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35 アニーキ?

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 私はちょっぴりだけ期待していたのよ。だってあれだけ熱烈に行かないでと言ってくれたんだもの。
 この猛烈なギルマルド様から少しは私を遠ざけてくれるんじゃないかって、エドガーに少しだけ期待していたの。でもよ?

「あ、兄貴じゃないですか!お久しぶりです!」

「エディか!やはり物腰に品があると思っていたが貴族の子息だったんだな」

 きれいに打ち砕かれたわ。ていうか何?顔見知りなの?

「え、エドガーこちらのギルマルド殿下と既知なのかしら?」

 怖いけれどこういう話は放置するとどんどん良くない方向に転がってゆく。事実関係をキチンとさせてから対応しないとまずいわよね。嬉しそうにギルマルド殿下を「兄貴」なんて呼ぶエドガーに声をかけてみる。そうするとエドガーは目をキラキラ、子犬のような穢れなき瞳でこっちを見る。眩しいわ。

「私がシシリー様の仕打ちに耐えかねて、やさぐれて庶民の酒場に初めて行った日でした。そこで私はこちらのギルさん……いえ、ギルマルド殿下でしたね、彼にお会いしたのです」

「はっはっは、堅苦しいなあエディは。私達は良き理解者になった……友達じゃないか!」

「ギルさん……流石兄貴は違う!」

 師弟関係の様に笑いあう二人に、私は頬が引きつりっぱなしだったけれどそれだけじゃいまいち信じたくないわ……進めてちょうだい。

「そこで私とエディ……エドガー君、だったね。顔見知りになり、シシリー様の素晴らしさについて語り合う仲になったのさ」

「ええ、ただのわがままかと思えばそれは違うと、思慮遠謀があってあの体型も豚じゃあない、全て包み込む優しさのヴェールなんだと気づかせてくれたんです!!」

「すぐにわかってくれて嬉しいよ、エディ」

「兄貴の慧眼には驚かされっぱなしです」

 なんて事なのかしら、結局過去の私のやらかしだったとは……。頭が、頭が痛いわ。

「ご、ごめんなさい。急に頭痛が酷くなったわ……少し休ませて貰うわね」

「はっ!シシリー様!大変だ、誰か医者を、医者をーーーー!」

 とにかくどうでも良いから寝たいわ。

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