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夢は交錯する
第12話
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翌日、踝が見える長さのワンピースを着たカーラは侍女三人と護衛を連れ、トイルから聞いたヘアサロンに行くことにした。
「予約はしなくてもよろしいの?」
「ローリスに着いたときに書状を出してございますわ」
「いつ行けるかわからなかったのに?」
「はい、大丈夫です。実は子爵家で働いていたときの先輩がお勤めされておりますの」
「まあ!トイルってば」
トイルは自分の先輩をカーラに紹介しようと目論んでいたのだ。
「ではしっかりサービスしてもらわないとね」
「はい、そのように頼んでありますわ」
「こちらのお店ですわ」
トイルに案内されたのは裏通り、小ぶりだが真っ白な屋敷だった。
外装だけではない。中に入るとこちらも白いレースのカーテンが吊るされ、部屋の奥までほわりと明るく光を通している。
「うわあ素敵ね」
カーラは王都の店を、コテージと同じ淡いピンクと白で彩るつもるだったが、真っ白というのも捨てがたくなっていた。
「先輩!」
「トイル、久しぶりですね」
「本日は急に申し訳ございませんでした」
「いえ、ちょうど予約に空きができたので、むしろありがたかったですわ」
ひとしきり挨拶を交わし、トイルはカーラを紹介した。カーラだけではない、今日はナラとエイミも一緒にヘアサロンでの手入れを経験するので、それぞれ紹介された。
「ではご案内致しますわ」
今日はお試しコースなので、ワンピースを着たままで長いケープ式のガウンを着せられた。
椅子に座らされるとそのまま背中が倒される!
顔の上にふわりと良い香りのハンカチのようなものが掛けられると、水が流れる音が聞こえ始めた。
「失礼致します、熱かったら仰ってください」
そう声がかけられ、熱いのか?と身構えたが、とても気持ち良い温度のお湯がしゅわしゅわと頭皮に当てられると、湯が当たるところから何かが解れていくのを感じていた。
─はあ、きもちいい!─
湯浴みでも侍女たちが洗ってくれるのだが、それとは少し違う。
「このお湯はどうやって当てているのかしら?」
「これはシャワーというものですわ」
「シャワー?」
「はい。ペダルを踏むとタンクに沸かされたお湯と水をホースに吸い込み、手元のレバーを緩めることで噴き出すことができるのですわ」
布をかけられているので見ることができないが、終わったあと絶対にみせてもらおうと心に決める。
「それではシャボンで洗わせでいただきます」
─シャボン?─
ふわぁと甘い良い香りをカーラの鼻が吸い込んだ。
一瞬ひんやりしたかと思うと、髪がしゃくっと動く。柔らかな指がカーラの地肌を滑り、頭の形に沿って少しづつずらしながら行ったり来たりするのが、たまらなく気持ちいい!
侍女が洗うのと何が違うのだろう?
頭の隅々までしゃかしゃかと指が通り抜けた頃、カーラはすっかり脱力していた。
「お痒いところはございませんか」
お痒いところとは聞き慣れない言葉である。
しかし意味はわかった。
「ないわ、とっても気持ちいい」
「ありがとうございます。ではお流し致します」
またしゅわしゅわと気持ちいい温度のお湯が流れて、シャボンの泡を流し去った。
「予約はしなくてもよろしいの?」
「ローリスに着いたときに書状を出してございますわ」
「いつ行けるかわからなかったのに?」
「はい、大丈夫です。実は子爵家で働いていたときの先輩がお勤めされておりますの」
「まあ!トイルってば」
トイルは自分の先輩をカーラに紹介しようと目論んでいたのだ。
「ではしっかりサービスしてもらわないとね」
「はい、そのように頼んでありますわ」
「こちらのお店ですわ」
トイルに案内されたのは裏通り、小ぶりだが真っ白な屋敷だった。
外装だけではない。中に入るとこちらも白いレースのカーテンが吊るされ、部屋の奥までほわりと明るく光を通している。
「うわあ素敵ね」
カーラは王都の店を、コテージと同じ淡いピンクと白で彩るつもるだったが、真っ白というのも捨てがたくなっていた。
「先輩!」
「トイル、久しぶりですね」
「本日は急に申し訳ございませんでした」
「いえ、ちょうど予約に空きができたので、むしろありがたかったですわ」
ひとしきり挨拶を交わし、トイルはカーラを紹介した。カーラだけではない、今日はナラとエイミも一緒にヘアサロンでの手入れを経験するので、それぞれ紹介された。
「ではご案内致しますわ」
今日はお試しコースなので、ワンピースを着たままで長いケープ式のガウンを着せられた。
椅子に座らされるとそのまま背中が倒される!
顔の上にふわりと良い香りのハンカチのようなものが掛けられると、水が流れる音が聞こえ始めた。
「失礼致します、熱かったら仰ってください」
そう声がかけられ、熱いのか?と身構えたが、とても気持ち良い温度のお湯がしゅわしゅわと頭皮に当てられると、湯が当たるところから何かが解れていくのを感じていた。
─はあ、きもちいい!─
湯浴みでも侍女たちが洗ってくれるのだが、それとは少し違う。
「このお湯はどうやって当てているのかしら?」
「これはシャワーというものですわ」
「シャワー?」
「はい。ペダルを踏むとタンクに沸かされたお湯と水をホースに吸い込み、手元のレバーを緩めることで噴き出すことができるのですわ」
布をかけられているので見ることができないが、終わったあと絶対にみせてもらおうと心に決める。
「それではシャボンで洗わせでいただきます」
─シャボン?─
ふわぁと甘い良い香りをカーラの鼻が吸い込んだ。
一瞬ひんやりしたかと思うと、髪がしゃくっと動く。柔らかな指がカーラの地肌を滑り、頭の形に沿って少しづつずらしながら行ったり来たりするのが、たまらなく気持ちいい!
侍女が洗うのと何が違うのだろう?
頭の隅々までしゃかしゃかと指が通り抜けた頃、カーラはすっかり脱力していた。
「お痒いところはございませんか」
お痒いところとは聞き慣れない言葉である。
しかし意味はわかった。
「ないわ、とっても気持ちいい」
「ありがとうございます。ではお流し致します」
またしゅわしゅわと気持ちいい温度のお湯が流れて、シャボンの泡を流し去った。
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