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07、悪さを楽しむ美紗は誰にも止められない
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河太郎と並んで通りを見下ろしていた美紗は、地元中学の制服姿の女の子を指さし、
「あの女! 去年クラブであたしをいじめ抜いたやつ!」
「こらしめたい、こらしめたい!」
河太郎は小躍りしだす。
「黒飛さーん、行きましょう!」
魔王を頭に乗せて、黒飛がぴょこぴょこ駆けてくる。ガラスの割れた窓から今にも飛び立とうというとき、真希がその尻尾をむんずとつかんだ。
「お前は気持ち悪いんだよ」
と、わざとひどいことを言って、飛び立とうとする黒飛をためらわせ、
「これはどうしてくれるの? ねえ、嫌われ者」
と、美紗の髪を引っ張った。その手には、海賊になったりオンナになったり夏目漱石になったりしている岡野くんの写真。
「トイレの壁にでも貼っておけば?」
真希は不良みたいに舌打ちして、なめんなよ、と低く呟いた。美紗はそのすきに、革袋から「黒いルビー」を取り出す。
「そいつは危ねえですよお」
河太郎の制止に、
「簡単な願いならいいんでしょ?」
とウインクひとつ、天井へ投げあげた。
「真希の脳天直撃だあっ!」
美紗の意志の力を具象化するように、黒いルビーは赤く輝き、考えられぬスピードで真希の真上に落ちてきた。明美が両手で顔を覆い、真希は悲鳴をあげるまもなく失神した。
「やったー、あたし強い!」
「ばんざいばんざい!」
美紗は河太郎と、ぱんと両手を打ちあわせ、足下に転がってきた黒いルビーを袋にしまう。
「ゆくぞ」
と魔王のかけ声ひとつ、黒飛は夏空に舞い上がる。
美紗の恨みをかっている中学生、島田恵の大切なものは、去年の家族旅行の際、免税店で買ったブランド化粧品だった。特別な日のためにとってあったのか、ただもったいなかっただけか、封も開けていない口紅で、美紗と河太郎はブロック塀に落書きしだす。黒飛もくちばしで口紅をつかんで、落書きに参加する。
この大騒動の犯人が美紗と分かり、見知らぬおばさんが、おせっかいにも説教など始めたので、彼女の大切なマルチーズも口紅の被害に遭った。
次第に恨みのあるなし関わらず楽しんで悪さを始めた美紗は、もう誰にも止められない。低空飛行を繰り返す黒飛にまたがって、
「あたしはこわ~い魔王様なんだぞ! 逆らうやつは黒いルビーで直撃だ!」
「私の宝石を返して」とか、「俺のロレックス返せ!」などと詰め寄ってくる人々のすぐ上を飛び回る。教室では無視を決め込んでいるクラスメイトから、
「美紗ちゃん、あたしたち友だちでしょ」
なんて言われて、美紗は思いっきり黒いルビーを投げつけた。
「いいぞいいぞ。美紗はよい弟子だ」
黒飛の頭の上で感心する魔王に、美紗は笑顔を向ける。
日が暮れる頃には、町はすっかり大混乱だ。
「そろそろ城へ帰るか」
魔王の言葉に、美紗は素直にうなずいた。赤く染まった空の真ん中で黒飛は急回転し、川へと長く伸びた橋桁の影を目指して急降下。人々の驚きと悲鳴だけをあとに残して、あっという間に魔王の国へ移動した。
「あの女! 去年クラブであたしをいじめ抜いたやつ!」
「こらしめたい、こらしめたい!」
河太郎は小躍りしだす。
「黒飛さーん、行きましょう!」
魔王を頭に乗せて、黒飛がぴょこぴょこ駆けてくる。ガラスの割れた窓から今にも飛び立とうというとき、真希がその尻尾をむんずとつかんだ。
「お前は気持ち悪いんだよ」
と、わざとひどいことを言って、飛び立とうとする黒飛をためらわせ、
「これはどうしてくれるの? ねえ、嫌われ者」
と、美紗の髪を引っ張った。その手には、海賊になったりオンナになったり夏目漱石になったりしている岡野くんの写真。
「トイレの壁にでも貼っておけば?」
真希は不良みたいに舌打ちして、なめんなよ、と低く呟いた。美紗はそのすきに、革袋から「黒いルビー」を取り出す。
「そいつは危ねえですよお」
河太郎の制止に、
「簡単な願いならいいんでしょ?」
とウインクひとつ、天井へ投げあげた。
「真希の脳天直撃だあっ!」
美紗の意志の力を具象化するように、黒いルビーは赤く輝き、考えられぬスピードで真希の真上に落ちてきた。明美が両手で顔を覆い、真希は悲鳴をあげるまもなく失神した。
「やったー、あたし強い!」
「ばんざいばんざい!」
美紗は河太郎と、ぱんと両手を打ちあわせ、足下に転がってきた黒いルビーを袋にしまう。
「ゆくぞ」
と魔王のかけ声ひとつ、黒飛は夏空に舞い上がる。
美紗の恨みをかっている中学生、島田恵の大切なものは、去年の家族旅行の際、免税店で買ったブランド化粧品だった。特別な日のためにとってあったのか、ただもったいなかっただけか、封も開けていない口紅で、美紗と河太郎はブロック塀に落書きしだす。黒飛もくちばしで口紅をつかんで、落書きに参加する。
この大騒動の犯人が美紗と分かり、見知らぬおばさんが、おせっかいにも説教など始めたので、彼女の大切なマルチーズも口紅の被害に遭った。
次第に恨みのあるなし関わらず楽しんで悪さを始めた美紗は、もう誰にも止められない。低空飛行を繰り返す黒飛にまたがって、
「あたしはこわ~い魔王様なんだぞ! 逆らうやつは黒いルビーで直撃だ!」
「私の宝石を返して」とか、「俺のロレックス返せ!」などと詰め寄ってくる人々のすぐ上を飛び回る。教室では無視を決め込んでいるクラスメイトから、
「美紗ちゃん、あたしたち友だちでしょ」
なんて言われて、美紗は思いっきり黒いルビーを投げつけた。
「いいぞいいぞ。美紗はよい弟子だ」
黒飛の頭の上で感心する魔王に、美紗は笑顔を向ける。
日が暮れる頃には、町はすっかり大混乱だ。
「そろそろ城へ帰るか」
魔王の言葉に、美紗は素直にうなずいた。赤く染まった空の真ん中で黒飛は急回転し、川へと長く伸びた橋桁の影を目指して急降下。人々の驚きと悲鳴だけをあとに残して、あっという間に魔王の国へ移動した。
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