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第60話 王都を去った彼らは
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王都から連合軍と王族と言うか仲間たちが出て行った。
残ったのはわずかな民と王宮の使用人だった。
ホワイト遠征部長は王都に入った。ここはさっさと片付けたい。彼には予定がある。
これから彼はスペリオル皇国の背後を突くべく船に乗る。
信じられない作戦だ。だが、試しにやって見たこの作戦は見事にはまった。ここでうまく行っている。
確かに相手に不足だった。小国群の連合軍とか、小粒すぎて・・・戦争なんて正面からぶち当たって叩き潰すのが楽しいのに、今回はまわりくどい。
計画通り王族も出て行ったし、クレール王国は実質なくなった。
王族が王族がいるから国だとか主張するだろが、あの伯爵が気にかけるとは思えないし、多分面倒になったアレク様が排除するだろう・・・
スペリオル皇国は長く目障りな国だった。おとなしくしていれば気にしないし、見逃してやったが・・・誰だって耳のそばで五月蝿くする蚊を叩くだろう?!
その時が来たってことだな。
この町を守る守備隊と城を守る者が決まったと連絡が来た。そいつらを残して出発だな。
『おれ、船に弱かったらどうしよう』と心配しながら、ホワイト遠征部長は馬に跨った。
アリスとアレクが話していた。
「なんだか嘘みたいですね。攻めて来ているのは連合軍だとはっきり言いましたよね。あの人たちには」
「あぁちゃんとそう言った。皇国と戦って弱くなった王国を叩こうとしたのは間違いない。スター騎士団が連合軍をこっそり追跡しているから、それぞれの司令官と話して本当の所がわかると思う」
「王国が抵抗しなかったのは、残った民もいましたし、やはり王都を戦場にするのはいやだったのでしょうか?」
「いや、それは」と言いかけてアレクは
「そうかも知れないね。でも改めて学んだよ。戦況というか状況を読むのは難しい。それとアリスはその優秀だと改めて、認識したよ」
「そうですか! 拾い物が成長しましたか?」とアリスが微笑んだ。
『成長したよ。ほんとに成長した』とアレクは思った。ちゃんと声にしたいのに喉が塞がって声にならない。
「これくらい成長しました」とアリスはアレクの肩に手を伸ばしてつかまるとつま先立ちになった。
見上げるアリスの口が笑っている。アレクはアリスの腰を抱くと唇をアリスの笑顔に近づけた。笑いが消えた口に唇を押し付けた。一瞬固くなったアリスの体を落ち着かせるために背中を撫ぜた。
いつしか唇は離れてアリスはアレクの肩に頭を埋めていた。
アレクはアリスの耳元に口を寄せると
「あぁわたしは宝物を拾ったよ」と囁いた。
国に戻る連合軍と交渉する傍ら、王国を逃げ出した王族を観察するよう命令されたが、彼らは足が遅い。仕方なく王族を部下にまかせてわたしは連合軍と話をした。
「はい、わたしは援軍の長です。そっちは先に出た軍の長です。命令が新しいのでわたしが上です」
「なに言ってるんだ。最初に命令を受けたわたしが上だ」
なんだこいつらは、自分がやっていることがわかってないのか?
「最初に命令を受けたおまえ。命令はどんなだ?」
「それは、皇国軍がいれば、それを助ける。いなければ王国と戦う」
「わたしは少し、違います。先に出た連中が王国軍に負けてるから助けるように言われました」
「負けてない。王都に攻め込んだ」
「そして、皇国に追い返された」とわたしは、二人に向かって言った。
二人は目に見えて塩垂れた。
「まぁ、これから怪我せずに帰れ」と言うと二人はうなずいた。
八番目の国の司令官二人と話が終わった。なんだか、ずっと前回と同じで、こちらがおかしいような気がしてきた。
別のことを考えよう。
王国の連中をどうするかだ。部下が泣きを入れるからまたこちらに引き取ったが、これはアレク様からホワイト部長が丸投げされて、わたしに投げてきたものだ。
わたしはやつらを河へ丸投げすればいいのか? いや、自棄になってはいかん。
ちゃんとした丸投げをして、無責任な上司とは違うところを見せなくては。
そうだ、十二の国に丸投げしよう。
国王一家は別々の国にしよう。そうだ。そうだ。国王にはこれとこれと・・・
王妃には・・・王子には・・・王女とこれと・・・後は適当に・・・途中で人数が変わっても気にするなってことだから、これでいい。
九番目の国を呼ぶまえに国王組を連れてこさせた。
同じような会話の後で国王組を紹介すると、ぎょっとして二歩も三歩も下がっている。
ご苦労賃として、食料を持たせた。
後これを十二回やるのか・・・二周ってことじゃないか、くそいまいましい。小国群なんて嫌いだ。せめて最初の国と話すときに思いついたらな?せめて六個くらいに・・・
そうだ、志願者を募って国をまとめようかな。今度提案しようかな。
残ったのはわずかな民と王宮の使用人だった。
ホワイト遠征部長は王都に入った。ここはさっさと片付けたい。彼には予定がある。
これから彼はスペリオル皇国の背後を突くべく船に乗る。
信じられない作戦だ。だが、試しにやって見たこの作戦は見事にはまった。ここでうまく行っている。
確かに相手に不足だった。小国群の連合軍とか、小粒すぎて・・・戦争なんて正面からぶち当たって叩き潰すのが楽しいのに、今回はまわりくどい。
計画通り王族も出て行ったし、クレール王国は実質なくなった。
王族が王族がいるから国だとか主張するだろが、あの伯爵が気にかけるとは思えないし、多分面倒になったアレク様が排除するだろう・・・
スペリオル皇国は長く目障りな国だった。おとなしくしていれば気にしないし、見逃してやったが・・・誰だって耳のそばで五月蝿くする蚊を叩くだろう?!
その時が来たってことだな。
この町を守る守備隊と城を守る者が決まったと連絡が来た。そいつらを残して出発だな。
『おれ、船に弱かったらどうしよう』と心配しながら、ホワイト遠征部長は馬に跨った。
アリスとアレクが話していた。
「なんだか嘘みたいですね。攻めて来ているのは連合軍だとはっきり言いましたよね。あの人たちには」
「あぁちゃんとそう言った。皇国と戦って弱くなった王国を叩こうとしたのは間違いない。スター騎士団が連合軍をこっそり追跡しているから、それぞれの司令官と話して本当の所がわかると思う」
「王国が抵抗しなかったのは、残った民もいましたし、やはり王都を戦場にするのはいやだったのでしょうか?」
「いや、それは」と言いかけてアレクは
「そうかも知れないね。でも改めて学んだよ。戦況というか状況を読むのは難しい。それとアリスはその優秀だと改めて、認識したよ」
「そうですか! 拾い物が成長しましたか?」とアリスが微笑んだ。
『成長したよ。ほんとに成長した』とアレクは思った。ちゃんと声にしたいのに喉が塞がって声にならない。
「これくらい成長しました」とアリスはアレクの肩に手を伸ばしてつかまるとつま先立ちになった。
見上げるアリスの口が笑っている。アレクはアリスの腰を抱くと唇をアリスの笑顔に近づけた。笑いが消えた口に唇を押し付けた。一瞬固くなったアリスの体を落ち着かせるために背中を撫ぜた。
いつしか唇は離れてアリスはアレクの肩に頭を埋めていた。
アレクはアリスの耳元に口を寄せると
「あぁわたしは宝物を拾ったよ」と囁いた。
国に戻る連合軍と交渉する傍ら、王国を逃げ出した王族を観察するよう命令されたが、彼らは足が遅い。仕方なく王族を部下にまかせてわたしは連合軍と話をした。
「はい、わたしは援軍の長です。そっちは先に出た軍の長です。命令が新しいのでわたしが上です」
「なに言ってるんだ。最初に命令を受けたわたしが上だ」
なんだこいつらは、自分がやっていることがわかってないのか?
「最初に命令を受けたおまえ。命令はどんなだ?」
「それは、皇国軍がいれば、それを助ける。いなければ王国と戦う」
「わたしは少し、違います。先に出た連中が王国軍に負けてるから助けるように言われました」
「負けてない。王都に攻め込んだ」
「そして、皇国に追い返された」とわたしは、二人に向かって言った。
二人は目に見えて塩垂れた。
「まぁ、これから怪我せずに帰れ」と言うと二人はうなずいた。
八番目の国の司令官二人と話が終わった。なんだか、ずっと前回と同じで、こちらがおかしいような気がしてきた。
別のことを考えよう。
王国の連中をどうするかだ。部下が泣きを入れるからまたこちらに引き取ったが、これはアレク様からホワイト部長が丸投げされて、わたしに投げてきたものだ。
わたしはやつらを河へ丸投げすればいいのか? いや、自棄になってはいかん。
ちゃんとした丸投げをして、無責任な上司とは違うところを見せなくては。
そうだ、十二の国に丸投げしよう。
国王一家は別々の国にしよう。そうだ。そうだ。国王にはこれとこれと・・・
王妃には・・・王子には・・・王女とこれと・・・後は適当に・・・途中で人数が変わっても気にするなってことだから、これでいい。
九番目の国を呼ぶまえに国王組を連れてこさせた。
同じような会話の後で国王組を紹介すると、ぎょっとして二歩も三歩も下がっている。
ご苦労賃として、食料を持たせた。
後これを十二回やるのか・・・二周ってことじゃないか、くそいまいましい。小国群なんて嫌いだ。せめて最初の国と話すときに思いついたらな?せめて六個くらいに・・・
そうだ、志願者を募って国をまとめようかな。今度提案しようかな。
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