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1960年代

鉄腕アトム

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 テレビアニメ、その原点にして頂点、「鉄腕アトム」 (モノクロ版)です!

 原点と書きましたが実は日本初のテレビアニメは「鉄腕アトム」ではなく、1958年(昭和33年)に日本テレビで放映された「もぐらのアバンチュール」です。

 この「もぐらのアバンチュール」、誰も白黒テレビも持っていない時代なのになんとカラー作品でした。

 ちなみに主人公のもぐらの声の出演をした歌手で女優の中島そのみさんは日本初のテレビアニメの声優ということになるのでは。

 中島そのみさんは後に「ちびっこ怪獣ヤダモン」というアニメの主人公「ヤダモン」役もしています。

 ところで「もぐらのアバンチュール」は一話だけのカラー放送の実験映像作品でしたから、日本初の連続テレビアニメはやはりこの「鉄腕アトム」です。

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 放映期間は1963年1月1日から1966年12月31日の全193話。

 元日に始まって大晦日に終わるなんて何かスゴイ!

 この頃の一般人は「アニメ」なんて言葉は知りませんでした。

 テレビのまんがだから「テレビまんが」と呼んでいました。

 局はフジテレビ、スポンサーは明治製菓。

 「鉄腕アトムシール」をオマケにつけた明治製菓の「マーブルチョコレート」は大ヒットしました。

 平均視聴率は30%を超え、この成功により日本はアニメ大国への道を突っ走るのです。

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 未来の日本、科学技術庁長官の天馬博士は交通事故で亡くなった息子のトビオの代わりとして、国をあげてトビオそっくりの超高性能の少年ロボットを作り、息子として育てます。

 でも、いつまでたっても成長しないという理由で、天馬博士はトビオを捨て、サーカス小屋に売り飛ばします。

 トビオはサーカス小屋で「アトム」とういう芸名で他のロボットと闘う見世物にされてしまいます。

 しかし、新任の科学技術庁長官のお茶ノ水博士が、ロボットに人権を与える運動をし、アトムを引き取って育ての親となり、アトムは人類とロボットの平和のために戦うのです。

 漫画の神様、手塚治虫先生の原作や著名なSF作家のシナリオによってあらゆるSF的ガジェットがちりばまれた1話完結の物語が毎週お茶の間に流されました。

 今観ると紙芝居のようなアニメですが、まあ、しばらく観てたら慣れますから一度観て下さい。

 とにかく面白く濃密なストーリーで作画を補おうとしたため、展開が早くて演出があっさりしているように感じるかも。

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第193回「地球最大の冒険」

 太陽黒点の異常活動のため地球は最後の日を迎えようとします。

 危険を察知した動物たちは北極や南極に逃げだします。

 人間たちはロケットで当てもなく宇宙に避難し、地球にはロボットだけが残されます。

 脳以外をロボット化した独裁者ナポリタン(ナポレオンみたいな姿)が世界征服のため、人間の留守中、地球を守っていたロボット大統領を破壊します。

 ロボット大統領は死の間際、世界一素晴らしいロボット、アトムに地球を守るようにお願いします。

 地球大統領となったアトムはまず煮えたぎった海をドライアイス・シャットで冷やします。

 次にみんなで火口に岩を積んで火山の噴火を防ぎます。

 そして突然現れたクラゲの化け物を塩を使って退治します。

 この辺りは過去のお話の「気体人間」、「地上最大のロボット」、「ゲルニカ」の回想シーンが使われ、いかにも最終回らしいお話です。

 遂に独裁者ナポリタンはアトムの家族を人質にして地球を引き渡すように脅迫してきます。

 何とかアトムはナポリタンを倒しますが、実はナポリタン本人も知らなかったのですが彼は脳まで機械化したロボットだったのです。

 敗北を認めたナポリタンは太陽の爆発を抑える物質をアトムに与え濃硫酸の水槽に飛び込み自殺します。

 アトムは太陽にまで核爆発を抑える物質を運ぶため家族と別れを告げ単身ロケットに乗り込みます。

 しかし太陽に向かって発射したカプセルは隕石にぶつかり動かなくなってしまいます。

 アトムは太陽活動を抑えるカプセルにしがみつき、一緒に太陽に飛び込んで自分の生命と引き換えに地球を救うのでした。

 太陽に飛び込む刹那、アトムは最後に地球を振り返って言います。

「地球はきれいだなあ…」


 太陽は元通りになり地球に人間たちは戻ってきますがアトムはとうとう戻ってはきませんでした。

 それでもアトムの育ての親、お茶の水博士は一人アトムを待ち続けます。

 お茶の水博士はかつてアトムが生まれた作業台に手を当てつぶやくのです。

「アトムはいつかきっと帰って来る。もし帰ってこられなくとも、アトムが生まれたこの台の上から、第二第三のアトムが生まれるじゃろうということをわしは信ずる!」
 
 場面が変わり今までの主な登場人物が横並びにスクロールし、最後にアトムがお別れの挨拶をして終わります。

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 当時のテレビの前の良い子たちは、突然のアトムの死にみんな涙したのでした。

 作者である手塚治虫先生は後に「アニメは万人に向けるメッセージでありたい。アトムは進歩のみを目指して突っ走る科学技術が、どんなに深い亀裂や歪みを社会にもたらし、差別を生み、人間や生命あるものを無残に傷つけていくかを、描いたつもりです」と語っています。

 確かにアトムというと可愛い少年ロボットの印象が強いですが、メインストーリは子供物とは思えないぐらいかなり重たい話が多いです。

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声の出演

アトム:清水マリ

お茶の水博士:勝田久

ウラン:水垣洋子

ヒゲオヤジ:矢島正明
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