3 / 55
第三話……青い惑星
しおりを挟む
「あの青い星にいってみていい?」
「構いませんよ」
ある日、晴信はディーを留守番に残し、とある青い星に出向くことにした。
その理由は特になく、ただの冒険心と言っていい。
この宇宙に住む民族は、すべて平等にテクノロジーを持つわけではなく、古き良き時代を楽しむ民族もいた。
晴信がのる宇宙船アルファ号が訪れた惑星は、そうした古き良き時代を体現したかのような惑星の予定だった。
『ワープアウト! 予定地惑星まで3.7光秒地点です』
「了解!」
晴信はアルファ号のAIに返事をする。
アルファ号は、音声指示による操船を可能とする宇宙船であった。
『大気圏へ降下します! 安全ベルトをお締め下さい!』
アルファ号に指示されて、あわてて安全ベルトを締める晴信。
居住環境を優先したアルファ号ではあったが、惑星への離着陸などの時は、どうしても大きな振動が付きまとった。
……奇麗な星だ。
晴信は正直そう思う。
彼が住んでいた地球も、まさしくそうであったであろうが、彼は地球を宇宙からの視点で見たことは無かったのだ。
アルファ号は大気圏で熱に揉まれ、灼熱しながら重力ブースターを点火。
件の惑星の重力に抗いながら、雲を下に突き抜け着陸に成功した。
『降下完了しました。お疲れ様です!』
アルファ号に宇宙船酔いを労われる晴信。
しかし、彼が船外に出ようとすると、アルファ号が彼の行動を制止した。
『微生物クリーナーを浴びてください。さもないと当惑星の生物を死滅させる恐れがあります!』
……ああ、そうか。
晴信はディーに教わったことを思い出す。
惑星外からの未知の病原菌を持ち込めば、その惑星の生物たちが抗体を持つ時間を与えずに、絶滅させる恐れがあったのだ。
晴信はアルファ号に備わっていたクリーナーを浴びた後、勢いよく外に出た。
「いやっほぃ!」
久々に新鮮な空気。
大地には緑の草。
空には青い空と白い雲。
それらは、アルファ号を作った工場のある岩石天体には無いものであった。
その後、晴信はアルファ号から4輪バギーを持ち出し、その惑星の大地を思う存分に疾駆したのだった。
☆★☆★☆
「当惑星にご旅行ありがとうございます」
「お邪魔します」
この惑星の文明種族は、地球でのゲームで言えば獣人のような見た目だった。
地球の文明より科学水準は下であったが、その分は未開の環境が観光上のウリである。
それによって多くの旅行客を招きいれているようであった。
……意外とつまらないな。
これが晴信の正直な感想だった。
惑星間ギルドのカードを出せば、宿は簡単に泊まれるし、犯罪率もさほど高くない。
逆に言えば、未開の地を探検するというスリルや、冒険を楽しめるといった惑星ではなかったのだ。
彼はもっとスリルのある冒険がしたかったのだ。
晴信は一泊だけしたのち、その惑星から帰ることにした。
ひとつだけ思い出があるとすれば、晩御飯のスープがおいしかったくらいであった。
☆★☆★☆
「ただいま」
「おかえりなさい。どうでした? あの惑星は」
ディーが晴信を出迎える。
「いやぁ、あまりおもしろくなかったよ」
「……と、いいますと?」
「もっとさぁ、折角だから、ハラハラドキドキする冒険がしたいんだよね?」
「それは危険です!」
ディーが思ったよりきつく言ってくるので、晴信は驚く。
「ハルノブはこの工場の主なのです。危険なことはやめてください!」
……そうだ。
なぜかわからないけど、僕はこの工場の主だったんだ。
主でなければ、ディーが親切にしてくれる理由はない。
晴信はそう思い直し、ディーを安心させることにした。
「分かったよ。危険なところへは無断ではいかないよ」
「ありがとうございます」
晴信の言を聞き、ディーは青ランプをチカチカ点灯させている。
きっと喜んでいるに違いなかった。
☆★☆★☆
――翌日。
晴信とディーは、仲良く鉱石の採掘に取り組んでいた。
「ねぇ、ディー」
「なんです? ハルノブ」
「この星の名前はなんていうの?」
そう、この工場がある岩石状の天体の名前を、晴信は知らなかった。
それに対してディーは、
「私も知りません!」
きっぱりとそう答えた。
「あはは、ディーも知らないんだ。じゃあ名前を付けていい?」
晴信は笑いながらディーに問いかける。
「構いませんよ」
「……じゃあねぇ、ここはディーハウスって名前にするね」
その命名は、そのままディーの家という意味だ。
惑星と言うほど大きくないので、きっと準惑星ディーハウスというのが妥当かもしれない。
ディーは無言になり、赤いランプと青いランプを交互に点灯させる。
それは嬉しくて照れているのであり、その気持ちは、晴信にもはっきりと伝わったのだった。
――その晩。
ディーが作ってくれたご飯は豪勢であった。
エビフライとパスタとハンバーグ。
人造タンパク質製ではあったが、全て晴信の大好物だった。
「いただきます!」
「おあがりください」
なんだか晴信は『良いことをした』気になったし、ディーは紛れもなく喜んでいた。
その楽しい雰囲気は、殺風景な岩石状の天体であるディーハウスも、共有しているかのようであった。
「構いませんよ」
ある日、晴信はディーを留守番に残し、とある青い星に出向くことにした。
その理由は特になく、ただの冒険心と言っていい。
この宇宙に住む民族は、すべて平等にテクノロジーを持つわけではなく、古き良き時代を楽しむ民族もいた。
晴信がのる宇宙船アルファ号が訪れた惑星は、そうした古き良き時代を体現したかのような惑星の予定だった。
『ワープアウト! 予定地惑星まで3.7光秒地点です』
「了解!」
晴信はアルファ号のAIに返事をする。
アルファ号は、音声指示による操船を可能とする宇宙船であった。
『大気圏へ降下します! 安全ベルトをお締め下さい!』
アルファ号に指示されて、あわてて安全ベルトを締める晴信。
居住環境を優先したアルファ号ではあったが、惑星への離着陸などの時は、どうしても大きな振動が付きまとった。
……奇麗な星だ。
晴信は正直そう思う。
彼が住んでいた地球も、まさしくそうであったであろうが、彼は地球を宇宙からの視点で見たことは無かったのだ。
アルファ号は大気圏で熱に揉まれ、灼熱しながら重力ブースターを点火。
件の惑星の重力に抗いながら、雲を下に突き抜け着陸に成功した。
『降下完了しました。お疲れ様です!』
アルファ号に宇宙船酔いを労われる晴信。
しかし、彼が船外に出ようとすると、アルファ号が彼の行動を制止した。
『微生物クリーナーを浴びてください。さもないと当惑星の生物を死滅させる恐れがあります!』
……ああ、そうか。
晴信はディーに教わったことを思い出す。
惑星外からの未知の病原菌を持ち込めば、その惑星の生物たちが抗体を持つ時間を与えずに、絶滅させる恐れがあったのだ。
晴信はアルファ号に備わっていたクリーナーを浴びた後、勢いよく外に出た。
「いやっほぃ!」
久々に新鮮な空気。
大地には緑の草。
空には青い空と白い雲。
それらは、アルファ号を作った工場のある岩石天体には無いものであった。
その後、晴信はアルファ号から4輪バギーを持ち出し、その惑星の大地を思う存分に疾駆したのだった。
☆★☆★☆
「当惑星にご旅行ありがとうございます」
「お邪魔します」
この惑星の文明種族は、地球でのゲームで言えば獣人のような見た目だった。
地球の文明より科学水準は下であったが、その分は未開の環境が観光上のウリである。
それによって多くの旅行客を招きいれているようであった。
……意外とつまらないな。
これが晴信の正直な感想だった。
惑星間ギルドのカードを出せば、宿は簡単に泊まれるし、犯罪率もさほど高くない。
逆に言えば、未開の地を探検するというスリルや、冒険を楽しめるといった惑星ではなかったのだ。
彼はもっとスリルのある冒険がしたかったのだ。
晴信は一泊だけしたのち、その惑星から帰ることにした。
ひとつだけ思い出があるとすれば、晩御飯のスープがおいしかったくらいであった。
☆★☆★☆
「ただいま」
「おかえりなさい。どうでした? あの惑星は」
ディーが晴信を出迎える。
「いやぁ、あまりおもしろくなかったよ」
「……と、いいますと?」
「もっとさぁ、折角だから、ハラハラドキドキする冒険がしたいんだよね?」
「それは危険です!」
ディーが思ったよりきつく言ってくるので、晴信は驚く。
「ハルノブはこの工場の主なのです。危険なことはやめてください!」
……そうだ。
なぜかわからないけど、僕はこの工場の主だったんだ。
主でなければ、ディーが親切にしてくれる理由はない。
晴信はそう思い直し、ディーを安心させることにした。
「分かったよ。危険なところへは無断ではいかないよ」
「ありがとうございます」
晴信の言を聞き、ディーは青ランプをチカチカ点灯させている。
きっと喜んでいるに違いなかった。
☆★☆★☆
――翌日。
晴信とディーは、仲良く鉱石の採掘に取り組んでいた。
「ねぇ、ディー」
「なんです? ハルノブ」
「この星の名前はなんていうの?」
そう、この工場がある岩石状の天体の名前を、晴信は知らなかった。
それに対してディーは、
「私も知りません!」
きっぱりとそう答えた。
「あはは、ディーも知らないんだ。じゃあ名前を付けていい?」
晴信は笑いながらディーに問いかける。
「構いませんよ」
「……じゃあねぇ、ここはディーハウスって名前にするね」
その命名は、そのままディーの家という意味だ。
惑星と言うほど大きくないので、きっと準惑星ディーハウスというのが妥当かもしれない。
ディーは無言になり、赤いランプと青いランプを交互に点灯させる。
それは嬉しくて照れているのであり、その気持ちは、晴信にもはっきりと伝わったのだった。
――その晩。
ディーが作ってくれたご飯は豪勢であった。
エビフライとパスタとハンバーグ。
人造タンパク質製ではあったが、全て晴信の大好物だった。
「いただきます!」
「おあがりください」
なんだか晴信は『良いことをした』気になったし、ディーは紛れもなく喜んでいた。
その楽しい雰囲気は、殺風景な岩石状の天体であるディーハウスも、共有しているかのようであった。
13
あなたにおすすめの小説
英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する
鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。
突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。
しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。
魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。
英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる