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27 やめてくれ、お前までそんな目で私を見ないでくれ

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 かなり遅い時間に私を起こしに来たアーヴァインはまず何も言わずに部屋の窓を開けた。

「……カイラスに抱かれた」

「さようでございますか」

「カイラスはいつから?」

「10くらいでしょうか。精通もあなたで行ったようです」

「……今日や昨日の勘違いじゃなかったんだね」

「はい」

 私は「そうか」としか言えなかった。いつから想っていなんて聞いてどうするというんだ。

「皆は知っているのか、カイラスの想い」

「隠しているようでしたが、バレておりますね。今日も平静を装っていますが、地に足がついていません」

「そうか……」

「カイラス坊ちゃんは、ずっと領地へ戻る事を望んでおりました。あなたの傍に居たいと。なんの返事も返さないフレデリック様をずっと愛し守る為に」

「それが予想外に起き上がって……王都までノコノコ出て来た」

 カイラスにとってはあり得ない展開だったんだろう。

「ずっとフレデリック様の面倒を見るから自分には婚約者は要らないと言い続けられ……。一途というか頑なというか。子供の時からそうでしたから、皆折れてしまいました」

 カイラスの強い思い。何故そこまで私の事を慕ってくれているのか分からない。カイラスの事はクリスティンより可愛がった。元々父親を見た事もない子供。そして母親さえも失った子供。私とアージェはカイラスの事を自分達の子供のように可愛がったのは確かだったが、若い私達だったから、子供というより兄弟のように接した気はする。

 そこにどんな慕情が生れたのか……家族に向ける親愛以上の何かがカイラスにはあったんだろう。

「お身体がお辛い所もうしわけございませんが、どうしてももう一方会いたいと言う人物がお待ちでございます」

「……だれ?」

 アーヴァインが言いづらそうに、もったいぶるようにそんなことを口にした。一体誰と会えと言うんだ、こんな状況で。

「本当に申し訳ございませんがお呼びして参ります」

 開け放った窓をもう一度きちんと閉め直す。お呼びする?もう来ているという事か?遅い時間だがまだ朝と呼べなくはないこんな時間から一体誰が……。近くまで来ていて待っていたのか、扉はすぐにノックされ見知った顔が入ってきた。

「……オルウィン……?」

「フレイ……」

 扉はアーヴァインが外から締め、足早にオルウィンはまだベッドから起き上がっていない私の傍までやってくる。

「どうした、オルウィンこんな朝……はや、く」

「フレイッ……っ!」

 ああ、オルウィンの瞳が揺れている。どうして、どうしてお前までそんな風に揺れるんだ。

「オル……ウィン……」

「フレイ……カイラスに抱かれたな……あいつ、抜け駆けしやがって」

「オル、ウィン……?」

 昨日の夜のカイラスみたいに揺れないでくれ、オルウィン。

「見守って行こうと、フレイの命が尽きるまで抜け駆けせずに二人でフレイを守ろうと約束したのに、あいつはお前を汚したんだな……?そうなんだろう!フレイ!」

「な、なにを、何を言ってるんだオルウィン!」

 勢いよく夜着の襟元を掴まれて、暴くように引っ張られる。勢いでボタンが弾け飛び、カイラスが上から新たに付け直した痕が露わになる。

「あの……クソガキが……調子に乗りやがって」

「どうしたんだ、オルウィン!やめろ、カイラスは……」

 私の大切な甥……甥なんだ……そんな憎しみを込めた声で呼ばないでやってくれ。

「約束だとか馬鹿正直に思っていた私が間抜けだったという事だ!」

 やめて、やめてくれ、オルウィンお前までお前までそんな目で私を見ないでくれ。
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