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第六章 レッドフィールド伯爵家の嵐

3:行方不明

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ローズが出て行った翌日、リチャードはローズに手紙を書いた。




『せっかくだから久しぶりに実家でゆっくりすると良い』




そういった内容の手紙だ。

しかし、それを受けたローズの実家からの連絡に、リチャードは驚くこととなる。

 


『ローズは帰って来ていない』

 


そう連絡があったのだ。



リチャードは、”ローズを探すように”とすぐに指示を出した。
そして、頭を垂れながら後悔の波に押し寄せられている。

「ああ、何であのような冷たい言い方をしてしまったのだろう? ローズに何かあったら……」

キャサリンに冷たくされてショックを受けていたローズに、更に追い打ちをかけたことを、今更後悔した。
そんなリチャードを、リリカとキャサリンは見守るしかなかった。
二人はローズの心配というよりも、リチャードが心配だったのだ……



「旦那様! ”奥様が男と歩いている所を見た”という者が、何人かいました! 皆が言う男の特徴も一致しています!」

「男だって!? ……一体誰だ?」

「誰か知人を頼ったのでしょうね。お父様、心当たりはないのですか?」

リリカの問いに、リチャードはショックを受けた顔で首を横に振った。
皆目見当もつかないようだ。

「それと、宝石商で奥様が高価な宝石を買われたそうです……」

「宝石……? そんな金をどこで……?」

ずっと項垂れていたリチャードは、そこで"はっ"とした顔をして、勢いよく立ち上がった。

「お父様!?」

「ちょっと待っていてくれ!」

リチャードは部屋を飛び出して行ったのだった……






約30分後に戻ってきたリチャードは、更に頭を下げて重い足取りだ。
リリカや執事長たちが待っている部屋に入ると、膝から崩れ落ちて床に座り込んだ。

「お父様!?」

リリカとキャサリンは、慌てて側に駆け寄る。

「……金が……」

「えっ」

「金がなくなっている……」

その場にいた全員が固まった。

「実は、屋敷内の二か所に隠し金庫があるのだ。場所も暗証番号も、私とローズのみが知っている。それが……二つとも空だった」

「そんな……」

「そう言えばあの日、奥様は一度出て行かれた後、数時間後にもう一度戻って来られました。そして一時間もせずに、また出て行かれました。……大荷物を馬車へ積み込まれて……」

執事長の言葉に、リチャードは更に顔面蒼白になる。
ローズが金を運び出したことは明白だった。

「……大変なこととなった。今年は領地の農作物が不作なのだ。だから肥料を配ったり、食糧を配給したり、冬支度も……。その金が全部なくなった。……この屋敷の金はもちろん、領地に、領民に使う金がなくなってしまった……」

「お母様を探し出して! 行ける者は全員捜索に出て!」

リリカのひと声で、執事長は部屋を飛び出していったのだった……




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