気がついたら無理!絶対にいや!

朝山みどり

文字の大きさ
29 / 68

第29話 アリスの決心

しおりを挟む
すこし時を遡り船のなかで
「今回は随分穏やかな航海だな」とデイビスがアレクに言った。

「あぁ海の様子はいつもと同じに見えるが、なにか違うのだろうか?」とアレクが言っていると

ラズベリーが来て
「アリス様がお話したいそうです。改まってお話がしたいみたいです」と告げた。

すぐにやって来たアリスは

「わたくし、家族に会って話すことを考えましたが、なにもいうことがないのに気づきました。

歩いている時に、あのこと、このこと、あの時はとか、いろいろ頭に浮かびました。泣いて喚いて罵ろうと思いました。言ってやる言葉もたくさん浮かびました。文学的な言葉も皮肉も・・・だけど疲れて寝てしまうと忘れてしまうみたいで、ほんと、忘れたことも忘れて・・・たくさん、たくさん思い出して言い返してやり返しながら歩いて、寝て忘れてしまい。

馬に乗っている間に思い出そうと頑張りましたが・・・みんなどこかに行ってしまって。
多分わたくしは薄情なんでしょうね。

言いたいのは縁を切りたい。籍を抜いてくれだけです。こんなんでも王宮に行く必要がありますか?手紙で終わらせるのは?」とアリスが演説のように言うと

「そうか・・・だがな。王宮に行こう。わたしたちがあちらの顔を見たいしね。だけどアリス、実際に顔を見たら思い出すかも知れないからね。そしたら話したらいい。意地悪なことも言っていい。傷つけるとわかっても言ってよい」とデイビスが言うと

「そうだね。アリスの気持ちが穏やかになるのが大事だから・・・なんなら途中でアリスは退室してもいいし。わたしたちは皇国の者として話すことがあるから、どっちにしても王宮に行くんだよ。そういう連絡もしているしね」とアレクが言うとアリスが
「だったら、気楽でいいんですね。多分すぐ終わります。仕事だって本人がやればいいのですからね」と言って安心したように笑った。

その後のお茶の時に
「アリス、海の一族の料理は一族と一緒じゃないと食べられないのか?」とアレクが聞いた。
「どうでしょう。わたくしはあまり外に出たことがないから」と言う返事に
「そうだったな・・・海の一族の所に行くって言うのは出来るのか?」
「うん、出来るかな。遊びにおいでって言われているから」とアリスは考えて

「そうですね。籍を抜いたら遊びに行きましょう。四人に増えても大丈夫だと思う。お料理、たくさんあったから・・・でもなにか、お礼に上げたいな。ずっと心配してくれたから・・・なにがいいかな?天の山の果物は遠いし」とかアリスが悩んでいると

「そうだね。王妃の姪じゃなくなったら・・・難しいね。だけど心配してるならあれこれ考えて遅くなるより、先ず顔を見せればいいのではないでしょうか?」とデイビスが言うと

「それがいいね、アリス。彼らはアリスが思っているよりアリスを心配しているよ。だから先ず行ったらいいね。それからお土産を用意してまた行ったらいいよ」とアレクが言うと

「ほんとにそう思いますか?」とアリスは言うと二人をかわるがわる見て

「そうします」と言って

「こうなったら、早く王宮の用事をすませて会いに行きたい」と元気に言った。


「アリスの気持ちは落ち着いたが私たちの気持ちは落ち着きませんね。すこし走ったらいいのでしょうか?」とデイビスが言うと

「アリスを甘やかしたら落ち着きそうだ。わたしの気持ちは落ち着きそうだけど」とアレクがぼやいたが、デイビスはため息をついただけだった。

「国から文官を派遣して貰いましょう。実権はこちらが貰います。後は様子を見ながらですね。国としては豊かですし上が変わっても、人々の生活に変わりはないでしょう」とデイビスは言うと、冷たく笑いながら

「後はですね。様子を見ながら落として行きましょう。いつも隠してる腹黒を見せましょう」と言った。

「ほう、デイビス腹黒を見せるのか?楽しみだね」とアレクが言うと

「いやだぁ。アレク。あなたの腹黒を見せましょうとおすすめしているのですよ」とデイビスが返し

「俺はお前のを見たい」とアレクが返した。
しおりを挟む
感想 284

あなたにおすすめの小説

言い訳は結構ですよ? 全て見ていましたから。

紗綺
恋愛
私の婚約者は別の女性を好いている。 学園内のこととはいえ、複数の男性を侍らす女性の取り巻きになるなんて名が泣いているわよ? 婚約は破棄します。これは両家でもう決まったことですから。 邪魔な婚約者をサクッと婚約破棄して、かねてから用意していた相手と婚約を結びます。 新しい婚約者は私にとって理想の相手。 私の邪魔をしないという点が素晴らしい。 でもべた惚れしてたとか聞いてないわ。 都合の良い相手でいいなんて……、おかしな人ね。 ◆本編 5話  ◆番外編 2話  番外編1話はちょっと暗めのお話です。 入学初日の婚約破棄~の原型はこんな感じでした。 もったいないのでこちらも投稿してしまいます。 また少し違う男装(?)令嬢を楽しんでもらえたら嬉しいです。

【完結済】後悔していると言われても、ねぇ。私はもう……。

木嶋うめ香
恋愛
五歳で婚約したシオン殿下は、ある日先触れもなしに我が家にやってきました。 「君と婚約を解消したい、私はスィートピーを愛してるんだ」 シオン殿下は、私の妹スィートピーを隣に座らせ、馬鹿なことを言い始めたのです。 妹はとても愛らしいですから、殿下が思っても仕方がありません。 でも、それなら側妃でいいのではありませんか? どうしても私と婚約解消したいのですか、本当に後悔はございませんか?

【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい

春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。 そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか? 婚約者が不貞をしたのは私のせいで、 婚約破棄を命じられたのも私のせいですって? うふふ。面白いことを仰いますわね。 ※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。 ※カクヨムにも投稿しています。

虐げられてる私のざまあ記録、ご覧になりますか?

リオール
恋愛
両親に虐げられ 姉に虐げられ 妹に虐げられ そして婚約者にも虐げられ 公爵家が次女、ミレナは何をされてもいつも微笑んでいた。 虐げられてるのに、ひたすら耐えて笑みを絶やさない。 それをいいことに、彼女に近しい者は彼女を虐げ続けていた。 けれど彼らは知らない、誰も知らない。 彼女の笑顔の裏に隠された、彼女が抱える闇を── そして今日も、彼女はひっそりと。 ざまあするのです。 そんな彼女の虐げざまあ記録……お読みになりますか? ===== シリアスダークかと思わせて、そうではありません。虐げシーンはダークですが、ざまあシーンは……まあハチャメチャです。軽いのから重いのまで、スッキリ(?)ざまあ。 細かいことはあまり気にせずお読み下さい。 多分ハッピーエンド。 多分主人公だけはハッピーエンド。 あとは……

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

【完結】わたしの欲しい言葉

彩華(あやはな)
恋愛
わたしはいらない子。 双子の妹は聖女。生まれた時から、両親は妹を可愛がった。 はじめての旅行でわたしは置いて行かれた。 わたしは・・・。 数年後、王太子と結婚した聖女たちの前に現れた帝国の使者。彼女は一足の靴を彼らの前にさしだしたー。 *ドロッとしています。 念のためティッシュをご用意ください。

【完結】旦那様、その真実の愛とお幸せに

おのまとぺ
恋愛
「真実の愛を見つけてしまった。申し訳ないが、君とは離縁したい」 結婚三年目の祝いの席で、遅れて現れた夫アントンが放った第一声。レミリアは驚きつつも笑顔を作って夫を見上げる。 「承知いたしました、旦那様。その恋全力で応援します」 「え?」 驚愕するアントンをそのままに、レミリアは宣言通りに片想いのサポートのような真似を始める。呆然とする者、訝しむ者に見守られ、迫りつつある別れの日を二人はどういった形で迎えるのか。 ◇真実の愛に目覚めた夫を支える妻の話 ◇元サヤではありません ◇全56話完結予定

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

処理中です...