26 / 139
26 プロの墓穴掘り職人
「遅い」
「遅くないよね?リンダ」
「……」
有能リンダは黙して語らずだが、キリッときつめの瞳は「器が小さいわね、フン!」と事あるごとにラムを貶めるのに余念がない、流石です。
だがラムも慣れた物で「ソレイユ様の部下」は丁重に扱う。それがラムとソレイユ様の信頼し合う関係と言う事だ。
「ディエス」
言葉少なく、こっちへ来いと言われてしまったので寄っていくと腕を引かれて膝の上に座らされてしまった。な、何だ?!恥ずかしいぞ!
「ラム、何するんだ」
「良いじゃないか、私達は新婚なんだぞ」
「……」
世間的にはそうかも知れないけど、何でこんな……あ。出入り口の側でゼルトラン君がプルプル震えている。あー……ゼルトラン君に嫌がらせしてんのか!!
そっと見ればリンダも、扉の前の衛兵も目が少し笑ってる。お前らねぇ……。
後ろから回った腕が腹を撫でて、首筋に息がかかる。く、くすぐったいと言う、びっくりすると言うか!
「や、止めろ……」
「何故?恥ずかしがる事も無かろう、今更」
わざとだ、絶対わざとだ!ゼルトラン君を煽ってるんだ!やめろ!
「へ、陛下!何故そんな無能をお側におくのですか!そのような者は捨て、私を!私をお召下さい!」
リンダと衛兵の目の温度が下がっていく……ふむ、これは初犯じゃないな?何度かここに突撃して来て追い払われたんだろうな。きっと侯爵子息だからと許されたパターンかな??
そしてリンダがあんなゴミを見る目で見ていると言う事は、ソレイユ様もゼルトラン君が好きでは無いんだろうなぁ。まあ、俺だけじゃなくラムにもこんな風に訴えるようじゃ礼儀の時点で失格なんだろうな。
空気の読める社畜は生き残る事が出来るのだ。
「ディエス、髪を伸ばせ。髪留めを買ってやろう。青より黒が良いな……お前の紫の髪に合うような黒オパールか、スピネルか」
「は、はは……」
黒い髪に青い目のラム。自分の色を纏えと言う、しかもゼルトラン君をきれいに無視して。真っ赤になって震えているから少し哀れだ。
「へ、陛下!話を聞いて下さい!」
「お前は我が前に顔を出すなと通達済みのはずだが?ロイター侯爵よ。其方の功績故、一度だけは見逃すと伝えたはずだが衰えたか?」
「面目次第もございませぬ」
衛兵の立つ扉の前、執務室へつながる廊下に男性が1人土下座をして額を床に擦り付けている。うわっ?!気づかなかった!
「な、な、な?!父上!」
ゼルトラン君は自分の足元に小さく蹲る父親を見てとても分かりやすく顔色をさっと青に変える。色々な情報が読み取れる場面だが、まずはラムがかなり腹を立てている事が不思議だった。しつこく追い縋って来るゼルトラン君がウザかったのかな?
「このディエスは私が請うて隣国より招いた側妃。それを捨てよとは我に叛意ありと言う事。残念であるよ、ゼファイト・ロイター。お主がそれ程不忠義者だったとは」
「返す言葉もございませぬ」
ゼルトラン君のお父さんはゼファイトさんと言うらしいが、一つ一つの言葉がとにかく喉を裂いて搾り出すような苦しい声で……聞くに堪えない。
「ち、父上!わ、私、わたし、私は……あ、あの様な者は陛下に相応しくないと!」
口を開けば開くほどゼルトラン君の墓穴はどんどん深くなって行く。どうしてこう空気の読めない人になったんだ、ゼルトラン君は。
俺を貶めれば貶めるの程、ラムの眉間の皺は深くなるし、リンダの眉間の皺も増えていくのに。
「我がロイター家500年の忠義に免じ、少しの間立ち上がる事をお許し下さいますようお願い申し上げます」
「許す」
ロイター父は立ち上がり、後退りをしながらも立ったままの息子を振りかぶった右拳で思いっきり殴りつけた。バキッ!何かが折れる音が響いてゼルトラン君の可愛い顔は変形する。
「ち、父上っ!何……がふっ!!」
左手でゼルトラン君の右手を掴み殴った右拳を開いて後頭部を掴むとそのまま石の床に叩きつける。
「ぐがっ?!」
またもや変な音。顔の正面から床に叩きつけられたゼルトラン君。多分鼻は可哀想な事になっているだろう……こ、怖い。俺は思わず目を反らせるがラムとリンダ、そして衛兵さんも冷静にじっと見つめている。
ゼルトラン君は全身の力が抜け、床に寝ているから、気を失ったんだろう。多分鼻骨と前歯も失っている。
「コレの始末をさせて下さい。御前を辞す事を」
「許す」
「広大なお心遣い感謝致します」
ロイター父は顔を上げずに、縮こまったまま、自分の息子を片手にぶら下げ引きずって帰って行った。
「ひえぇ……」
「仕事がまた増えた。ロイター領は中々広いし都会だから、ディエスが好きなスローライフにはむかんな」
「……ラム?何を言ってるんだ?」
お前の考えてる事ってちょっと怖くないか?!
「遅くないよね?リンダ」
「……」
有能リンダは黙して語らずだが、キリッときつめの瞳は「器が小さいわね、フン!」と事あるごとにラムを貶めるのに余念がない、流石です。
だがラムも慣れた物で「ソレイユ様の部下」は丁重に扱う。それがラムとソレイユ様の信頼し合う関係と言う事だ。
「ディエス」
言葉少なく、こっちへ来いと言われてしまったので寄っていくと腕を引かれて膝の上に座らされてしまった。な、何だ?!恥ずかしいぞ!
「ラム、何するんだ」
「良いじゃないか、私達は新婚なんだぞ」
「……」
世間的にはそうかも知れないけど、何でこんな……あ。出入り口の側でゼルトラン君がプルプル震えている。あー……ゼルトラン君に嫌がらせしてんのか!!
そっと見ればリンダも、扉の前の衛兵も目が少し笑ってる。お前らねぇ……。
後ろから回った腕が腹を撫でて、首筋に息がかかる。く、くすぐったいと言う、びっくりすると言うか!
「や、止めろ……」
「何故?恥ずかしがる事も無かろう、今更」
わざとだ、絶対わざとだ!ゼルトラン君を煽ってるんだ!やめろ!
「へ、陛下!何故そんな無能をお側におくのですか!そのような者は捨て、私を!私をお召下さい!」
リンダと衛兵の目の温度が下がっていく……ふむ、これは初犯じゃないな?何度かここに突撃して来て追い払われたんだろうな。きっと侯爵子息だからと許されたパターンかな??
そしてリンダがあんなゴミを見る目で見ていると言う事は、ソレイユ様もゼルトラン君が好きでは無いんだろうなぁ。まあ、俺だけじゃなくラムにもこんな風に訴えるようじゃ礼儀の時点で失格なんだろうな。
空気の読める社畜は生き残る事が出来るのだ。
「ディエス、髪を伸ばせ。髪留めを買ってやろう。青より黒が良いな……お前の紫の髪に合うような黒オパールか、スピネルか」
「は、はは……」
黒い髪に青い目のラム。自分の色を纏えと言う、しかもゼルトラン君をきれいに無視して。真っ赤になって震えているから少し哀れだ。
「へ、陛下!話を聞いて下さい!」
「お前は我が前に顔を出すなと通達済みのはずだが?ロイター侯爵よ。其方の功績故、一度だけは見逃すと伝えたはずだが衰えたか?」
「面目次第もございませぬ」
衛兵の立つ扉の前、執務室へつながる廊下に男性が1人土下座をして額を床に擦り付けている。うわっ?!気づかなかった!
「な、な、な?!父上!」
ゼルトラン君は自分の足元に小さく蹲る父親を見てとても分かりやすく顔色をさっと青に変える。色々な情報が読み取れる場面だが、まずはラムがかなり腹を立てている事が不思議だった。しつこく追い縋って来るゼルトラン君がウザかったのかな?
「このディエスは私が請うて隣国より招いた側妃。それを捨てよとは我に叛意ありと言う事。残念であるよ、ゼファイト・ロイター。お主がそれ程不忠義者だったとは」
「返す言葉もございませぬ」
ゼルトラン君のお父さんはゼファイトさんと言うらしいが、一つ一つの言葉がとにかく喉を裂いて搾り出すような苦しい声で……聞くに堪えない。
「ち、父上!わ、私、わたし、私は……あ、あの様な者は陛下に相応しくないと!」
口を開けば開くほどゼルトラン君の墓穴はどんどん深くなって行く。どうしてこう空気の読めない人になったんだ、ゼルトラン君は。
俺を貶めれば貶めるの程、ラムの眉間の皺は深くなるし、リンダの眉間の皺も増えていくのに。
「我がロイター家500年の忠義に免じ、少しの間立ち上がる事をお許し下さいますようお願い申し上げます」
「許す」
ロイター父は立ち上がり、後退りをしながらも立ったままの息子を振りかぶった右拳で思いっきり殴りつけた。バキッ!何かが折れる音が響いてゼルトラン君の可愛い顔は変形する。
「ち、父上っ!何……がふっ!!」
左手でゼルトラン君の右手を掴み殴った右拳を開いて後頭部を掴むとそのまま石の床に叩きつける。
「ぐがっ?!」
またもや変な音。顔の正面から床に叩きつけられたゼルトラン君。多分鼻は可哀想な事になっているだろう……こ、怖い。俺は思わず目を反らせるがラムとリンダ、そして衛兵さんも冷静にじっと見つめている。
ゼルトラン君は全身の力が抜け、床に寝ているから、気を失ったんだろう。多分鼻骨と前歯も失っている。
「コレの始末をさせて下さい。御前を辞す事を」
「許す」
「広大なお心遣い感謝致します」
ロイター父は顔を上げずに、縮こまったまま、自分の息子を片手にぶら下げ引きずって帰って行った。
「ひえぇ……」
「仕事がまた増えた。ロイター領は中々広いし都会だから、ディエスが好きなスローライフにはむかんな」
「……ラム?何を言ってるんだ?」
お前の考えてる事ってちょっと怖くないか?!
あなたにおすすめの小説
家に帰ったら、妻は冷たくなっていた。突然シングルファザーになった勇者パーティーの治癒師は家族を修復したい
八朔バニラ
ファンタジー
勇者パーティーに所属し、魔王討伐した治癒師(ヒーラー)のゼノスは街の人々の歓声に包まれながら、3年ぶりに家に帰った。家族が出迎えてくれると思ったが、誰も出迎えてくれない。ゼノスは不満に思いながら家に入ると、妻の身体は冷たくなっていた。15歳の長男ルミナスはゼノスの代わりに一家の柱として妹を守り抜き、父に深い拒絶のこもった瞳を向けていた。そして、8歳の長女ミリアは父の顔も忘れていた。
ゼノスは決意する。英雄の肩書きを捨て、一人の不器用な父親として、バラバラになった家族の心を繋ぎ合わせることを。
これは世界最強の治癒師が家族を修復する物語である。
有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います
緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。
知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。
花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。
十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。
寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。
見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。
宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。
やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。
次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。
アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。
ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。
殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?
krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」
突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。
なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!?
全力すれ違いラブコメファンタジーBL!
支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。
嫌われ魔術師の俺は元夫への恋心を消去する
SKYTRICK
BL
旧題:恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する
☆11/28完結しました。
☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます!
冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫
——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」
元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。
ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。
その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。
ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、
——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」
噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。
誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。
しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。
サラが未だにロイを愛しているという事実だ。
仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——……
☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中