気がついたら無理!絶対にいや!

朝山みどり

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第64話 生き残った子

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少女と手を繋いでルーク・ホワイト遠征部長は船に戻った。

ラズベリーが素早くまえに出てくると、少女に優しく話しかけながら椅子に座らせた。

「ルーク、その・・・大変だったな」とアレクが珍しく動揺して言うと

「ははい。任務完了しました。王族は自決してました。あの娘だけ」

「わかった。その・・・ゆっくり休んでくれ」そう言われてホワイトは足早に部屋を出た。


「殿下。この少女はメニリーフ王国へ連れて行きます」とラズベリーが言うと

「メニリーフ?」とアレクが驚くとラズベリーがふっと笑った。ライラが

「あの、わたくしが送って行っていいですか?」と言うとラズベリーがどうしますかって感じでアリスとアレクを見た。

「説明して貰っていいかな?」とアレクが言うと

「あそこのおば様、ちいおじ様は、この娘の立場だった人たちですよ」

「は?」「え?」と二人は驚いた。

そしてアリスが

「だから、全然似てなかったんだ」と言うと

「そうかぁ」とアレクがまた驚くと

「似てないのは確かですが・・・」とアリスが答えた。

「ライラが送って行くそうですが」とラズベリーが話を戻すと

「頼む」とアレクは答えた。続いて

「こういうのは早いほうがいい。おれたちは船を降りるからすぐに出発してくれ」と言った。



ライラは泣く少女の背中を撫でていた。

「どうしてわたしは一緒に連れて行って貰えなかったの?いい子じゃなかったから」

「違いますよ。ねぇ知ってますか?この世界はいろいろな物があるんですよ。怖いものを見ましたね。優しいものも見ましたでしょ?」

「えぇみんな、わたしに優しかったの」

「もっと優しいものを見て欲しいと思ったんですよ」

「でも一人になっちゃった」

ライラは黙って少女の背中を撫で続けた。



二人は手を繋いで船を降りた。少女は左手をライラとつなぎ、右手にはうさぎのぬいぐるみを抱いていた。

迎えに来たニールが嬉しそうに笑いかけてきた。ライラもその笑いに答えた。


城に入るとパールが待っていた。パールは少女に笑いかけると

「久しぶりのおば様を歓迎します」と言った。少女は聡かった。

「よろしくお願いします」と言うと頭を下げた。


二日後ライラは船に乗った。ライラの左手はニールの腕にかかっていた。

おば様とちいおじ様が送りに来ていた。小さいおば様は子猫を抱いていたので手を振れなかった。その代わり

「ありがとう、わたしが。わたしがみんなの分も一杯見て、優しくするーー」と大声で言った。

おば様もちいおじ様も笑って手を振った。

ニールもライラも笑って手を振った。
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