【完結】闇暗殺者と入れ替わった社畜の俺を聖騎士様が離さない

10 極、達

　アメジストにちゅーされたのも内心はビビり散らかしていたけれど、口を挟んで来たダイヤモンドにも実はめちゃくちゃビビった。何であいつが絡んでくるんだ？？
　ダイヤモンド・シグクレイ。鍛冶屋の最上職技工士マーシナリー。武器や防具の加工に止まらず、「機械」を生み出しちゃう職業。その「極」っつーもんだから、生産職のくせに馬鹿みたいな戦闘力も持ち合わせている。

　ダイヤモンド……鍛冶屋の、ダイヤモンド……ダイか！　あいつは街の鍛冶屋の息子ダイだ。いつも火傷をしていてマークで毎日巡回するコースに入っている……あいつも俺がマークって気づいているのか？？
　ちらりとダイヤモンドの方に目だけ向けると俺に向かって投げキッスを放って来てる、何してんだ？　てかアレは気づいてないな？　ただ単にマラカイト・凛莉の気を引きたいだけだな。
　視線を元に戻すとテーブルに突っ伏して

「やーん、振られたぁ」
「静かにしろ！　ダイヤモンド」

　フロウライトに叱られてる。そこから皆静かになってフロウライトの報告を聞き始める。内容はいつも通り、横暴な冒険者が増えていることに関する懸念だ。ただ、最後にフロウライトのやつは爆弾宣言をした。

「迷惑をかける冒険者には極に立つことは許さないことにしたい」
「へえ！　良いじゃん」
「ほう」

　フロウライト以外全員だるそうに聞いていたけど、最後の提案に感嘆の声を上げた。良いね、因果応報だ！俺もまったく表情は変わらないけれど、内心でステンディングオベーションした。

　極。ゲーム内でつい最近実装された今までの一つ上の職業。俺達の体系でいけば盗賊シーフから転職を繰り返し闇暗殺者ダークアサシンになる。なった時点で相当な強さを発揮し、国家戦争を左右するほどの戦力を持つと言われているが、その闇暗殺者のすべての技能を納め、最高レベル255に達したプレイヤーが極転職キャラクターに転職試験を受けることを許可され、合格した場合に初めてなれる職業になっている。
　極になった時点でレベルの上限が255から400に上がって、それに伴い強さの桁が変る。一人で一国の戦争を止めることができると言われている……というかこの場にいる奴らは止めることができるな。
　正体が良く分からない奴らも多いけれど、聖職者の極なんて真っ白い羽根に頭に天使のわっかをつけた完全に天使族で人間じゃないし、魔法使いの極は対極の真っ黒な羽とネジくれた角を生やした天魔族だ、人間じゃない。ちなみに天魔族は魔族じゃなくて友好種族だから良い奴らだ。顔は美形が多いし、飛ぶためなのか体が細くて華奢で大人気だったりする。
　あとは正体を隠したがっているやつらばっかりなので、測りにくい。こっちから探りを入れるということは、向こうからも探りを入れる口実を与えることになってしまう。余計なやぶは突きたくない……。

　で、そんな強さの上限を突破させるための極になる試験すら受けさせないというのだ。そしてこの情報はプレイヤーには伏せられる……つまり、レベルが低いうちにいきって迷惑行為をした奴らは強くなり強さが限界にきて、極への転職が見えた時点でその道が絶たれていることにやっと気が付くんだ。いいザマだ！
　それまで時間も金も労力もたっぷり手塩にかけて育てたキャラが、最上級職になれないなんて滑稽じゃないか。フロウライトも良い事をいう！

　この取り決めは全員一致で可決された。あー……いい気味だ！