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第5巻 残業中ガマンできずに会社でオナニーしてたら警備員にバレて口止めにセクハラされちゃいました
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「タイトル長っ!」
「うるせぇな。今こーゆーの流行ってんだろ」
今日は撮影前に宣材写真を撮り直すというので事務所に来ていた。この写真でAVメーカーに営業をかけ、出演のオファーをもらうのだ。
珍しく事前に台本をもらったので、一応パラパラと目を通している。
「ほい、これ衣装。メイクしてもらってきて」
佐伯が放って寄越した紺色の事務員の制服に着替え、この事務所に一人だけいるヘアメイクの杉田さんにメイクをしてもらう。杉田さんは薄い金髪で、顔にまでピアスしている女の子だ。
事務所の一室が小さなスタジオになっている。今日はブラインドが降りた窓際に、事務机と椅子が置いてある。
「ちょっと建込みのスタジオ押さえられなかったから、ここで撮っちゃうから」
「……佐伯さんが?」
「俺が撮っちゃ悪いかよ」
佐伯はカメラを準備しながら言う。佐伯の肩書は宣伝部長。カメラマンでも監督でもないはずなのに、なぜか機材の扱いが手慣れている。
「じゃ、撮るぞ―」
パシャ。
「――ねぇ佐伯さん、あたしが今の仕事辞めてAVだけで稼いだら、もっとギャラもらえるのかな?」
「あー?ああ、まあ、そうだろうなァ……ちょっと笑って」
パシャ。
「机に座って、脚組んで」
あたしは言われたとおりにポーズを取る。
パシャ。
「……なんだお前、金いるのか?」
パシャ。
「そういうわけじゃないけど……」
「次、後ろ向いて、片ヒザ机に上げて、顔だけこっち」
言われたとおりにすると、タイトスカートがまくれ上がって、ほとんどお尻が見えそうだ。
「笑って」
――マジ?それ、安いって。
この間聖さんに言われた言葉が、頭に染み付いて離れない。
「……笑えって」
「あ、はい」
パシャ。
やばい、考え事が顔に出てた。
「シャツのボタン外して、ちょっとエロい顔して」
パシャ。パシャ。
「もっと」
もっと、って。
なんかわざとらしいなぁ。なんて思いながら、流し目っぽくしてみたり、口を半開きにしてみたりする。これ、冷静な目で見たらだいぶアホ面なんじゃないか。
「お前、親とかどうしてんの?」
「……えっ?」
唐突に聞かれて、あたしは面食らった。
「じゃ、服全部脱いで」
「……ちょっと、親の話振っといて、服脱げって、どうなの」
「あ、すまん」
佐伯はカメラのモニターから顔を上げて、謝った。
「父親はいなくて、……母はずっと入院してます」
あたしはブラとショーツだけになって、また数ポーズ撮影する。
「なんだ、お母さんの調子が悪いのか?」
そう言うと、佐伯はカメラを置いた。
「え?なんで?」
あたしは佐伯の言っていることが理解できずに聞き返した。
「いや、金がいるっていうから」
佐伯はすたすたとこちらに近寄ってくると、机に浅く腰を預けていたあたしの手を掴む。
「……手は、ここ。脚は……こうかな」
佐伯はあたしの手の置き場所をわずかに変え、片脚の膝を曲げて、机の上に置いた。ショーツをはいてはいるものの、股間を真正面に開いた形になって、あたしは初めてどきっとした。
「あ、いやいや、いますぐお金が必要とか、そういうわけじゃないんです。ただちょっと気になって――」
至近距離に佐伯がいる。
身体の芯がきゅうっとなるのを感じる。
「で、いくら欲しいんだ?」
「だから、ほんとに……いいんです……」
佐伯はあたしの顔のすぐ前で、あたしの髪の毛束を後ろに流している。
「そうなのか?必要なら言えよ?」
「……そしたら仕事増やしてくれるんですか?」
「それはちょっと考えるよ。でも本業もあるし、あんまり無茶はできないだろ」
そう言いながら、佐伯はブラのストラップの位置をずらしている。佐伯の息が首筋にかかる。
ちょっと考える、ってどういうことだろう。
――ヤバい筋に借金もあるみたいだし――。
ああ、今日は、聖さんの言葉がどこまでも追いかけてくるみたいだ。
「やっぱこれ、ないほうがいいな」
「やん」
佐伯はブラを外してしまった。あたしは咄嗟に両腕で胸を押さえた。
再び後ろに下がってカメラを構える。
「お、いいじゃん。その表情」
*****
「え、ちょっと待って、ここで?事務所内で撮るんですか!?」
一時間後、あたしはビデオカメラを手にした佐伯に、猛烈に抗議していた。
「だから言ったじゃねえか、スタジオ押さえらんなかったんだって」
「それはスチールのことでしょ!?」
「ああ、すまん本編もなんだ。ネット配信用の短いやつだからそんなに金かけられなくて」
「えええ!」
「だから撮影も俺が」
「えええええ!?」
「なんだよ。大騒ぎするなよ、こんくらいで。なにが嫌なんだよ?」
「だって……」
あたしは言葉に詰まった。
佐伯に、撮影してる時の自分を見られたくない、なんて言えない。だってそもそも撮り終わったものは全部目を通しているはずだし、なにが嫌なのか自分でも説明できない。
「こないだ電車でも俺が撮ったじゃねえか」
(そのときにヤだって気付いたんだよっ)……とは、口が裂けても言えない。
「とにかく撮るから!警備員さん、よろしく!」
「うぃっす!」
いつの間にか、警備員役のおじさんもしっかりスタンバイしている。
「じゃ、そういうことで。ほい、そこ座って。いくよ、キュー!」
「~~~~~~~~っ!!」
あたしは広げたノートパソコンに向かって、でたらめにタイピングしている。
そんなあたしを、天井に設置された監視カメラ(という設定の小型カメラ)が写している。このカメラの画像は警備員室に繋がっているという設定。警備員室のカットは後から撮り、編集でつなげるらしい。
タン!とEnterキーを叩き、時計を見る。時計は夜の九時を回っている。
ため息をひとつついて、周りを見回す。オフィスにはもう誰もいなくて、あたしの机の上だけ電気がついている。
「……んーーっ……つっかれたーぁ」
あたしは軽く伸びをして、縛っていた髪を解いた。ベストを脱いで、椅子の背に掛ける。
まずブラウスの上から、両手でそっと胸を揉む。ゆっくり、ゆっくり。
「……ん……んん……」
なんか我ながら、恥ずかしい。あたしは一人でいったい何やってるんだろうと、理性が演技の邪魔をする。それから、(ってか、一人じゃなかった……)と思い至り、更に恥ずかしくなる。
監視カメラとは別に、佐伯のカメラがあたしを撮っているのだ。
「監視カメラに俺が写るわけにいかないから、監視カメラだけのシーンと俺が撮るシーンを足す分、ちょっと尺長めに演じてくれ」と、事前に説明を受けていた。
佐伯が、カメラを持って近付いてくる。あたしは佐伯のカメラを見ないようにして、胸を揉み続ける。
「……んん……ん……んんっ……」
徐々に躰が熱くなっていく。
「ん……はァッ……」
カメラがあたしの顔に寄ってきて、はじめてあたしはレンズを見た。
「――っ、はぁんっ……!」
思わず大きな吐息が漏れる。脚が、爪先まで硬直するのが分かる。
(恥ずかしい――)
そう思えば思うほど、どうしようもなく呼吸が速くなる。
あたしはブラウスのボタンを外して、中に手を入れた。
あらかじめノーブラにしていたので、しっとりしたおっぱいがふるるんと飛び出す。
あたしはそれをまた揉んで、柔らかく潰して、時々乳首をつまんでみたりする。
佐伯が一旦離れて、遠くから合図を出したので、あたしはいよいよスカートに手を伸ばした。
スカートをまくりあげて、ショーツの上から割れ目をなぞる。それを監視カメラが捉えている――はずだ。
再び合図があり、あたしはショーツを脱いだ。それを丁寧に畳み、引き出しの中に入れる。
その時。
プルルルルル……プルルルルル……プルルルルル……プルルルルル……
少し離れた席で電話が鳴った。
あたしはショーツを履かないまま、スカートを下ろして席を立ち、電話を取る。
「あ、お世話になっております。はい、はい、三浦はもう退社しております。はい、失礼いたします」
電話を切って、席に戻る。
佐伯のカメラがすぐ近くで回っている。あたしはカメラに向かって局部が見えるように座り、手でそこを慰める。
そこはもう、濡れていた。
「ん……っ、あんっ……んんっ……」
自分の指に悶えるあたしを、無表情のカメラが撮っている。
(まるで佐伯さんに調教されてるみたいだ――)
そう思った瞬間、あたしの中からトロリと液が溢れた。
「ゃあん……っ」
思わず片膝を抱え上げる。きちんと座っているのが難しくて、ずるずるとずり落ちて椅子の上で悶えた。
佐伯がまた合図した。
あたしは震える手でカタカタと引き出しを開けると、中に入っていたピンクローターを出した。
スイッチを入れると、静かなオフィスに小さな振動音が鳴る。
あたしはカメラから見えるように両脚を開いて椅子に座り、指で陰唇を広げて、クリトリスにローターを押し当てた。
「あんっ!」
痺れるような快感に、腰がびくんと跳ね上がった。
「ああ……ああん……やあーん……」
蜜がとろとろと際限なく溢れてくる。快楽と羞恥に蕩けるあたしの目の前で、佐伯がカメラを回している。
(こんなの……こんなのダメ……感じるに決まってる……)
あたしはもう泣きそうなくらい、官能の波と戦っていた。
「お疲れさんだねェ、こんなに遅くまで」
「――!!」
突然、男の声がして、あたしは文字通り飛び上がった。
警備員が、暗い廊下に向かって開いたドアの前に立っている。
「あ、あのっ」
あたしは慌ててブラウスの前を片手で押さえ、反対の手でスカートを引っ張り下ろす。
警備員はずかずかと詰め寄ってくる。
「何してたの?ねェ、お姉さん」
「いえ、その、残業で……」
「クククッ、お姉さんね、あそこから丸見えだったよォー」
警備員が監視カメラを指差す。あたしもカメラを見上げて、さも驚いたような素振りをする。
「ひとりじゃ寂しいでしょォー?ほら、俺が相手してやるよ」
そう言うなり、警備員はあたしのことを抱きすくめた。
「きゃあっ、いや、やめてくださいっ……」
「ん?あ、そうかい?いいんだよ?監視カメラの映像、報告してもねェ」
「……っ!」
「ほらほら、分かったらちょっと大人しくしてさ……夜は長いんだ、楽しもうぜェ」
「やぁ―――……」
警備員はあたしを椅子に座らせると、自分も向かい合って椅子に座った。
「ほら、まずはさっきの続きだ。見せてくれよ……淫乱なOLさんがオナってるところをさ……」
「うっ……ひくっ……ひっ……」
あたしは涙を流しながら、震える手で要求に応える。
「指、挿れろよ」
命令されて、まず中指をそこにうずめた。
「ん……っ」
クチュ……クチュ……と淫靡な音が、夜のオフィスに響く。
「お、いいもんがあるじゃない」
警備員は、デスクに転がったピンクローターを見つけてスイッチを入れる。
「いや……それは……やぁあっ!」
ピンクローターをクリトリスに押し付けられて、あたしは叫んだ。
「ほらほら、脚閉じちゃダメだよォー、気持ちよくしてあげるからねェ」
両脚の太腿を押し広げられ、あたしは椅子の背もたれにしがみついた。
警備員はローターの振動を最大にして、クリトリスをぐりぐり責め立てる。
「やあっ、ああ、やああ!」
涙で滲んだ警備員の向こうから、佐伯があたしを撮っている。
散々陰核を苛んだ挙げ句に、警備員はローターを膣に沈めた。
「んくっ……」
プルルルルル……プルルルルル……
また、電話が鳴った。
「おい、お姉さん、電話だよ。出なよ」
あたしはよろよろと立ち上がった。
「これ、挿れたまま出てみてよ」
「え、それは、ちょっと……」
「ほら、早く出ろって」
警備員はあたしを追い立てて、電話のあるデスクまで行く。
「もしもし……」
電話は、佐伯が鳴らす段取りになっていた。出た後は台本通りだ。佐伯は撮影に戻ることになっている。
「お疲れさまです……はい……はい……え?」
『おい、お前さ、もしかして俺に撮られるの嫌なの?』
「あ……え……?あんっ!」
後ろから、警備員が、ローターが入ったままのあたしの膣に、ペニスを挿入した。
「えと、ご用件を……くぅっ……」
『なぁ』
あたしは台本と演技と、なぜか電話の向こうで話している佐伯とで、頭の中がぐるぐる混乱する。
『なぁ、嫌なのか?』
「ですからそちらに関しましては以前に申し上げたとおりですね!」
あたしは、押し寄せる快感の合間を縫って、台本にないセリフを早口で言い放った。
『そうか』
「はい、そうです。……んくっ」
警備員のペニスが、あたしの奥にローターを押し込む。
しかしこの電話はなんなんだろう。佐伯は何かを察してくれたんだろうか。……今頃?
『いいかよく聞け。そのデスクにカメラ置いてあるだろ』
「はい、あんっ」
あたしは警備員に突き上げられながら、カメラの位置を確認した。
『それ、回したままだから、モニターのところを自分の方に向けろ。それでフレームからお前の顔がはみ出ないようにうまいこと調整しろ。できるか?』
「はい、やあんっ」
カメラのモニターをくるりと回転させると、後背位で犯されている自分の顔がアップになった。
自分の顔を観ながらセックスするって、それはそれでどうかと思ったが、これ以上佐伯に撮られるよりましだ。
『じゃ、俺はタバコ吸ってくるから』
「はい、かしこまりました。失礼します……」
カチャリ、と受話器を置くと、警備員は勢いよくピストンを始めた。
「あっ、あんっ、ああん、あんっ!」
モニターには、後ろから突っ込まれて揺さぶられるあたしの顔が映っている。それはびっくりするほどいやらしい顔に見えた。
ローターの振動が、躰の奥深くでペニスに翻弄されている。
「んっ……ああんっ、あんっ、あああ……」
局部をアップで撮るカメラがいないので、射精する必要がない。警備員は達した演技をして、ペニスを抜いた。
*****
シャワーを浴びて着替えると、佐伯がデータをPCに入れているところだった。
「お疲れさまです。撮影、終わったんですか?」
確かあの後、警備員室のカットを撮影していたはずだ。
「ああ。……腹減ったな。ラーメンでも食いに行くか?」
事務所の近くのラーメン屋さんは、カウンターのみ8席の小さな店だ。
「醤油ふたつ、お待ち!」
あたしと佐伯はカウンター越しにラーメンを受け取る。
「いただきます」
声が揃う。
ラーメンを啜りながら、佐伯が言った。
「お前さ、何があったのか知らねえが、仕事は辞めるなよ」
「……AVの?」
「本業の方だ、バカ」
「でも、AVを本業にしたほうが稼げるって」
「誰が言ったんだ、そんなこと」
あたしはそれには答えなかった。なんとなく後ろめたい。
「十年で一生分稼ぐんなら別だけどな。売れるためにはテレビに売り込むとか色々あるけど、うちの事務所は小さいからなぁ……難しいよなぁ……」
佐伯はちょっと考えて、続ける。
「てか、金じゃねぇんだよ。こっちの世界にどっぷり浸かっちまうと、戻れなくなるから」
「普通の仕事に?」
「……あっちの仕事は、この世につなぎ止めておく糸みたいなもんだからな」
「この世って。大げさだよ」
あたしは少し笑った。
「大げさじゃない。お前はそれを男に求めるから、狂ってくんだ」
ずきんとした。
どういう意味?って聞き返そうとしたけど、言葉を選んでいるうちにラーメンを食べ終わってしまった。
さっきの話に戻る代わりに、あたしはふと浮かんだ疑問を口にしていた。
「ねぇ、佐伯さんて奥さんいるの?」
佐伯はぶほっ、と飲んでいた水を吹いた。
「……大丈夫?」
佐伯はえほっえほっとひとしきりむせた後、かすれた声で言った。
「うるせぇな。バツイチだよ」
「…………あー、なるほど……」
あたしは意味もなく納得してしまう。
「なんだよ、いまどき珍しかねぇだろ」
「まあ、そうですね……佐伯さん、こどもはいないの?」
ちょっと踏み込み過ぎかな、とは思ったけど、勢いで聞いてしまった。
佐伯は、低ーい低ーい声で、それでも答えてくれた。
「……娘が一人な」
「ごちそうさま」
また声を揃えて言って、店を出た。
佐伯は車なので、あたしを駅まで送って、改札前で別れる。
「じゃ、気をつけて帰れよ」
「はーい」
「まっすぐ帰るんだぞ!」
「あはは!佐伯さん、お父さんみたい!」
あたしは大きく手を振って、階段を駆け上がった。
「……バカか」
佐伯は小さく微笑って、踵を返した。
*****
車に乗ったところで、佐伯の電話が鳴った。
「――もしもし」
「龍二ぃー、最近調子良いらしいじゃねぇか」
「伊勢崎さん。……おかげさまで」
「あの話、考えてくれたかい?」
「えーっと……」
「とぼけんなよ。女優一人回せって話だよ」
「……今は、まだちょっと」
「あの子がいいなぁ」
「え?」
「ほら、今お前んとこにちょっとイカれた女がいるらしいじゃん?なんつったっけ」
電話の向こうから、かすかに伊勢崎のものではない声が聞こえてくる。
――約束……ここ……いれさせ……
――ぁんっ……
佐伯は耳を澄ます。何か、聞き覚えのあるような。
「そいつによぉ、お前に貸したぶんの金、ぜーんぶ稼がせようぜ。イカれた女なら何やっても悦ぶだろぁ?フィストでもハードSMでもやらせてよぉ、ズッタズタに――」
伊勢崎が言葉を切った。何かを思い出そうとしているようだ。
電話の向こうから聞こえてくる声が、少しだけ明瞭になった。
――すっごい……リカちゃん……ヤリまくった……のに、まだ感じ……
――あんっ……やあっ……
佐伯の心拍数が上がった。
「あー、思い出した。そうそう、ユリカって子だ」
伊勢崎のうしろの声が、大きくなる。
――やめて……っ、お願い、……やあんっ……
「何……なんですか?その声……伊勢崎さんのうしろから、あの、聞こえてくるんですけど」
焦りで声がかすれる。なんだ、この音声は。
「あー、これね。とある隠し撮りだよ。いいねェー、この子。こんなに嫌がってるのに、めちゃくちゃ感じちゃってェー」
「……すいません、その子はちょっと……」
「ああ?」
「いや、金に困ってる子じゃないんで、あんまりハードなのやんないんじゃないっすかねぇ」
「ないっすかねぇじゃねぇんだよ!やらせんだよ!最近いーい薬あんだぜぇ?それ回してやっからさァ。一発で骨抜きだぜ?得意だろ?お前、そういうのさ」
伊勢崎が大声でまくしたてる。
「……ちょっと……考えときます」
「ふざけんな。龍二てめぇ、いつまで待たせりゃ気が済むんだ?そうやってのらりくらりかわそうとしてんじゃねぇだろうな」
――やあ、あ、ああ、やぁぁっ!
――ああああ……!
盗撮したという声は、いまや悲痛に泣き叫んでいた。
佐伯はいたたまれなくなった。これ以上は聞くに堪えない。
「……すいません。明日また連絡します。必ず」
「頼むよぉー?佐伯ちゃーん」
通話が切れる直前。
――ね、挿れていい?ユリカちゃん。
佐伯は憤りに任せてハンドルに拳を叩きつけた。
「うるせぇな。今こーゆーの流行ってんだろ」
今日は撮影前に宣材写真を撮り直すというので事務所に来ていた。この写真でAVメーカーに営業をかけ、出演のオファーをもらうのだ。
珍しく事前に台本をもらったので、一応パラパラと目を通している。
「ほい、これ衣装。メイクしてもらってきて」
佐伯が放って寄越した紺色の事務員の制服に着替え、この事務所に一人だけいるヘアメイクの杉田さんにメイクをしてもらう。杉田さんは薄い金髪で、顔にまでピアスしている女の子だ。
事務所の一室が小さなスタジオになっている。今日はブラインドが降りた窓際に、事務机と椅子が置いてある。
「ちょっと建込みのスタジオ押さえられなかったから、ここで撮っちゃうから」
「……佐伯さんが?」
「俺が撮っちゃ悪いかよ」
佐伯はカメラを準備しながら言う。佐伯の肩書は宣伝部長。カメラマンでも監督でもないはずなのに、なぜか機材の扱いが手慣れている。
「じゃ、撮るぞ―」
パシャ。
「――ねぇ佐伯さん、あたしが今の仕事辞めてAVだけで稼いだら、もっとギャラもらえるのかな?」
「あー?ああ、まあ、そうだろうなァ……ちょっと笑って」
パシャ。
「机に座って、脚組んで」
あたしは言われたとおりにポーズを取る。
パシャ。
「……なんだお前、金いるのか?」
パシャ。
「そういうわけじゃないけど……」
「次、後ろ向いて、片ヒザ机に上げて、顔だけこっち」
言われたとおりにすると、タイトスカートがまくれ上がって、ほとんどお尻が見えそうだ。
「笑って」
――マジ?それ、安いって。
この間聖さんに言われた言葉が、頭に染み付いて離れない。
「……笑えって」
「あ、はい」
パシャ。
やばい、考え事が顔に出てた。
「シャツのボタン外して、ちょっとエロい顔して」
パシャ。パシャ。
「もっと」
もっと、って。
なんかわざとらしいなぁ。なんて思いながら、流し目っぽくしてみたり、口を半開きにしてみたりする。これ、冷静な目で見たらだいぶアホ面なんじゃないか。
「お前、親とかどうしてんの?」
「……えっ?」
唐突に聞かれて、あたしは面食らった。
「じゃ、服全部脱いで」
「……ちょっと、親の話振っといて、服脱げって、どうなの」
「あ、すまん」
佐伯はカメラのモニターから顔を上げて、謝った。
「父親はいなくて、……母はずっと入院してます」
あたしはブラとショーツだけになって、また数ポーズ撮影する。
「なんだ、お母さんの調子が悪いのか?」
そう言うと、佐伯はカメラを置いた。
「え?なんで?」
あたしは佐伯の言っていることが理解できずに聞き返した。
「いや、金がいるっていうから」
佐伯はすたすたとこちらに近寄ってくると、机に浅く腰を預けていたあたしの手を掴む。
「……手は、ここ。脚は……こうかな」
佐伯はあたしの手の置き場所をわずかに変え、片脚の膝を曲げて、机の上に置いた。ショーツをはいてはいるものの、股間を真正面に開いた形になって、あたしは初めてどきっとした。
「あ、いやいや、いますぐお金が必要とか、そういうわけじゃないんです。ただちょっと気になって――」
至近距離に佐伯がいる。
身体の芯がきゅうっとなるのを感じる。
「で、いくら欲しいんだ?」
「だから、ほんとに……いいんです……」
佐伯はあたしの顔のすぐ前で、あたしの髪の毛束を後ろに流している。
「そうなのか?必要なら言えよ?」
「……そしたら仕事増やしてくれるんですか?」
「それはちょっと考えるよ。でも本業もあるし、あんまり無茶はできないだろ」
そう言いながら、佐伯はブラのストラップの位置をずらしている。佐伯の息が首筋にかかる。
ちょっと考える、ってどういうことだろう。
――ヤバい筋に借金もあるみたいだし――。
ああ、今日は、聖さんの言葉がどこまでも追いかけてくるみたいだ。
「やっぱこれ、ないほうがいいな」
「やん」
佐伯はブラを外してしまった。あたしは咄嗟に両腕で胸を押さえた。
再び後ろに下がってカメラを構える。
「お、いいじゃん。その表情」
*****
「え、ちょっと待って、ここで?事務所内で撮るんですか!?」
一時間後、あたしはビデオカメラを手にした佐伯に、猛烈に抗議していた。
「だから言ったじゃねえか、スタジオ押さえらんなかったんだって」
「それはスチールのことでしょ!?」
「ああ、すまん本編もなんだ。ネット配信用の短いやつだからそんなに金かけられなくて」
「えええ!」
「だから撮影も俺が」
「えええええ!?」
「なんだよ。大騒ぎするなよ、こんくらいで。なにが嫌なんだよ?」
「だって……」
あたしは言葉に詰まった。
佐伯に、撮影してる時の自分を見られたくない、なんて言えない。だってそもそも撮り終わったものは全部目を通しているはずだし、なにが嫌なのか自分でも説明できない。
「こないだ電車でも俺が撮ったじゃねえか」
(そのときにヤだって気付いたんだよっ)……とは、口が裂けても言えない。
「とにかく撮るから!警備員さん、よろしく!」
「うぃっす!」
いつの間にか、警備員役のおじさんもしっかりスタンバイしている。
「じゃ、そういうことで。ほい、そこ座って。いくよ、キュー!」
「~~~~~~~~っ!!」
あたしは広げたノートパソコンに向かって、でたらめにタイピングしている。
そんなあたしを、天井に設置された監視カメラ(という設定の小型カメラ)が写している。このカメラの画像は警備員室に繋がっているという設定。警備員室のカットは後から撮り、編集でつなげるらしい。
タン!とEnterキーを叩き、時計を見る。時計は夜の九時を回っている。
ため息をひとつついて、周りを見回す。オフィスにはもう誰もいなくて、あたしの机の上だけ電気がついている。
「……んーーっ……つっかれたーぁ」
あたしは軽く伸びをして、縛っていた髪を解いた。ベストを脱いで、椅子の背に掛ける。
まずブラウスの上から、両手でそっと胸を揉む。ゆっくり、ゆっくり。
「……ん……んん……」
なんか我ながら、恥ずかしい。あたしは一人でいったい何やってるんだろうと、理性が演技の邪魔をする。それから、(ってか、一人じゃなかった……)と思い至り、更に恥ずかしくなる。
監視カメラとは別に、佐伯のカメラがあたしを撮っているのだ。
「監視カメラに俺が写るわけにいかないから、監視カメラだけのシーンと俺が撮るシーンを足す分、ちょっと尺長めに演じてくれ」と、事前に説明を受けていた。
佐伯が、カメラを持って近付いてくる。あたしは佐伯のカメラを見ないようにして、胸を揉み続ける。
「……んん……ん……んんっ……」
徐々に躰が熱くなっていく。
「ん……はァッ……」
カメラがあたしの顔に寄ってきて、はじめてあたしはレンズを見た。
「――っ、はぁんっ……!」
思わず大きな吐息が漏れる。脚が、爪先まで硬直するのが分かる。
(恥ずかしい――)
そう思えば思うほど、どうしようもなく呼吸が速くなる。
あたしはブラウスのボタンを外して、中に手を入れた。
あらかじめノーブラにしていたので、しっとりしたおっぱいがふるるんと飛び出す。
あたしはそれをまた揉んで、柔らかく潰して、時々乳首をつまんでみたりする。
佐伯が一旦離れて、遠くから合図を出したので、あたしはいよいよスカートに手を伸ばした。
スカートをまくりあげて、ショーツの上から割れ目をなぞる。それを監視カメラが捉えている――はずだ。
再び合図があり、あたしはショーツを脱いだ。それを丁寧に畳み、引き出しの中に入れる。
その時。
プルルルルル……プルルルルル……プルルルルル……プルルルルル……
少し離れた席で電話が鳴った。
あたしはショーツを履かないまま、スカートを下ろして席を立ち、電話を取る。
「あ、お世話になっております。はい、はい、三浦はもう退社しております。はい、失礼いたします」
電話を切って、席に戻る。
佐伯のカメラがすぐ近くで回っている。あたしはカメラに向かって局部が見えるように座り、手でそこを慰める。
そこはもう、濡れていた。
「ん……っ、あんっ……んんっ……」
自分の指に悶えるあたしを、無表情のカメラが撮っている。
(まるで佐伯さんに調教されてるみたいだ――)
そう思った瞬間、あたしの中からトロリと液が溢れた。
「ゃあん……っ」
思わず片膝を抱え上げる。きちんと座っているのが難しくて、ずるずるとずり落ちて椅子の上で悶えた。
佐伯がまた合図した。
あたしは震える手でカタカタと引き出しを開けると、中に入っていたピンクローターを出した。
スイッチを入れると、静かなオフィスに小さな振動音が鳴る。
あたしはカメラから見えるように両脚を開いて椅子に座り、指で陰唇を広げて、クリトリスにローターを押し当てた。
「あんっ!」
痺れるような快感に、腰がびくんと跳ね上がった。
「ああ……ああん……やあーん……」
蜜がとろとろと際限なく溢れてくる。快楽と羞恥に蕩けるあたしの目の前で、佐伯がカメラを回している。
(こんなの……こんなのダメ……感じるに決まってる……)
あたしはもう泣きそうなくらい、官能の波と戦っていた。
「お疲れさんだねェ、こんなに遅くまで」
「――!!」
突然、男の声がして、あたしは文字通り飛び上がった。
警備員が、暗い廊下に向かって開いたドアの前に立っている。
「あ、あのっ」
あたしは慌ててブラウスの前を片手で押さえ、反対の手でスカートを引っ張り下ろす。
警備員はずかずかと詰め寄ってくる。
「何してたの?ねェ、お姉さん」
「いえ、その、残業で……」
「クククッ、お姉さんね、あそこから丸見えだったよォー」
警備員が監視カメラを指差す。あたしもカメラを見上げて、さも驚いたような素振りをする。
「ひとりじゃ寂しいでしょォー?ほら、俺が相手してやるよ」
そう言うなり、警備員はあたしのことを抱きすくめた。
「きゃあっ、いや、やめてくださいっ……」
「ん?あ、そうかい?いいんだよ?監視カメラの映像、報告してもねェ」
「……っ!」
「ほらほら、分かったらちょっと大人しくしてさ……夜は長いんだ、楽しもうぜェ」
「やぁ―――……」
警備員はあたしを椅子に座らせると、自分も向かい合って椅子に座った。
「ほら、まずはさっきの続きだ。見せてくれよ……淫乱なOLさんがオナってるところをさ……」
「うっ……ひくっ……ひっ……」
あたしは涙を流しながら、震える手で要求に応える。
「指、挿れろよ」
命令されて、まず中指をそこにうずめた。
「ん……っ」
クチュ……クチュ……と淫靡な音が、夜のオフィスに響く。
「お、いいもんがあるじゃない」
警備員は、デスクに転がったピンクローターを見つけてスイッチを入れる。
「いや……それは……やぁあっ!」
ピンクローターをクリトリスに押し付けられて、あたしは叫んだ。
「ほらほら、脚閉じちゃダメだよォー、気持ちよくしてあげるからねェ」
両脚の太腿を押し広げられ、あたしは椅子の背もたれにしがみついた。
警備員はローターの振動を最大にして、クリトリスをぐりぐり責め立てる。
「やあっ、ああ、やああ!」
涙で滲んだ警備員の向こうから、佐伯があたしを撮っている。
散々陰核を苛んだ挙げ句に、警備員はローターを膣に沈めた。
「んくっ……」
プルルルルル……プルルルルル……
また、電話が鳴った。
「おい、お姉さん、電話だよ。出なよ」
あたしはよろよろと立ち上がった。
「これ、挿れたまま出てみてよ」
「え、それは、ちょっと……」
「ほら、早く出ろって」
警備員はあたしを追い立てて、電話のあるデスクまで行く。
「もしもし……」
電話は、佐伯が鳴らす段取りになっていた。出た後は台本通りだ。佐伯は撮影に戻ることになっている。
「お疲れさまです……はい……はい……え?」
『おい、お前さ、もしかして俺に撮られるの嫌なの?』
「あ……え……?あんっ!」
後ろから、警備員が、ローターが入ったままのあたしの膣に、ペニスを挿入した。
「えと、ご用件を……くぅっ……」
『なぁ』
あたしは台本と演技と、なぜか電話の向こうで話している佐伯とで、頭の中がぐるぐる混乱する。
『なぁ、嫌なのか?』
「ですからそちらに関しましては以前に申し上げたとおりですね!」
あたしは、押し寄せる快感の合間を縫って、台本にないセリフを早口で言い放った。
『そうか』
「はい、そうです。……んくっ」
警備員のペニスが、あたしの奥にローターを押し込む。
しかしこの電話はなんなんだろう。佐伯は何かを察してくれたんだろうか。……今頃?
『いいかよく聞け。そのデスクにカメラ置いてあるだろ』
「はい、あんっ」
あたしは警備員に突き上げられながら、カメラの位置を確認した。
『それ、回したままだから、モニターのところを自分の方に向けろ。それでフレームからお前の顔がはみ出ないようにうまいこと調整しろ。できるか?』
「はい、やあんっ」
カメラのモニターをくるりと回転させると、後背位で犯されている自分の顔がアップになった。
自分の顔を観ながらセックスするって、それはそれでどうかと思ったが、これ以上佐伯に撮られるよりましだ。
『じゃ、俺はタバコ吸ってくるから』
「はい、かしこまりました。失礼します……」
カチャリ、と受話器を置くと、警備員は勢いよくピストンを始めた。
「あっ、あんっ、ああん、あんっ!」
モニターには、後ろから突っ込まれて揺さぶられるあたしの顔が映っている。それはびっくりするほどいやらしい顔に見えた。
ローターの振動が、躰の奥深くでペニスに翻弄されている。
「んっ……ああんっ、あんっ、あああ……」
局部をアップで撮るカメラがいないので、射精する必要がない。警備員は達した演技をして、ペニスを抜いた。
*****
シャワーを浴びて着替えると、佐伯がデータをPCに入れているところだった。
「お疲れさまです。撮影、終わったんですか?」
確かあの後、警備員室のカットを撮影していたはずだ。
「ああ。……腹減ったな。ラーメンでも食いに行くか?」
事務所の近くのラーメン屋さんは、カウンターのみ8席の小さな店だ。
「醤油ふたつ、お待ち!」
あたしと佐伯はカウンター越しにラーメンを受け取る。
「いただきます」
声が揃う。
ラーメンを啜りながら、佐伯が言った。
「お前さ、何があったのか知らねえが、仕事は辞めるなよ」
「……AVの?」
「本業の方だ、バカ」
「でも、AVを本業にしたほうが稼げるって」
「誰が言ったんだ、そんなこと」
あたしはそれには答えなかった。なんとなく後ろめたい。
「十年で一生分稼ぐんなら別だけどな。売れるためにはテレビに売り込むとか色々あるけど、うちの事務所は小さいからなぁ……難しいよなぁ……」
佐伯はちょっと考えて、続ける。
「てか、金じゃねぇんだよ。こっちの世界にどっぷり浸かっちまうと、戻れなくなるから」
「普通の仕事に?」
「……あっちの仕事は、この世につなぎ止めておく糸みたいなもんだからな」
「この世って。大げさだよ」
あたしは少し笑った。
「大げさじゃない。お前はそれを男に求めるから、狂ってくんだ」
ずきんとした。
どういう意味?って聞き返そうとしたけど、言葉を選んでいるうちにラーメンを食べ終わってしまった。
さっきの話に戻る代わりに、あたしはふと浮かんだ疑問を口にしていた。
「ねぇ、佐伯さんて奥さんいるの?」
佐伯はぶほっ、と飲んでいた水を吹いた。
「……大丈夫?」
佐伯はえほっえほっとひとしきりむせた後、かすれた声で言った。
「うるせぇな。バツイチだよ」
「…………あー、なるほど……」
あたしは意味もなく納得してしまう。
「なんだよ、いまどき珍しかねぇだろ」
「まあ、そうですね……佐伯さん、こどもはいないの?」
ちょっと踏み込み過ぎかな、とは思ったけど、勢いで聞いてしまった。
佐伯は、低ーい低ーい声で、それでも答えてくれた。
「……娘が一人な」
「ごちそうさま」
また声を揃えて言って、店を出た。
佐伯は車なので、あたしを駅まで送って、改札前で別れる。
「じゃ、気をつけて帰れよ」
「はーい」
「まっすぐ帰るんだぞ!」
「あはは!佐伯さん、お父さんみたい!」
あたしは大きく手を振って、階段を駆け上がった。
「……バカか」
佐伯は小さく微笑って、踵を返した。
*****
車に乗ったところで、佐伯の電話が鳴った。
「――もしもし」
「龍二ぃー、最近調子良いらしいじゃねぇか」
「伊勢崎さん。……おかげさまで」
「あの話、考えてくれたかい?」
「えーっと……」
「とぼけんなよ。女優一人回せって話だよ」
「……今は、まだちょっと」
「あの子がいいなぁ」
「え?」
「ほら、今お前んとこにちょっとイカれた女がいるらしいじゃん?なんつったっけ」
電話の向こうから、かすかに伊勢崎のものではない声が聞こえてくる。
――約束……ここ……いれさせ……
――ぁんっ……
佐伯は耳を澄ます。何か、聞き覚えのあるような。
「そいつによぉ、お前に貸したぶんの金、ぜーんぶ稼がせようぜ。イカれた女なら何やっても悦ぶだろぁ?フィストでもハードSMでもやらせてよぉ、ズッタズタに――」
伊勢崎が言葉を切った。何かを思い出そうとしているようだ。
電話の向こうから聞こえてくる声が、少しだけ明瞭になった。
――すっごい……リカちゃん……ヤリまくった……のに、まだ感じ……
――あんっ……やあっ……
佐伯の心拍数が上がった。
「あー、思い出した。そうそう、ユリカって子だ」
伊勢崎のうしろの声が、大きくなる。
――やめて……っ、お願い、……やあんっ……
「何……なんですか?その声……伊勢崎さんのうしろから、あの、聞こえてくるんですけど」
焦りで声がかすれる。なんだ、この音声は。
「あー、これね。とある隠し撮りだよ。いいねェー、この子。こんなに嫌がってるのに、めちゃくちゃ感じちゃってェー」
「……すいません、その子はちょっと……」
「ああ?」
「いや、金に困ってる子じゃないんで、あんまりハードなのやんないんじゃないっすかねぇ」
「ないっすかねぇじゃねぇんだよ!やらせんだよ!最近いーい薬あんだぜぇ?それ回してやっからさァ。一発で骨抜きだぜ?得意だろ?お前、そういうのさ」
伊勢崎が大声でまくしたてる。
「……ちょっと……考えときます」
「ふざけんな。龍二てめぇ、いつまで待たせりゃ気が済むんだ?そうやってのらりくらりかわそうとしてんじゃねぇだろうな」
――やあ、あ、ああ、やぁぁっ!
――ああああ……!
盗撮したという声は、いまや悲痛に泣き叫んでいた。
佐伯はいたたまれなくなった。これ以上は聞くに堪えない。
「……すいません。明日また連絡します。必ず」
「頼むよぉー?佐伯ちゃーん」
通話が切れる直前。
――ね、挿れていい?ユリカちゃん。
佐伯は憤りに任せてハンドルに拳を叩きつけた。
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