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第10章
ライオンと妖艶なウサギの夜③
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「怖がらないでいいよ。あのね、これだけは信じて欲しいんだ。
僕は谷崎くんの傍にいるよ。
『もしも』のときは、
それは谷崎くんが手を離したとき。
僕は谷崎くんのことが好きだから。
ずっと一緒にいるから。
僕の心臓の音、聴く?安心するよ」
谷崎はトクントクンといつもより早めの秋彦の胸の鼓動を聴く。
心地いいリズムと埋めた、秋彦の懐の甘い匂いに安心する。
秋彦は、腕の中に目を瞑る恋人が、あまりにいたいけで、いとしく思えた。
「今は眠って。あとからお風呂に一緒に入って、花火を見よう?
明日は勉強しなきゃね。
疲れたらお菓子と
おばあちゃんに麦茶をもらってお喋りしよう。夜は一緒に蛍を見よう?
新しい思い出を谷崎くんとたくさん作りたいな。おやすみなさい。
花火が鳴ったら起こすから」
谷崎の金色の髪を撫でながら、
秋彦は微笑む。
穏やかなしあわせに満ちる。
無防備な安心しきった谷崎の顔は、
何処かあどけない少年のようだった。
一緒にお風呂に入った。
秋彦の祖母の家は見た目こそ古民家に近いが色んな所をリフォームしてある。
二人ではいるとお湯が少し溢れた。
遠くに花火が見えた。
暫くして轟音が響く。
触れあって、
じゃれ合って、
口づけを繰り返した。
花火の閃光は何度も二人の横顔を照らした。
『好きです』と『好き』も何回も繰り返す。
秋彦の病的に白い肌。
谷崎が背中の痕に触れると、
秋彦は身体を震わせた。
「痛い、ですか?」
「う、ううん。ただ、怖い。ザワザワする」
谷崎はそっと、背中の傷跡に口づけていく。
不思議な感じがした。
徐々に不快感が消えていく。
「谷崎くん…」
「嫌な感じ…しますか?」
「ううん。しないよ。くすぐったい」
谷崎は「良かった」と言い笑う。
「祥介、祥介…」こころの中で呼びかけた。
『ありがとう。背中はもう痛まない。
谷崎くんに治してもらった。
もう、祥介も縛られないでいい。
我儘や罪悪感で、がんじがらめにした。
ごめんね。今までありがとう…』
秋彦は、ぼんやり思う。
祥介は秋彦の過去を消し、
谷崎は秋彦の未来を作った。
「お湯に当たりました?ぼんやりして」
「ううん。谷崎くん、いつも、ありがとう」
同じくらい、祥介。
君にも感謝してる。
多分、もう言うことはないと思うけれど。
秋彦はこころの中で祥介に、
『好きだったよ、祥ちゃん』
『さよなら、祥ちゃん』と告げた
──────────続
僕は谷崎くんの傍にいるよ。
『もしも』のときは、
それは谷崎くんが手を離したとき。
僕は谷崎くんのことが好きだから。
ずっと一緒にいるから。
僕の心臓の音、聴く?安心するよ」
谷崎はトクントクンといつもより早めの秋彦の胸の鼓動を聴く。
心地いいリズムと埋めた、秋彦の懐の甘い匂いに安心する。
秋彦は、腕の中に目を瞑る恋人が、あまりにいたいけで、いとしく思えた。
「今は眠って。あとからお風呂に一緒に入って、花火を見よう?
明日は勉強しなきゃね。
疲れたらお菓子と
おばあちゃんに麦茶をもらってお喋りしよう。夜は一緒に蛍を見よう?
新しい思い出を谷崎くんとたくさん作りたいな。おやすみなさい。
花火が鳴ったら起こすから」
谷崎の金色の髪を撫でながら、
秋彦は微笑む。
穏やかなしあわせに満ちる。
無防備な安心しきった谷崎の顔は、
何処かあどけない少年のようだった。
一緒にお風呂に入った。
秋彦の祖母の家は見た目こそ古民家に近いが色んな所をリフォームしてある。
二人ではいるとお湯が少し溢れた。
遠くに花火が見えた。
暫くして轟音が響く。
触れあって、
じゃれ合って、
口づけを繰り返した。
花火の閃光は何度も二人の横顔を照らした。
『好きです』と『好き』も何回も繰り返す。
秋彦の病的に白い肌。
谷崎が背中の痕に触れると、
秋彦は身体を震わせた。
「痛い、ですか?」
「う、ううん。ただ、怖い。ザワザワする」
谷崎はそっと、背中の傷跡に口づけていく。
不思議な感じがした。
徐々に不快感が消えていく。
「谷崎くん…」
「嫌な感じ…しますか?」
「ううん。しないよ。くすぐったい」
谷崎は「良かった」と言い笑う。
「祥介、祥介…」こころの中で呼びかけた。
『ありがとう。背中はもう痛まない。
谷崎くんに治してもらった。
もう、祥介も縛られないでいい。
我儘や罪悪感で、がんじがらめにした。
ごめんね。今までありがとう…』
秋彦は、ぼんやり思う。
祥介は秋彦の過去を消し、
谷崎は秋彦の未来を作った。
「お湯に当たりました?ぼんやりして」
「ううん。谷崎くん、いつも、ありがとう」
同じくらい、祥介。
君にも感謝してる。
多分、もう言うことはないと思うけれど。
秋彦はこころの中で祥介に、
『好きだったよ、祥ちゃん』
『さよなら、祥ちゃん』と告げた
──────────続
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