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1.人見知りぼっち令嬢、婚約破棄を告げられる。
しおりを挟む「レイネ嬢、私は今日、この場において君との婚約破棄を宣言する」
この国の第三王子であるカイゼン殿下からその言葉を受けたシュトラウゼン家の令嬢、レイネはあまりのショックに口をパクパクさせていた。
「以後、レイネ嬢と私は赤の他人。何があったとしたもそこに情はない。いいね?」
表情を変えず念押しするカイゼン殿下。そこには婚約者……もとい、元婚約者を労るような感情は一切無かった。
「…………で、殿下。そ、その、何故、でしょうか?わ、私が何か――――」
「何故、か。そんなもの君がこの私に相応しくないから以外にないだろう?」
当然のように言い放つカイゼン殿下だが、レイネは反論できない。
何故なら相応しくないと言われてしまえば、彼女には思い当たる節だらけだからだ。
(端正な顔立ちで華がある殿下と違って私には何もない。強いて言うのならこの黒髪が珍しいけれど、むしろ地味さと不気味さに拍車をかけてる……)
加えていうのならレイネの性格は引っ込み思案であまり社交的ではないというのも要因としてはあるかもしれない。
「それに、だ。相応しくないだけならまだしも、まさか同級生に嫌がらせまでしているとは思わなかったぞ。おとなしい振りをして性格まで歪んでいるとはな」
「……え……嫌がらせ……?一体何の事でしょうか……?」
見に覚えのない罪を問われて困惑しつつも、レイネが問い返すと、カイゼン殿下は片眉を吊り上げて侮蔑の視線を向けてくる。
「……しらばっくれるつもりか?素直に認めれば良いものを……こちらには証人がいるのだぞ!」
「ひっ……ほ、本当に知らないんです……そ、そんな目で見ないで……」
語気を荒げるカイゼン殿下にレイネは怯え、視線から逃れるように身体を縮こませる。それを見たカイゼン殿下は大きく舌打ちをした後、どこかに合図を送った。
すると、人混みの中から一際、派手で露出した格好の女性がカイゼン殿下の元まで歩み寄り、絡みつくように腕へ抱き着いた。
「カイゼン殿下っ!いつまであんな女にかまってるんですかぁ?」
「……離れろ。あまりベタベタされるのは好きじゃない」
そう言いながらも、派手な女性に抱き着かれたカイゼン殿下の顔は綻んでおり、今までレイネに見せたことのない表情をしていた。
「あ、あの……その方は……」
「フン、白々しい。こちらの令嬢こそ君が嫌がらせしたサージュ・リエール――――私の新たな婚約者だ」
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