27 / 100
27話
しおりを挟む
イールズ商会に現れたナミリアは、早速ミヒアに面会を願い出た。
「ミヒア様なら今お出かけで。あと少しでお帰りになりますが、お待ちになりますか?」
「そう、ではちょっと買い物に行って、出直してくるわ」
ロリーンから教えてもらった手芸用品の店を見に行きたいと思っていた。
王都の町を歩くといつもより多くの人々が忙しなく歩いており、後ろについているはずの侍女が逸れてしまう。
「エーラ?」
名を呼ばれた気がして振り返ったが、姿が見えない。
仕方なく道端にある店の庇の下に立って、追いつくのを待つことにした。
通り過ぎる人々をぼんやりと眺めていると、ナミリアの名を誰かが呼んでいる。
振り返ると、ローズリー・ワンドが立っていた。
「やっぱり!どうなさったんです、おひとりですか?侍女は」
「それがはぐれてしまって」
「おひとりでは危ないですよ、どちらに行かれるのです?」
「ソリユール商店というところですわ」
「ソリユール?知らないなあ」
「手芸の店ですから」
「場所はわかるのですか?私が送りましょう」
「ありがとうございます。せっかくですが、すぐに侍女が来ると思いますので、追いつくのを待ちますわ」
にっこりと、でも残念そうにナミリアが答えるもローズリーは諦めない。
「せっかくの機会だからこそ、私がお送りしたいんです。ではここで侍女が来るのを一緒に待ちましょう!ところで買い物は私が一緒では駄目でしょうか?」
「え?」
一緒に買い物ができたら楽しそうだと口角が上がり、その笑顔をイエスと読んだローズリーがエスコートのために腕を差し出そうとした時。
「お嬢様!」
はあはあ息を弾ませながら、エーラが小走りで駆けてきた。
「エーラ遅かったわね」
「申し訳ございません!お嬢様が大通りを渡られた直後に暴走馬車が来まして」
「えっ大丈夫だったの?」
「はい、怪我人はおりませんでしたが、なかなか抜けられず」
「考え事のせいかしら。気づかなかったわ」
ふたりの会話にローズリーが割り込んでくる。
「ナミリア様、お気をつけください。そんな騒ぎにも気づかないほどの考え事をしながら歩くなんて、危険にもほどがありますよ!」
そう窘めたローズリーにエーラが同調した。
「そうですわ!お嬢様ったら気にもせずにどんどん行ってしまわれて、私とても驚きました」
「ごめんなさい、気をつけますわ」
しゅんとなったナミリアに、サッと腕を差し出して。
「エーラさん、ここで偶然お会いしたのでせっかくだから私もご一緒させていただくことになりました」
それが既成事実になったことにローズリーは満足し、ナミリアはその勢いに圧されて気づくと頷いていた。
エーラが承知と一歩控えると、ローズリーが前に出る。
「さあナミリア様、参りましょう」
ローズリーの声で、ソリユール商店へと三人で歩き出した。
「ミヒア様なら今お出かけで。あと少しでお帰りになりますが、お待ちになりますか?」
「そう、ではちょっと買い物に行って、出直してくるわ」
ロリーンから教えてもらった手芸用品の店を見に行きたいと思っていた。
王都の町を歩くといつもより多くの人々が忙しなく歩いており、後ろについているはずの侍女が逸れてしまう。
「エーラ?」
名を呼ばれた気がして振り返ったが、姿が見えない。
仕方なく道端にある店の庇の下に立って、追いつくのを待つことにした。
通り過ぎる人々をぼんやりと眺めていると、ナミリアの名を誰かが呼んでいる。
振り返ると、ローズリー・ワンドが立っていた。
「やっぱり!どうなさったんです、おひとりですか?侍女は」
「それがはぐれてしまって」
「おひとりでは危ないですよ、どちらに行かれるのです?」
「ソリユール商店というところですわ」
「ソリユール?知らないなあ」
「手芸の店ですから」
「場所はわかるのですか?私が送りましょう」
「ありがとうございます。せっかくですが、すぐに侍女が来ると思いますので、追いつくのを待ちますわ」
にっこりと、でも残念そうにナミリアが答えるもローズリーは諦めない。
「せっかくの機会だからこそ、私がお送りしたいんです。ではここで侍女が来るのを一緒に待ちましょう!ところで買い物は私が一緒では駄目でしょうか?」
「え?」
一緒に買い物ができたら楽しそうだと口角が上がり、その笑顔をイエスと読んだローズリーがエスコートのために腕を差し出そうとした時。
「お嬢様!」
はあはあ息を弾ませながら、エーラが小走りで駆けてきた。
「エーラ遅かったわね」
「申し訳ございません!お嬢様が大通りを渡られた直後に暴走馬車が来まして」
「えっ大丈夫だったの?」
「はい、怪我人はおりませんでしたが、なかなか抜けられず」
「考え事のせいかしら。気づかなかったわ」
ふたりの会話にローズリーが割り込んでくる。
「ナミリア様、お気をつけください。そんな騒ぎにも気づかないほどの考え事をしながら歩くなんて、危険にもほどがありますよ!」
そう窘めたローズリーにエーラが同調した。
「そうですわ!お嬢様ったら気にもせずにどんどん行ってしまわれて、私とても驚きました」
「ごめんなさい、気をつけますわ」
しゅんとなったナミリアに、サッと腕を差し出して。
「エーラさん、ここで偶然お会いしたのでせっかくだから私もご一緒させていただくことになりました」
それが既成事実になったことにローズリーは満足し、ナミリアはその勢いに圧されて気づくと頷いていた。
エーラが承知と一歩控えると、ローズリーが前に出る。
「さあナミリア様、参りましょう」
ローズリーの声で、ソリユール商店へと三人で歩き出した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
80
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる