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47 熊を令嬢に変えるテクニック
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何もかも信じられない、と自分の殻に閉じ籠りかけたキャロラインだったが、引き篭もりかけた殻から引っ張り出された。
「さあ、お嬢様未満の存在のキャロラインさん。お風呂ですわよ」
「見た目くらいお嬢様に近づけませんと」
「無駄飯食いを飼っておくなんてとんでもない事ですわ」
「えっ?!いや、離してーーー!」
アイーダの連れて来たメイド達が寄ってたかってキャロラインを連れて行ってしまう。多分アイーダが「やっておしまい」と言ったに違いない。
「嫌だわぁ!きれいな髪色なのに、手入れがヘッタクソ」
「肌のきめが最低ね。何食べてたのかしら?夜更かしもしてたみたいだわ」
「脂っぽい!え、ニキビだらけ?!お肉ばっかりでお野菜や果物とか食べてないの?!」
散々な言われようにキャロラインは泣き出したが
「はい、洗いますよー」
メイド達はどこ吹く風で仕事を続ける。
「うう……、う?」
キャロラインはお風呂が大っ嫌いだった。まず寒くて寒くて仕方がないし、メイド達は力任せに擦るから肌は真っ赤になった。
髪の毛も乱暴に洗われてブチブチと毛が抜ける。滴るほど水分を含んだ髪はそのまま放置され、キシキシと軋んだしそのまま風邪をひく事も多かった。
「あ、あれ?」
お風呂のお湯がとても暖かい。こんな事は無かった。
「やだっ!ブラシの歯が折れそう!どれだけ梳ってないのかしら?!」
丁寧に、丁寧に髪の毛を整えてから
「柑橘系にしましょう。花の匂いは駄目ね」
とても良い匂いのシャンプーでモコモコに泡だった。
「痛くないわ……」
「当たり前じゃないですか。どんだけ下手くそに洗われてたんです?」
「……」
2回シャンプーされ、コンディショナーオイルを塗り込まれる。
「これ、知らない」
「はあ??だから髪に艶がなかったのです。御令嬢なら皆使ってます。と言うかかなり傷んでますから次からもっと良いのを使いますよ」
そして柔らかいスポンジで体を隈なく磨かれる。
「やだ!汚れが酷いわ」
「細かい所が酷いわね」
「気持ち良い……」
優しく洗われて、温かいお湯の中に嫌な気持ちが溶けて流れて行くようだ。
「さあ、おしまいです」
もっと浸かっていたいと思ってもメイド達に出されてしまう。
「さっさと拭いて!」
「ボディオイルを塗りますよ?」
「こっちで寝てください。マッサージです」
「ふええ……」
キャロラインは知らない手入れの連続に目を回していた。
「こ、こんなの知らないーーー!」
「はあ?年頃の御令嬢なら当たり前です」
「皆様、頑張って美しさを作り上げているのですよ!美は1日にしてならず!ビシバシ行きますよ!」
「こんなビシバシなら一日中受けたいーーー!」
「ほほほ!言いましたね?!お覚悟を!」
「ちにゃぁーーーー?!」
キャロラインは知った。マッサージされ過ぎると体が怠くなる事を。そして自分の体がバッキバキに硬かった事を。
そして……きちんとしていたと思っていたレイクリフ家のメイド達は怠慢で技術が古く、自分のことを主人だと思ってはいなかった事を。
「これで見た目だけはお嬢様に近づきましたよ」
「ベッドも汚れていたので変えました」
「夜着はシルクにしてください。肌荒れが減ります」
「……くまちゃんは触らず置いて置きましたよ」
「っ!!」
硬くなっていたベッドはふかふかになり、良い匂いがしてきた。汚くないと思っていたシーツや枕も新品に変えて貰うとやはり洗濯が甘いものだったと気付かされた。
「……」
小さな頃、父親から唯一手渡されたクマのぬいぐるみ。薄汚れてボロボロなそれを新しいメイド達は丁寧に取り扱ってくれた。
「こんな汚いぬいぐるみ、捨てましょ」
昔からいたメイドに捨てられそうになってから必死で隠して置いたぬいぐるみがきちんと飾られていた。
「お洋服を着せても良いかもしれませんね」
そう笑顔を見せる新しいメイド達に困惑と感謝を感じるのだった。
「さあ、お嬢様未満の存在のキャロラインさん。お風呂ですわよ」
「見た目くらいお嬢様に近づけませんと」
「無駄飯食いを飼っておくなんてとんでもない事ですわ」
「えっ?!いや、離してーーー!」
アイーダの連れて来たメイド達が寄ってたかってキャロラインを連れて行ってしまう。多分アイーダが「やっておしまい」と言ったに違いない。
「嫌だわぁ!きれいな髪色なのに、手入れがヘッタクソ」
「肌のきめが最低ね。何食べてたのかしら?夜更かしもしてたみたいだわ」
「脂っぽい!え、ニキビだらけ?!お肉ばっかりでお野菜や果物とか食べてないの?!」
散々な言われようにキャロラインは泣き出したが
「はい、洗いますよー」
メイド達はどこ吹く風で仕事を続ける。
「うう……、う?」
キャロラインはお風呂が大っ嫌いだった。まず寒くて寒くて仕方がないし、メイド達は力任せに擦るから肌は真っ赤になった。
髪の毛も乱暴に洗われてブチブチと毛が抜ける。滴るほど水分を含んだ髪はそのまま放置され、キシキシと軋んだしそのまま風邪をひく事も多かった。
「あ、あれ?」
お風呂のお湯がとても暖かい。こんな事は無かった。
「やだっ!ブラシの歯が折れそう!どれだけ梳ってないのかしら?!」
丁寧に、丁寧に髪の毛を整えてから
「柑橘系にしましょう。花の匂いは駄目ね」
とても良い匂いのシャンプーでモコモコに泡だった。
「痛くないわ……」
「当たり前じゃないですか。どんだけ下手くそに洗われてたんです?」
「……」
2回シャンプーされ、コンディショナーオイルを塗り込まれる。
「これ、知らない」
「はあ??だから髪に艶がなかったのです。御令嬢なら皆使ってます。と言うかかなり傷んでますから次からもっと良いのを使いますよ」
そして柔らかいスポンジで体を隈なく磨かれる。
「やだ!汚れが酷いわ」
「細かい所が酷いわね」
「気持ち良い……」
優しく洗われて、温かいお湯の中に嫌な気持ちが溶けて流れて行くようだ。
「さあ、おしまいです」
もっと浸かっていたいと思ってもメイド達に出されてしまう。
「さっさと拭いて!」
「ボディオイルを塗りますよ?」
「こっちで寝てください。マッサージです」
「ふええ……」
キャロラインは知らない手入れの連続に目を回していた。
「こ、こんなの知らないーーー!」
「はあ?年頃の御令嬢なら当たり前です」
「皆様、頑張って美しさを作り上げているのですよ!美は1日にしてならず!ビシバシ行きますよ!」
「こんなビシバシなら一日中受けたいーーー!」
「ほほほ!言いましたね?!お覚悟を!」
「ちにゃぁーーーー?!」
キャロラインは知った。マッサージされ過ぎると体が怠くなる事を。そして自分の体がバッキバキに硬かった事を。
そして……きちんとしていたと思っていたレイクリフ家のメイド達は怠慢で技術が古く、自分のことを主人だと思ってはいなかった事を。
「これで見た目だけはお嬢様に近づきましたよ」
「ベッドも汚れていたので変えました」
「夜着はシルクにしてください。肌荒れが減ります」
「……くまちゃんは触らず置いて置きましたよ」
「っ!!」
硬くなっていたベッドはふかふかになり、良い匂いがしてきた。汚くないと思っていたシーツや枕も新品に変えて貰うとやはり洗濯が甘いものだったと気付かされた。
「……」
小さな頃、父親から唯一手渡されたクマのぬいぐるみ。薄汚れてボロボロなそれを新しいメイド達は丁寧に取り扱ってくれた。
「こんな汚いぬいぐるみ、捨てましょ」
昔からいたメイドに捨てられそうになってから必死で隠して置いたぬいぐるみがきちんと飾られていた。
「お洋服を着せても良いかもしれませんね」
そう笑顔を見せる新しいメイド達に困惑と感謝を感じるのだった。
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