36 / 62
ゼノアギアス戦記2
36 ティアン2
しおりを挟む
「違う!」
「違わない……!」
認めたくない、認めたくないんだ。それでも、ジュンヤの目は虚だ。
「違う違う!ジュンヤは…!ジュンヤは…!」
「ジュンヤは…死んだんだ……」
「嫌だーーーー!」
…あら…泣いているのは誰?
「嫌だ!嫌だ!ジュンヤが死ぬなんて嫌だ!」
ティアンが泣いていた。青い瞳から涙が落ちる。
「誰か!誰か!ジュンヤを助けてよ!ジュンヤを生き返らせてよぉ!」
気がついていた、でも気が付きたくなかった。さっきからジュンヤはぴくりとも動かないとこも。体が氷のように冷たい事も。
もう…生きていない事も。
「どうして!どうして!誰か!何か!何かないの?!アレン!」
アレンは青い顔で、うつむいた。
「魔王が…生命の種を……」
「黙れっ!!!」
護衛の騎士が言いかけた事を、鋭い声でアレンは制した。
しかし、耳が良い狐の獣人は聞き逃してはくれない。
「生命の種?!それがあればジュンヤは生き返る?!魔王が持ってるの?!魔王って学園の偉い人だよね?!」
そっとジュンヤを置いてティアンは立ち上がった。
「ダメだ!ダメだ、ティアン!君を魔王の所に行かせる訳には行かない!」
アレンは両手を広げて立ち塞がる。
「どうして!どいてよ!アレン!ジュンヤがこのままいなくなって良いの?!」
「それでもダメだ!たとえここでジュンヤを失っても、君を魔王の所へ行かせる訳には行かない!」
「どうして!」
食ってかかるティアンに、喉から搾り出すようにアレンは吐き出す。
「君が!君が、ミーティア・ゼノアギアスだからだっ!君をまた魔王の元に行かせる訳には行かない!」
「え……?」
あまりの内容に、ティアンは呆然とした。
「あの時!歪みの壺ができた時!魔王は君を失って戦争をやめた!君を失ったからやめたんだ!また君が魔王の元に戻ったらどうなる?!また戦争が始まるかもしれない!」
アレンは更に言い募る。
「分かっているのか!君は金陽の剣もその身に内包しているだろう!ジュンヤは死んだ!銀月の剣は失われた!!魔王に対抗できるのはソレルだけになる!その持ち主が魔王に墜ちるなんて事は許されないっ!」
血を吐く。死んでもティアンを魔王の元に行かせる訳にはいかない。
「見ろ!ジュンヤは笑って逝った!あいつは望んで死んだんだ!ルーカスの中で永遠に生きる為に!絶対に忘れられない為に呪いで鎖で繋いだんだ!」
呪い…縛る……鎖。なんでどうしてそんなものがいるんだ。ジュンヤはルーカスが1番だって言ってた。ルーカスだってジュンヤの事が好きなんだ。
なのに、どうして?どうしてこうなる?
「…ダメだ…やっぱりダメだ…こんなのおかしいよ……」
「そうだ……おかしい。でも私は王子だ!平和になりつつあるこの世界に、また戦火を呼び込むことは、絶対に避けなければならない!勇者の死をもってしても!」
おかしいよ、嫌だよ、嫌だよ。だって、好きなんでしょう?どうして死なないといけないの?
一緒にいる事がもうずっとできなくなるんだよ。もう会えない相手を思ってずっとずーっと、顔を覆って泣いているの?
ルーカスは座り込んで泣いている。小さな嗚咽がずっとずっと聞こえる。彼は生きている間、ずっと泣き続けるのだろうか。
自由になった足をたたんで、ジュンヤが彼を想って作ったこの家のこの部屋でずっと泣き続けるんだろうか?
「聞き分けてくれ、ティアン。そして身を隠してくれ。今まではジュンヤと言う勇者が側にいて、君を守っていた。だから魔王も手を出して来なかった。でももう君を守る者はいない」
アレンの言う事は分かる。
「君が…今の君なら魔王に自ら手を貸すことはないと思っている。しかし、支配の魔法で縛られたら、言いなりになるしかない。また黒く染まりたいのか?」
ぞくり、背筋に冷たいものが走った。黒く染まる…なんの事が分からない。でも、何か嫌なことだと自分の深い所で嫌がった。
「でも……」
「君は!また人がたくさん死んでも良いのか!君のせいで!たくさんの孤児たちが生まれるんだぞ!良いのか!」
ゾワっと全身総毛だった。教会の子供たちは皆親が居ない。いつも元気だが、夜になると、泣いている。
おかぁさん…
おとぉさん…
僕は知っている。無理をして笑う幼い子供たちを。でも、でも…僕は…僕は…
<泣いているの?子狐君?>
ぼくのおともだちがしんじゃったの。
<それは悲しいね>
生き返らせてあげたいんだけど、僕が行くとダメなんだって。僕がいくと、みんなこまるんだって。
<そっか。でもそれで良いの?子狐君はそれで良いの?>
やだよ!良くないよ!
<じゃあ~やっちゃいなよ!私は応援しちゃうな!>
そうだよね!分かった!ありがとうお姉さん!
<じゃあお姉さんが最強の呪文を教えて上げる!>
ティアンは顔を上げた。
「アレン、ごめん!」
「ティアン!」
必死で伸ばしたアレンの手をするりと抜け出し、ティアンは滑るように走り出す。
雨は上がっていた。
「違わない……!」
認めたくない、認めたくないんだ。それでも、ジュンヤの目は虚だ。
「違う違う!ジュンヤは…!ジュンヤは…!」
「ジュンヤは…死んだんだ……」
「嫌だーーーー!」
…あら…泣いているのは誰?
「嫌だ!嫌だ!ジュンヤが死ぬなんて嫌だ!」
ティアンが泣いていた。青い瞳から涙が落ちる。
「誰か!誰か!ジュンヤを助けてよ!ジュンヤを生き返らせてよぉ!」
気がついていた、でも気が付きたくなかった。さっきからジュンヤはぴくりとも動かないとこも。体が氷のように冷たい事も。
もう…生きていない事も。
「どうして!どうして!誰か!何か!何かないの?!アレン!」
アレンは青い顔で、うつむいた。
「魔王が…生命の種を……」
「黙れっ!!!」
護衛の騎士が言いかけた事を、鋭い声でアレンは制した。
しかし、耳が良い狐の獣人は聞き逃してはくれない。
「生命の種?!それがあればジュンヤは生き返る?!魔王が持ってるの?!魔王って学園の偉い人だよね?!」
そっとジュンヤを置いてティアンは立ち上がった。
「ダメだ!ダメだ、ティアン!君を魔王の所に行かせる訳には行かない!」
アレンは両手を広げて立ち塞がる。
「どうして!どいてよ!アレン!ジュンヤがこのままいなくなって良いの?!」
「それでもダメだ!たとえここでジュンヤを失っても、君を魔王の所へ行かせる訳には行かない!」
「どうして!」
食ってかかるティアンに、喉から搾り出すようにアレンは吐き出す。
「君が!君が、ミーティア・ゼノアギアスだからだっ!君をまた魔王の元に行かせる訳には行かない!」
「え……?」
あまりの内容に、ティアンは呆然とした。
「あの時!歪みの壺ができた時!魔王は君を失って戦争をやめた!君を失ったからやめたんだ!また君が魔王の元に戻ったらどうなる?!また戦争が始まるかもしれない!」
アレンは更に言い募る。
「分かっているのか!君は金陽の剣もその身に内包しているだろう!ジュンヤは死んだ!銀月の剣は失われた!!魔王に対抗できるのはソレルだけになる!その持ち主が魔王に墜ちるなんて事は許されないっ!」
血を吐く。死んでもティアンを魔王の元に行かせる訳にはいかない。
「見ろ!ジュンヤは笑って逝った!あいつは望んで死んだんだ!ルーカスの中で永遠に生きる為に!絶対に忘れられない為に呪いで鎖で繋いだんだ!」
呪い…縛る……鎖。なんでどうしてそんなものがいるんだ。ジュンヤはルーカスが1番だって言ってた。ルーカスだってジュンヤの事が好きなんだ。
なのに、どうして?どうしてこうなる?
「…ダメだ…やっぱりダメだ…こんなのおかしいよ……」
「そうだ……おかしい。でも私は王子だ!平和になりつつあるこの世界に、また戦火を呼び込むことは、絶対に避けなければならない!勇者の死をもってしても!」
おかしいよ、嫌だよ、嫌だよ。だって、好きなんでしょう?どうして死なないといけないの?
一緒にいる事がもうずっとできなくなるんだよ。もう会えない相手を思ってずっとずーっと、顔を覆って泣いているの?
ルーカスは座り込んで泣いている。小さな嗚咽がずっとずっと聞こえる。彼は生きている間、ずっと泣き続けるのだろうか。
自由になった足をたたんで、ジュンヤが彼を想って作ったこの家のこの部屋でずっと泣き続けるんだろうか?
「聞き分けてくれ、ティアン。そして身を隠してくれ。今まではジュンヤと言う勇者が側にいて、君を守っていた。だから魔王も手を出して来なかった。でももう君を守る者はいない」
アレンの言う事は分かる。
「君が…今の君なら魔王に自ら手を貸すことはないと思っている。しかし、支配の魔法で縛られたら、言いなりになるしかない。また黒く染まりたいのか?」
ぞくり、背筋に冷たいものが走った。黒く染まる…なんの事が分からない。でも、何か嫌なことだと自分の深い所で嫌がった。
「でも……」
「君は!また人がたくさん死んでも良いのか!君のせいで!たくさんの孤児たちが生まれるんだぞ!良いのか!」
ゾワっと全身総毛だった。教会の子供たちは皆親が居ない。いつも元気だが、夜になると、泣いている。
おかぁさん…
おとぉさん…
僕は知っている。無理をして笑う幼い子供たちを。でも、でも…僕は…僕は…
<泣いているの?子狐君?>
ぼくのおともだちがしんじゃったの。
<それは悲しいね>
生き返らせてあげたいんだけど、僕が行くとダメなんだって。僕がいくと、みんなこまるんだって。
<そっか。でもそれで良いの?子狐君はそれで良いの?>
やだよ!良くないよ!
<じゃあ~やっちゃいなよ!私は応援しちゃうな!>
そうだよね!分かった!ありがとうお姉さん!
<じゃあお姉さんが最強の呪文を教えて上げる!>
ティアンは顔を上げた。
「アレン、ごめん!」
「ティアン!」
必死で伸ばしたアレンの手をするりと抜け出し、ティアンは滑るように走り出す。
雨は上がっていた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
340
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる