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2巻
2-2
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俺と同じ魔法使いで、『星』のアルカナを宿す少女。ミントの双子の妹でもある。
この少女との出会いこそが、俺の人生の大きな転機だったように思う。
「……ああ、いや。領都に戻ってきたはいいけど、それはそれで心配事がね……」
「お友達のこと?」
「ああ。リック達はもう『エルメリア王の迷宮』に入っているみたいだから」
「大丈夫、アストルも入れるよ。すぐ、追いつける」
ユユが笑みを浮かべて、俺の膝をポンポンと叩いて励ましてくれる。
俺が心配しているのはそこじゃないものの、心遣いは素直に嬉しい。
「ま、これでアストルを拒むんなら、拠点をクシーニに移せばいいだけだ」
軽い調子で笑うエインズに、レンジュウロウが頷き返す。
「然り。それに、クフィーチャからは必ず戻って来いと念を押されておるしな」
実力至上主義の強いクシーニでは、たった一ヵ月で三つの小迷宮を攻略した俺達の帰還を惜しむ声がそれなりにあった。
クシーニの冒険者ギルドの女主人――クフィーチャには〝主迷宮の攻略もパパッとしていったらどうだい〟などと冗談か本気かわからない誘い文句で引き留められたが、まずは当初の目標である『エルメリア王の迷宮』に向かいたいことを伝えると、彼女は笑って送り出してくれた。
他にも何人かの馴染みとなった冒険者達は、俺が☆1と知っても変わらぬ態度で接してくれたこともあって、クシーニは俺にとって思いのほか居心地のいい場所であったように思う。
母と妹はともかくとして、俺が住むならあの町の方が合っているかもしれない。
「そういえば、アストルよ。忍術は使えるようになったのか?」
「ああ……練習がかなり必要でしたよ」
レンジュウロウが〝ほう〟と牙を見せながら口角を釣り上げる。
狼人族である彼の笑顔はいささか物騒だが、最近は慣れてきた。
「ただ……実戦で使える気がまったくしませんよ」
東の最果て『イーストエンド』にあるレンジュウロウの故郷、『ヤーパン』に伝わる特殊な魔法『忍術』。
独特の文化体系を持つかの国の魔法は、俺達が使う魔法とはまったく系統が違うため、この魔法技術の修得にはかなりの根気と修練が必要だった。
特に、『印』と呼ばれる手指による動作と特別な精神集中法が複雑極まりない。
当初は何故こんな迂遠な発動式にするのか不思議だったが、チヨのような東方の斥候――『忍者』と呼ばれる――にとっては、移動しながら静かに魔法を発動する技術が必須だったらしい。
『ユニークスキル』の【反響魔法】の効果によって、俺の魔導書には〈火遁の術〉やら〈雷遁の術〉といった忍術が書き込まれたものの、『印』を結ぶのがなかなか難しくて発動するのにずいぶん手間がかかった。
手先の器用さにはそれなりに自信があったのだけど……
だが、おかげでユユ達のような普通の魔法使いが無詠唱を獲得する困難さを解決するヒントが見えてきた。研究すれば面白いかもしれない。
「アストル様は大変覚えがよろしかったので……もしかすると、『巫術』や『陰陽術』も修得できるかもしれませんね」
俺に忍術を指南してくれたチヨが微笑する。
「興味はあるけど……東の最果ては遠いなぁ」
「アストル、それよりも先に、まずは故郷、でしょ?」
ユユが脇をつつく。
「ああ、『エルメリア王の迷宮』へ行く前に、一度故郷の村に戻ってくるよ。ちゃんと報告しないとな……」
決心はしたものの、やはり気は重い。
俺の故郷は絵に描いたような田舎の村だ。☆1の扱いはすこぶる悪い。 村にも、俺と同じ☆1の人間はいたが、彼らは森の際にある掘っ建て小屋に住むことを余儀なくされ、農業や狩りの雑用として――早い話が村の奴隷として働いていた。
ある意味、それはこの世界における正しい☆1の扱いだ。
「大丈夫、ユユもついて行く」
俺の浮かない表情を見て、ユユが背中をさすってくれる。
「あ、アタシも行きたい! アストルの自慢の妹に会ってみたーい」
ミントはなんともお気楽な声を上げるが……これでも俺を励ましているんだろう。
「まぁ、ゆっくり羽を休めてこいよ。それと……コレ、やるよ」
エインズが俺に放り投げたのは、腰に提げる根付ストラップだ。
二羽の鳩が嘴にくわえたクローバーを交差させている意匠が入っている。
「ラクウェイン侯爵家の印章……?」
「ホントに、お前はなんでも知ってるな。まさかとは思うが、宮廷規範やダンスの順番も覚えてたりしないだろうな……」
「ひ、一通りは……?」
「マジか……」
今となっては宝の持ち腐れだが、一年前の俺は本気で迷宮貴族を目指していた。
……つまり迷宮探索の功労で貴族になろうとしていたのだ。
そうすることで、伯爵令嬢であるミレニアと向き合い、彼女に相応しい男になろうとした。
今思うと、とてつもなく傲慢な理想だったと思える。
迷宮攻略はそんな簡単なものじゃないし、ましてや『エルメリア王の迷宮』を自分なら攻略できると考えるなど、おこがましいにもほどがある。
「とにかく、それを持って行けよ。もし故郷でトラブったら、ラクウェイン侯爵家のエインズワース・オズ・ラクウェインに仕えているとでも、嘘ついとけ。大体それでなんとかなる」
「エインズ……助かる」
エインズは軽い調子で笑っているが、地位の保証は☆1の俺にとっては喉から手が出るほど欲しかったものだ。
故郷に帰るにあたって、これほどありがたい支援はない。
――いずれ返すが、今はありがたく虎の威を借りさせてもらおう。
◆
パーティが拠点にしているエインズの小屋敷に到着して一息ついた後、俺はエインズとレンジュウロウとともに、冒険者ギルドに顔を出すことにした。
二人とも今度こそ『エルメリア王の迷宮』へ入るための探索許可を取り付けると息巻いている。
しかし、久しぶりに足を踏み入れた冒険者ギルドは、なんだか様子がおかしかった。
妙に浮ついた雰囲気で、誰も彼もが落ち着きがない。
ざわつく飲食エリアを横切って奥のカウンターヘ向かい、受付のナナミに問いかける。
「ナナミさん、何かあったんですか?」
「あ、アストル君、帰ってきたのね。それが……今ちょっと揉めててね」
「揉めてる?」
「えぇ。なんでも、予備学校の生徒がダンジョンから帰ってきていないそうなのよ」
言葉を聞いた瞬間、嫌な予感が脳裏をよぎる。
迷宮に挑む限り、死の危険は常にある。ダンジョンから誰かが帰ってこないことなど……この町では日常茶飯事だ。
だからと言って、気にならないわけではない。
行方不明になったのが顔見知りでないことを祈るしかないが、こういう時の嫌な予感というのは、得てして絶望を運んでくるものだ。
「……それで、何を揉めてるんだ?」
押し黙った俺の代わりに、エインズがナナミに尋ねた。
「今、ギルドマスターとバーグナー伯爵が会談していますが……冒険者ギルドに捜索を強制しているようなんです」
「あん? 依頼でも要請でもなく……強制だと?」
「ええ、第七等級以上の冒険者全てを指定して、今すぐダンジョンへ救助に向かえとおっしゃるんですよ」
隣で聞いていたレンジュウロウが呆れ顔で肩を竦める。
「なんたる横暴。暗愚とは思っておったが、そこまでとは思わなんだ」
「最近の管理局の締め付けのせいで冒険者側にも鬱憤がたまってて……依頼や要請だと危険な下層区域まで行く人がいなかったんですよ。それで集団指定依頼に切り替えてきたみたいで……」
ナナミがため息交じりに応えたその時――
大柄な男が、怒声を上げながら扉を蹴破る勢いで奥の部屋から出てきた。
「冒険者相手に散々嫌がらせしておいて、娘が帰ってこねぇから危険区域に向かえってか!? ダンジョン舐めんなよ!」
ガデスが誇るトップクラスの冒険者、〝鋼鉄拳〟ガッツさんだ。
「ダンジョン税の引き上げや、探索申請の却下、魔法使いの強引な引き抜き……そこまでしておいて、今度は命まで懸けろとは……度し難いですね」
ガッツさんの後に続くのは、短く刈り込んだ銀髪の冒険者。
確か彼も、ガッツさんと同じ第三等級の冒険者のはずだ。
それよりも、さっきの会話の内容が引っ掛かる。
気になって視線を向けていると、怒り心頭といった様子で建物の出口に向かって大股で歩くガッツさんと目が合った。
「お、治癒屋、久しぶりだな」
「ガッツさん。誰が、帰ってないんですって……?」
「伯爵様の娘だとよ」
ミレニア……!
くそっ! 悪い予感というのは、どうしてこうも当たるのか……
「……詳しく!」
「お? おう……」
迫る俺に少したじろぎながらも、ガッツさんは仔細を説明してくれた。
伯爵からもたらされた情報によると、ミレニア達は実地訓練のためにダンジョンへと向かい、中階層である地下十五階層で消息を絶ったらしい。
当然、すぐさまバーグナー伯爵お抱えの調査団による救助が行われたものの、発見にはいたらなかった。
代わりに、最近発動した形跡のある落とし穴が見つかったそうだ。
「地下十五階層に部屋を丸ごと呑み込む落とし穴があるってのは、冒険者にとっちゃ割と有名な話だ。その行先もな」
その話は、まだ『エルメリア王の迷宮』に入ってすらいない俺でも知っている。
落とし穴の行先は地下二十四階層。
今攻略されているのが二十八階層までなので、攻略最前線に近い下層区域だ。
はっきり言って、とてもじゃないが、ダンジョンに潜って一ヵ月やそこらの新米調査団員が無事に脱出できるような場所じゃない。
「誰も動かねぇよ。俺様だって、あの辺りはヤベェんだ……」
「私とガッツのパーティでも怪我人を抱えて戻るには危険すぎます。そもそも、生きているかどうかも怪しい」
第三等級冒険者二人の話を聞いているうちに、冷や汗が出て、目の前が薄暗くなっていく。
ミレニアが死んでいるかもしれないという可能性に、心が軋む。
「アストル、おい、大丈夫か」
「治癒屋……顔色悪ぃぞ」
エインズとガッツさんに揺さぶられ、遠のきかけた意識が戻ってくる。
「ああ、大丈夫……大丈夫だ。ガッツさん……他に情報は? 救助に行けそうな人は?」
「貴族ばっかりで組んだパーティらしいから、野営や安全確保の知識も怪しい。救助に行ったところで無駄足どころか、冥界に足をとられる可能性の方が高ぇ。……たとえ等級を落とすことになっても、俺様は指名を受けねぇぞ」
ガッツさんの隣にいた銀髪の男性もそれに頷いて同意する。
「私も同意見です……というか、ここにいる冒険者のほぼ全てがそうでしょう」
必死に考えを巡らせる。
エインズ達と一緒に冒険して思い知らされたが、バーグナー公式調査団の冒険者としての能力はそれほど高くはない。
下層区域まで行って、ミレニアを助けることはまず無理だろう。
頼りのハイランク冒険者達も引き受けを拒否するとなれば、救助はほぼ絶望的だ。
扉の奥からは、バーグナー伯爵の喚き散らすような怒声が漏れ聞こえてくる。
いずれも高圧的で命令口調のそれが、この場にいる冒険者の心証をさらに悪くしているとは気がつかないようだ。
在学中は気にも留めなかったが、レンジュウロウの言う通り、暗愚な人物に思えてきた。
「これはギルドマスターと話せる状況じゃねぇな、出直すか」
「うむ」
エインズとレンジュウロウに肩を掴まれ、俺は半ば引きずられるようにギルドを後にした。
確かとは言えない足取りでエインズの小屋敷に戻った俺は、目の前に出された茶に口もつけずに悩んでいた。
椅子に座ったまま思案を巡らせるが、考えても考えても、ミレニアを助けられる手立てが思い浮かばない。
そんな俺に、エインズが普段と同じように問いかける。
「で……どうする? アストル」
「どう、とは……」
唐突な質問に、俺は言葉を失う。
「あの娘を助けに行きたいのか、行きたくないのか」
「……ッ!」
それは当然、行けるものなら行きたい。
当たり前だ。
だが……しかし。
それは簡単に口にできる言葉ではない。
手段がない。
第三等級冒険者が二の足を踏むようなダンジョンの深層へ、どうやって行くというのか。
そもそも、俺にはいまだに探索許可が下りてないのだ。
「何を迷っておる」
レンジュウロウがにやりと口角を上げる。
エインズも、真剣ながらも〝答えは決まっているのだろう?〟といった顔だ。
――そう、答えは出ている。
「助けに、行きたい……! 力を貸してくれ」
俺の言葉に、二人は力強く頷いた。
◆
「アストル、他に必要な物は?」
「えぇと、造血剤も栄養剤も持ったし、食料も入るだけ詰めた……あとは……」
冒険者通りの露店をユユと回りながら、『エルメリア王の迷宮』突入の準備を急ピッチで進める。
露骨に焦る俺の手を、ユユが握った。
「落ち着いて。きっとお友達は、無事だから」
「ああ……すまない」
「大切な、お友達なんでしょ? ユユも頑張るから、紹介してね」
ユユがそうやってふわりと笑うと、少し気が楽になってきた。
本当に、彼女には頭が上がらない。
「じゃあ、あとは解毒薬かな」
ユユはそう呟くと、俺の手を引いて薬品関連の店の多い辻へと導いた。
――遡ること数刻。
エインズの呼びかけで、すぐに全員がリビングに集まった。
今回のことを事細かに説明したエインズは〝オレとレンジュウロウはアストルに同行する。お前らはどうする?〟と問いかけた。
それに、ユユとミント、それにチヨは逡巡することなく〝一緒に行く〟と頷いた。
さも、当たり前のことであるかのようにだ。
これは依頼でもなんでもない。
俺の個人的なわがままだ。
こんな危険に付き合う必要はない。
俺は確認の意味も込めてそう話したが、姉妹は首を横に振って応えた。
「だって、アストル……一人でも行っちゃうでしょ?」
「だよねぇ~。……もう目がそう言ってるもん」
ユユとミントはよく似た柔らかな笑みを浮かべ、俺を挟み込むように抱擁した。
「大丈夫、だよ」
「アストル一人で行かせたりしないからね!」
二人の温もりが、鼓動が、伝わってくる。
「よし、じゃあ、とっとと段取りを始めんぞ。チヨさん、レンジュウロウと一緒に情報収集を。俺はギルマスと伯爵に手を回してくる。ユユとアストルは備品の補充。ミントは……留守番だ」
「えー、なんでアタシだけー?」
「家に誰もいねぇと、誰か来た時困るだろうが。明朝突入するから、今日は早めに休む。……食事の準備を頼むわ」
エインズはてきぱきと指示を飛ばし、合図とばかりに手を叩く。
「作戦は夕食時に話す。とにかく、今は急いで準備だ」
そう言い放つと、エインズは大股でリビングを去っていった。
「ワシとチヨも行く。十五層までの準備はユユに任せて大丈夫だ」
「わかりました。俺のわがままに付き合わせてしまって、すみません」
「なに、バーグナーに貸しを作っておくのも悪くない。お主はお主の目的のために、注力せよ」
俺の肩をポンと叩いて、レンジュウロウとチヨが小屋敷を出ていった。
「じゃ、アストル。行こ」
ユユが俺の手を引く。
ミントは手を振りながらも、未練がましく頬を膨らませる。
「いいなぁ、アタシもアストルの買い物に行きたーい」
「今回の件が終わったら、いくらでも付き合うよ」
「……! 約束よ?」
一転して屈託のない笑みを浮かべるミントに見送られ、俺とユユも冒険者通りに大急ぎで向かったのだった。
「解毒薬も買ったし……ん、これで大丈夫。地下十五階層はユユ達も行ったことがある」
「その、向かうのは地下二十四階層だろ……? そこまではどうやって行くんだろう」
「たぶん、落とし穴を使うんだと思う、よ?」
なるほど。それならば、ミレニア達との合流も比較的容易だろう。
確かにそれが手っ取り早い。
しかし、そこから地上まで俺達の実力で上がっていけるかは、はなはだ疑問だ。
現在の俺のレベルは、☆1上限値の50。
三つの小迷宮を攻略したことで、あっという間に上限値に達してしまった。
冒険者としては一人前と言えるが、迷宮攻略の最前線に行けるレベルではない。
「エインズは『エルメリア王の迷宮』に慣れている。きっと何か作戦があるはず」
俺の不安をかき消すように、ユユが握ったままの手に力を込める。
いつだって、ユユはこうやって俺を引っ張ってくれる。
「ああ、そうだな。エインズを信用しよう」
この少女との出会いこそが、俺の人生の大きな転機だったように思う。
「……ああ、いや。領都に戻ってきたはいいけど、それはそれで心配事がね……」
「お友達のこと?」
「ああ。リック達はもう『エルメリア王の迷宮』に入っているみたいだから」
「大丈夫、アストルも入れるよ。すぐ、追いつける」
ユユが笑みを浮かべて、俺の膝をポンポンと叩いて励ましてくれる。
俺が心配しているのはそこじゃないものの、心遣いは素直に嬉しい。
「ま、これでアストルを拒むんなら、拠点をクシーニに移せばいいだけだ」
軽い調子で笑うエインズに、レンジュウロウが頷き返す。
「然り。それに、クフィーチャからは必ず戻って来いと念を押されておるしな」
実力至上主義の強いクシーニでは、たった一ヵ月で三つの小迷宮を攻略した俺達の帰還を惜しむ声がそれなりにあった。
クシーニの冒険者ギルドの女主人――クフィーチャには〝主迷宮の攻略もパパッとしていったらどうだい〟などと冗談か本気かわからない誘い文句で引き留められたが、まずは当初の目標である『エルメリア王の迷宮』に向かいたいことを伝えると、彼女は笑って送り出してくれた。
他にも何人かの馴染みとなった冒険者達は、俺が☆1と知っても変わらぬ態度で接してくれたこともあって、クシーニは俺にとって思いのほか居心地のいい場所であったように思う。
母と妹はともかくとして、俺が住むならあの町の方が合っているかもしれない。
「そういえば、アストルよ。忍術は使えるようになったのか?」
「ああ……練習がかなり必要でしたよ」
レンジュウロウが〝ほう〟と牙を見せながら口角を釣り上げる。
狼人族である彼の笑顔はいささか物騒だが、最近は慣れてきた。
「ただ……実戦で使える気がまったくしませんよ」
東の最果て『イーストエンド』にあるレンジュウロウの故郷、『ヤーパン』に伝わる特殊な魔法『忍術』。
独特の文化体系を持つかの国の魔法は、俺達が使う魔法とはまったく系統が違うため、この魔法技術の修得にはかなりの根気と修練が必要だった。
特に、『印』と呼ばれる手指による動作と特別な精神集中法が複雑極まりない。
当初は何故こんな迂遠な発動式にするのか不思議だったが、チヨのような東方の斥候――『忍者』と呼ばれる――にとっては、移動しながら静かに魔法を発動する技術が必須だったらしい。
『ユニークスキル』の【反響魔法】の効果によって、俺の魔導書には〈火遁の術〉やら〈雷遁の術〉といった忍術が書き込まれたものの、『印』を結ぶのがなかなか難しくて発動するのにずいぶん手間がかかった。
手先の器用さにはそれなりに自信があったのだけど……
だが、おかげでユユ達のような普通の魔法使いが無詠唱を獲得する困難さを解決するヒントが見えてきた。研究すれば面白いかもしれない。
「アストル様は大変覚えがよろしかったので……もしかすると、『巫術』や『陰陽術』も修得できるかもしれませんね」
俺に忍術を指南してくれたチヨが微笑する。
「興味はあるけど……東の最果ては遠いなぁ」
「アストル、それよりも先に、まずは故郷、でしょ?」
ユユが脇をつつく。
「ああ、『エルメリア王の迷宮』へ行く前に、一度故郷の村に戻ってくるよ。ちゃんと報告しないとな……」
決心はしたものの、やはり気は重い。
俺の故郷は絵に描いたような田舎の村だ。☆1の扱いはすこぶる悪い。 村にも、俺と同じ☆1の人間はいたが、彼らは森の際にある掘っ建て小屋に住むことを余儀なくされ、農業や狩りの雑用として――早い話が村の奴隷として働いていた。
ある意味、それはこの世界における正しい☆1の扱いだ。
「大丈夫、ユユもついて行く」
俺の浮かない表情を見て、ユユが背中をさすってくれる。
「あ、アタシも行きたい! アストルの自慢の妹に会ってみたーい」
ミントはなんともお気楽な声を上げるが……これでも俺を励ましているんだろう。
「まぁ、ゆっくり羽を休めてこいよ。それと……コレ、やるよ」
エインズが俺に放り投げたのは、腰に提げる根付ストラップだ。
二羽の鳩が嘴にくわえたクローバーを交差させている意匠が入っている。
「ラクウェイン侯爵家の印章……?」
「ホントに、お前はなんでも知ってるな。まさかとは思うが、宮廷規範やダンスの順番も覚えてたりしないだろうな……」
「ひ、一通りは……?」
「マジか……」
今となっては宝の持ち腐れだが、一年前の俺は本気で迷宮貴族を目指していた。
……つまり迷宮探索の功労で貴族になろうとしていたのだ。
そうすることで、伯爵令嬢であるミレニアと向き合い、彼女に相応しい男になろうとした。
今思うと、とてつもなく傲慢な理想だったと思える。
迷宮攻略はそんな簡単なものじゃないし、ましてや『エルメリア王の迷宮』を自分なら攻略できると考えるなど、おこがましいにもほどがある。
「とにかく、それを持って行けよ。もし故郷でトラブったら、ラクウェイン侯爵家のエインズワース・オズ・ラクウェインに仕えているとでも、嘘ついとけ。大体それでなんとかなる」
「エインズ……助かる」
エインズは軽い調子で笑っているが、地位の保証は☆1の俺にとっては喉から手が出るほど欲しかったものだ。
故郷に帰るにあたって、これほどありがたい支援はない。
――いずれ返すが、今はありがたく虎の威を借りさせてもらおう。
◆
パーティが拠点にしているエインズの小屋敷に到着して一息ついた後、俺はエインズとレンジュウロウとともに、冒険者ギルドに顔を出すことにした。
二人とも今度こそ『エルメリア王の迷宮』へ入るための探索許可を取り付けると息巻いている。
しかし、久しぶりに足を踏み入れた冒険者ギルドは、なんだか様子がおかしかった。
妙に浮ついた雰囲気で、誰も彼もが落ち着きがない。
ざわつく飲食エリアを横切って奥のカウンターヘ向かい、受付のナナミに問いかける。
「ナナミさん、何かあったんですか?」
「あ、アストル君、帰ってきたのね。それが……今ちょっと揉めててね」
「揉めてる?」
「えぇ。なんでも、予備学校の生徒がダンジョンから帰ってきていないそうなのよ」
言葉を聞いた瞬間、嫌な予感が脳裏をよぎる。
迷宮に挑む限り、死の危険は常にある。ダンジョンから誰かが帰ってこないことなど……この町では日常茶飯事だ。
だからと言って、気にならないわけではない。
行方不明になったのが顔見知りでないことを祈るしかないが、こういう時の嫌な予感というのは、得てして絶望を運んでくるものだ。
「……それで、何を揉めてるんだ?」
押し黙った俺の代わりに、エインズがナナミに尋ねた。
「今、ギルドマスターとバーグナー伯爵が会談していますが……冒険者ギルドに捜索を強制しているようなんです」
「あん? 依頼でも要請でもなく……強制だと?」
「ええ、第七等級以上の冒険者全てを指定して、今すぐダンジョンへ救助に向かえとおっしゃるんですよ」
隣で聞いていたレンジュウロウが呆れ顔で肩を竦める。
「なんたる横暴。暗愚とは思っておったが、そこまでとは思わなんだ」
「最近の管理局の締め付けのせいで冒険者側にも鬱憤がたまってて……依頼や要請だと危険な下層区域まで行く人がいなかったんですよ。それで集団指定依頼に切り替えてきたみたいで……」
ナナミがため息交じりに応えたその時――
大柄な男が、怒声を上げながら扉を蹴破る勢いで奥の部屋から出てきた。
「冒険者相手に散々嫌がらせしておいて、娘が帰ってこねぇから危険区域に向かえってか!? ダンジョン舐めんなよ!」
ガデスが誇るトップクラスの冒険者、〝鋼鉄拳〟ガッツさんだ。
「ダンジョン税の引き上げや、探索申請の却下、魔法使いの強引な引き抜き……そこまでしておいて、今度は命まで懸けろとは……度し難いですね」
ガッツさんの後に続くのは、短く刈り込んだ銀髪の冒険者。
確か彼も、ガッツさんと同じ第三等級の冒険者のはずだ。
それよりも、さっきの会話の内容が引っ掛かる。
気になって視線を向けていると、怒り心頭といった様子で建物の出口に向かって大股で歩くガッツさんと目が合った。
「お、治癒屋、久しぶりだな」
「ガッツさん。誰が、帰ってないんですって……?」
「伯爵様の娘だとよ」
ミレニア……!
くそっ! 悪い予感というのは、どうしてこうも当たるのか……
「……詳しく!」
「お? おう……」
迫る俺に少したじろぎながらも、ガッツさんは仔細を説明してくれた。
伯爵からもたらされた情報によると、ミレニア達は実地訓練のためにダンジョンへと向かい、中階層である地下十五階層で消息を絶ったらしい。
当然、すぐさまバーグナー伯爵お抱えの調査団による救助が行われたものの、発見にはいたらなかった。
代わりに、最近発動した形跡のある落とし穴が見つかったそうだ。
「地下十五階層に部屋を丸ごと呑み込む落とし穴があるってのは、冒険者にとっちゃ割と有名な話だ。その行先もな」
その話は、まだ『エルメリア王の迷宮』に入ってすらいない俺でも知っている。
落とし穴の行先は地下二十四階層。
今攻略されているのが二十八階層までなので、攻略最前線に近い下層区域だ。
はっきり言って、とてもじゃないが、ダンジョンに潜って一ヵ月やそこらの新米調査団員が無事に脱出できるような場所じゃない。
「誰も動かねぇよ。俺様だって、あの辺りはヤベェんだ……」
「私とガッツのパーティでも怪我人を抱えて戻るには危険すぎます。そもそも、生きているかどうかも怪しい」
第三等級冒険者二人の話を聞いているうちに、冷や汗が出て、目の前が薄暗くなっていく。
ミレニアが死んでいるかもしれないという可能性に、心が軋む。
「アストル、おい、大丈夫か」
「治癒屋……顔色悪ぃぞ」
エインズとガッツさんに揺さぶられ、遠のきかけた意識が戻ってくる。
「ああ、大丈夫……大丈夫だ。ガッツさん……他に情報は? 救助に行けそうな人は?」
「貴族ばっかりで組んだパーティらしいから、野営や安全確保の知識も怪しい。救助に行ったところで無駄足どころか、冥界に足をとられる可能性の方が高ぇ。……たとえ等級を落とすことになっても、俺様は指名を受けねぇぞ」
ガッツさんの隣にいた銀髪の男性もそれに頷いて同意する。
「私も同意見です……というか、ここにいる冒険者のほぼ全てがそうでしょう」
必死に考えを巡らせる。
エインズ達と一緒に冒険して思い知らされたが、バーグナー公式調査団の冒険者としての能力はそれほど高くはない。
下層区域まで行って、ミレニアを助けることはまず無理だろう。
頼りのハイランク冒険者達も引き受けを拒否するとなれば、救助はほぼ絶望的だ。
扉の奥からは、バーグナー伯爵の喚き散らすような怒声が漏れ聞こえてくる。
いずれも高圧的で命令口調のそれが、この場にいる冒険者の心証をさらに悪くしているとは気がつかないようだ。
在学中は気にも留めなかったが、レンジュウロウの言う通り、暗愚な人物に思えてきた。
「これはギルドマスターと話せる状況じゃねぇな、出直すか」
「うむ」
エインズとレンジュウロウに肩を掴まれ、俺は半ば引きずられるようにギルドを後にした。
確かとは言えない足取りでエインズの小屋敷に戻った俺は、目の前に出された茶に口もつけずに悩んでいた。
椅子に座ったまま思案を巡らせるが、考えても考えても、ミレニアを助けられる手立てが思い浮かばない。
そんな俺に、エインズが普段と同じように問いかける。
「で……どうする? アストル」
「どう、とは……」
唐突な質問に、俺は言葉を失う。
「あの娘を助けに行きたいのか、行きたくないのか」
「……ッ!」
それは当然、行けるものなら行きたい。
当たり前だ。
だが……しかし。
それは簡単に口にできる言葉ではない。
手段がない。
第三等級冒険者が二の足を踏むようなダンジョンの深層へ、どうやって行くというのか。
そもそも、俺にはいまだに探索許可が下りてないのだ。
「何を迷っておる」
レンジュウロウがにやりと口角を上げる。
エインズも、真剣ながらも〝答えは決まっているのだろう?〟といった顔だ。
――そう、答えは出ている。
「助けに、行きたい……! 力を貸してくれ」
俺の言葉に、二人は力強く頷いた。
◆
「アストル、他に必要な物は?」
「えぇと、造血剤も栄養剤も持ったし、食料も入るだけ詰めた……あとは……」
冒険者通りの露店をユユと回りながら、『エルメリア王の迷宮』突入の準備を急ピッチで進める。
露骨に焦る俺の手を、ユユが握った。
「落ち着いて。きっとお友達は、無事だから」
「ああ……すまない」
「大切な、お友達なんでしょ? ユユも頑張るから、紹介してね」
ユユがそうやってふわりと笑うと、少し気が楽になってきた。
本当に、彼女には頭が上がらない。
「じゃあ、あとは解毒薬かな」
ユユはそう呟くと、俺の手を引いて薬品関連の店の多い辻へと導いた。
――遡ること数刻。
エインズの呼びかけで、すぐに全員がリビングに集まった。
今回のことを事細かに説明したエインズは〝オレとレンジュウロウはアストルに同行する。お前らはどうする?〟と問いかけた。
それに、ユユとミント、それにチヨは逡巡することなく〝一緒に行く〟と頷いた。
さも、当たり前のことであるかのようにだ。
これは依頼でもなんでもない。
俺の個人的なわがままだ。
こんな危険に付き合う必要はない。
俺は確認の意味も込めてそう話したが、姉妹は首を横に振って応えた。
「だって、アストル……一人でも行っちゃうでしょ?」
「だよねぇ~。……もう目がそう言ってるもん」
ユユとミントはよく似た柔らかな笑みを浮かべ、俺を挟み込むように抱擁した。
「大丈夫、だよ」
「アストル一人で行かせたりしないからね!」
二人の温もりが、鼓動が、伝わってくる。
「よし、じゃあ、とっとと段取りを始めんぞ。チヨさん、レンジュウロウと一緒に情報収集を。俺はギルマスと伯爵に手を回してくる。ユユとアストルは備品の補充。ミントは……留守番だ」
「えー、なんでアタシだけー?」
「家に誰もいねぇと、誰か来た時困るだろうが。明朝突入するから、今日は早めに休む。……食事の準備を頼むわ」
エインズはてきぱきと指示を飛ばし、合図とばかりに手を叩く。
「作戦は夕食時に話す。とにかく、今は急いで準備だ」
そう言い放つと、エインズは大股でリビングを去っていった。
「ワシとチヨも行く。十五層までの準備はユユに任せて大丈夫だ」
「わかりました。俺のわがままに付き合わせてしまって、すみません」
「なに、バーグナーに貸しを作っておくのも悪くない。お主はお主の目的のために、注力せよ」
俺の肩をポンと叩いて、レンジュウロウとチヨが小屋敷を出ていった。
「じゃ、アストル。行こ」
ユユが俺の手を引く。
ミントは手を振りながらも、未練がましく頬を膨らませる。
「いいなぁ、アタシもアストルの買い物に行きたーい」
「今回の件が終わったら、いくらでも付き合うよ」
「……! 約束よ?」
一転して屈託のない笑みを浮かべるミントに見送られ、俺とユユも冒険者通りに大急ぎで向かったのだった。
「解毒薬も買ったし……ん、これで大丈夫。地下十五階層はユユ達も行ったことがある」
「その、向かうのは地下二十四階層だろ……? そこまではどうやって行くんだろう」
「たぶん、落とし穴を使うんだと思う、よ?」
なるほど。それならば、ミレニア達との合流も比較的容易だろう。
確かにそれが手っ取り早い。
しかし、そこから地上まで俺達の実力で上がっていけるかは、はなはだ疑問だ。
現在の俺のレベルは、☆1上限値の50。
三つの小迷宮を攻略したことで、あっという間に上限値に達してしまった。
冒険者としては一人前と言えるが、迷宮攻略の最前線に行けるレベルではない。
「エインズは『エルメリア王の迷宮』に慣れている。きっと何か作戦があるはず」
俺の不安をかき消すように、ユユが握ったままの手に力を込める。
いつだって、ユユはこうやって俺を引っ張ってくれる。
「ああ、そうだな。エインズを信用しよう」
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