上 下
34 / 49

34

しおりを挟む
「お、お、おはよう……ア、アナスタシア」

「おは、おはよう、ございま、す。ルイフト様」

 私はまだ王宮から学園に通っている。だから、どうしてもルイフト様と学園へ送ってくださる馬車で顔を合わせなければいけないのだ。は、恥ずかしくて顔を上げられない!どうした、どうしたらいいのかしら!

「ふむ」

 馬車にはスチュアート様も乗っていらっしゃる。何も聞かれないのは正直ありがたいのですが、この空気がいたたまれません、どうしたら、どうしたらいいのでしょうか!

 学園につくと、スチュアート様はすぐにリンデール様を補足していってしまいます。どんな遠くに居てもすぐに見つけるらしいのですが、リンデール様はそんなに輝いていますかしら?私には普通の人間に見えるのですが。
 苺の良い匂いでもするのかしら?

 ……リンデール様とスチュアート様の事もまあ少し気になりますが、それどこではないのでした。私の横をルイフト様は歩いていますが……最近のルイフト様はずっと私と一緒に居るのです。多分怪我をして、その責任が自分にあると思っていらっしゃるからでしょうが……。

 しかしこの距離はちょっと、いえかなり恥ずかしいです。

「あ、あの!アナスタシア」

「はひぃ!」

 ううっ変な声が出てしまいました!恥ずかしすぎます!

「な、なんでも!なんでもない!」

「はひ……」

 恥ずかしさのあまり走って逃げたくなりましたが、逃げ出したら絶対に追いかけてくる気がして、そうすることも出来ず、私達は目も合わせてないのに、ずっとそばにいると言う不思議な距離感で一日を過ごしました。


 王宮での勉強会はお休みになっています。侯爵夫人に怪我はなかったのですが、少し心が疲れているとのことでお休みです。

「あ、アナスタシア、と、図書館に行くのだろう?送って行く……」

「いえ、その、王宮の中ですし、場所も、知っていますから、ひ、一人で行けます」

 うう、まともに顔も見れません!

「駄目だ!どんな危険か潜んでいるか分からないんだから!」

「はい!?」

 王宮ってそんなに危なかったんですか?!

「私の母上みたいなのが、ゴロゴロいるんだぞ!アナスタシアみたいな可愛い女性がいたら、すぐ酷い目に……」

「か、可愛い」

「あ」

 私達はまた音を立てて、赤くなってしまった。


しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

知らない男に婚約破棄を言い渡された私~マジで誰だよ!?~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:876

規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:682pt お気に入り:137

伯爵令嬢は執事に狙われている

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:449

処理中です...