いて、甘えて、委ねて、
そして最後に訪れたのは――深い、深い静寂だった。
水無瀬が、ゆっくりと茜の額に手を当てる。
「……茜さん、よく頑張りましたね。あなたの“全部”を、わたしたち、ちゃんと受け止めました」
目を開けた茜の瞳は、潤んでいた。
けれどその表情は、まるで生まれ変わったように澄んでいた。
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