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呪われたエザリア

エザリアの気持ち

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 ジョルの話に耳を澄ませた白猫、エザリア・サリバーは、期待が高まっていた。
 今までにスミルやセインが話したどの話より、具体的に自分が人間に戻れる可能性を感じさせる。

 父が戻ったら大神殿に使いを出してもらい、解呪してもらうか、または騎士団が魔導師を捕まえれば。

 (そうすればこの姿ともお別れだわ!)

 ところが何故か、その考えはエザリアを浮き立たせることはなかった。

 (そうしたらもうここにはいられなくなるのね)

 胸がギュッと締めつけられる。

 やさしく頭を撫でてくれセインの大きな手。
エザリアが好きなものを選んで作ってくれる美味しい料理。
食後に居間でうとうとすると、そっと抱き上げてクッションに乗せてくれる気遣い。

 何よりも、猫の姿から本当の自分を見出し、力になってくれた頼りがいのある男性だ。

 離れなければならないと思うと、たまらなく悲しくなった。



「にゃあん」

「なんだい?どうしたの、眠くなった?」


 腰を曲げてにこにこと水色の瞳を覗き込み、頭を撫でる。

 その仕草のすべてがエザリアは大好きだった。



(だ、い好き?・・・え?)

 気づいてしまったエザリア。

 もし今、人の姿だったら、真っ赤な顔をしていただろう。
思わずきょろきょろと周りを見渡すも、誰もエザリアを見ていなかった。

(や、やだ!うそ、私ったら嘘でしょ?)

 自問自答して身をくねらせるも、否定すればするほど意識してしまうのだ。



(でも私まだ猫だし。うん、猫の姿ならそばにいても大丈夫)

 言い聞かせるように、言葉を飲み込んでいく。

 ふと、セインは付き合っている人や婚約者はいないのだろうかと頭に浮かぶと、エザリアの頭の中はそれでいっぱいになってしまった。
 一緒に暮らしてまだ一月も経たないが、それでもセインに女っ気はなかったと思う。
 気になるがしかし、それをわざわざ文字盤で訊ねるのは不自然だ。

 もし自分の呪いが解けなければこのままそばにいられるかもしれない。

 でも、いつかセインに好きな人ができても自分は猫のままそばにいるのだろうか?

(そんなの悲しすぎる)

 エザリアの耳がぺたんと伏せた。
頭を垂れ、背中を丸めた姿は如何にもしょんぼりしたものだ。


「エザリアどうかしたのかい?」


 その姿に誰よりも早く気づくのもセインだ。

 白猫の隣りに座ると、膝の上に抱き上げ背中を撫でてやる。


 日向のようなセインの匂いと温もりに包まれたエザリアは、さっきまでの鬱々した気持ちは少し薄れ、幸せな眠気に満たされていくのだった。


■□■

いつもありがとうございます!
この週末は各一日4話更新します。
よろしくお願いいたします。

「あなたを忘れたい」
「神の眼を持つ少年です。」

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