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7 義弟は紳士
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「フレデリック!フレイ!」
「……オルウィン?」
つかつかと早足で寄ってくるのは懐かしい顔だった。
「フレイ!」
「オルウィン!……久しぶり」
「チッ!」
私とロバート殿の間に割り込むように入ってきたのはオルウィン・ヴィオル侯爵令息……私のアージェの1つ下の弟だ。もう令息ではないな、きっとどこかの領地でも分けてもらい立派にやっているんだろう。
「フレイ、ハル義兄上と義姉上の事、本当に……姉上に続いてまさかこんなことに」
「ありがとうオルウィン。きっと抜け殻だった私にしっかりしろと兄上と義姉上がカツを入れてくれたのかもしれないと思っている……クリスティンの為にも頑張らなきゃな」
オルウィンは私の手を取って静かに笑った。ああ、私が引き籠ってニートになる前からオルウィンはこうだったな。
「フレイが戻ってきてくれて私は嬉しい。またヴィオル家を頼ってくれよ、兄上や姉上、父上母上もフレイが来てくれる事を願ってる。元気な顔を見たがってるよ」
「ああ、そうだな。近々顔を出させてもらうよ」
オルウィンは私ではなく隣にいたカルセニア伯爵に向かって
「すまないカルセニア伯爵。少し義兄上と話がしたいんだ」
「……もちろんですよ、オルウィン殿。ではフレデリック殿また」
「ええ……」
ひらりと手を振りカルセニア伯爵はパーティの人混みの中に紛れ込んで行ったが、恨めしそうに見る目がなんとも後味が悪い。
「フレイ、向こうに行こう。あいつはしつこい」
「ん?分かった」
なんだ?オルウィンもロバート殿をじっと見て。相容れないものでもあるんだろうか。それからオルウィンと積もる話に花が咲いた。何せ、アージェの死後、私はほとんど何も覚えていないようなものだったから、何があったのか色々知る事が出来た。
「アージェ姉上の事故はやっぱりあのエセ聖女が仕組んだことだったんだ。それをヘルガ姉上が暴き出して断罪。エセ聖女は余罪も多く処刑されたよ……。
そしてアージェ姉上の名誉は回復された……報告に行ったけれど、フレイはぼーっとしてたね」
「はは……ごめん、なんにも覚えてない」
オルウィンは仕方がないなあと諦めのため息をつく。これも昔と一緒だった。王都から遠いジェス領に一番アージェに会いにきたのはこのオルウィンだった。アージェが生きているうちは良く色々なものを持って来てくれたし、私とも仲良くしてくれた。
「私が一番暇だからね!」
と、言ってくれるいい奴だった。
「アージェ姉上を失ったフレイは流石に見るのも辛かった。こうして普通に会話が出来る日が来るなんて思わなかったよ」
「私もだ。アージェを喪って私の世界は全て壊れたって思ってたし、実際壊れていた。でも、私でなければできない事がまだこの世にはあったんだ」
今までこんな穀潰しを飼っていてくれた兄上に少しでも安心して貰えるようにしなくては。
「……オルウィン?」
つかつかと早足で寄ってくるのは懐かしい顔だった。
「フレイ!」
「オルウィン!……久しぶり」
「チッ!」
私とロバート殿の間に割り込むように入ってきたのはオルウィン・ヴィオル侯爵令息……私のアージェの1つ下の弟だ。もう令息ではないな、きっとどこかの領地でも分けてもらい立派にやっているんだろう。
「フレイ、ハル義兄上と義姉上の事、本当に……姉上に続いてまさかこんなことに」
「ありがとうオルウィン。きっと抜け殻だった私にしっかりしろと兄上と義姉上がカツを入れてくれたのかもしれないと思っている……クリスティンの為にも頑張らなきゃな」
オルウィンは私の手を取って静かに笑った。ああ、私が引き籠ってニートになる前からオルウィンはこうだったな。
「フレイが戻ってきてくれて私は嬉しい。またヴィオル家を頼ってくれよ、兄上や姉上、父上母上もフレイが来てくれる事を願ってる。元気な顔を見たがってるよ」
「ああ、そうだな。近々顔を出させてもらうよ」
オルウィンは私ではなく隣にいたカルセニア伯爵に向かって
「すまないカルセニア伯爵。少し義兄上と話がしたいんだ」
「……もちろんですよ、オルウィン殿。ではフレデリック殿また」
「ええ……」
ひらりと手を振りカルセニア伯爵はパーティの人混みの中に紛れ込んで行ったが、恨めしそうに見る目がなんとも後味が悪い。
「フレイ、向こうに行こう。あいつはしつこい」
「ん?分かった」
なんだ?オルウィンもロバート殿をじっと見て。相容れないものでもあるんだろうか。それからオルウィンと積もる話に花が咲いた。何せ、アージェの死後、私はほとんど何も覚えていないようなものだったから、何があったのか色々知る事が出来た。
「アージェ姉上の事故はやっぱりあのエセ聖女が仕組んだことだったんだ。それをヘルガ姉上が暴き出して断罪。エセ聖女は余罪も多く処刑されたよ……。
そしてアージェ姉上の名誉は回復された……報告に行ったけれど、フレイはぼーっとしてたね」
「はは……ごめん、なんにも覚えてない」
オルウィンは仕方がないなあと諦めのため息をつく。これも昔と一緒だった。王都から遠いジェス領に一番アージェに会いにきたのはこのオルウィンだった。アージェが生きているうちは良く色々なものを持って来てくれたし、私とも仲良くしてくれた。
「私が一番暇だからね!」
と、言ってくれるいい奴だった。
「アージェ姉上を失ったフレイは流石に見るのも辛かった。こうして普通に会話が出来る日が来るなんて思わなかったよ」
「私もだ。アージェを喪って私の世界は全て壊れたって思ってたし、実際壊れていた。でも、私でなければできない事がまだこの世にはあったんだ」
今までこんな穀潰しを飼っていてくれた兄上に少しでも安心して貰えるようにしなくては。
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