【完結】闇暗殺者と入れ替わった社畜の俺を聖騎士様が離さない

鏑木 うりこ

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82 浮気は死

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「まあ良いでしょう。フロウライト・アイアンメイデン、マラカイト・凛莉、こちらへ」

 なんで? と態度で示したがお隣の石頭には通じないし、絶対正義みたいなパールホワイトにも通じない。やだこの人達!パールホワイトが見下ろし易い近くに来いと?なんでだ、引っ張るな! フロウライト。お前もなんで手を離さない?なんなのーっ!

「フロウさん、理由を」
「フロウライト、何も伝えていないのか?それに凛莉、お前は鈍いのか?」

 なんで呆れたような目でパールホワイトに見下されなきゃならんのだ。結構ムッとするんだけれど?!相変わらず、フロウライトは無言だし、パールホワイトはやれやれとわざとらしく肩を竦めている。流石に腹が立ってくる。

「まあ良い、始めよう。凛莉に消えられると面倒だ……では神の御心、神の計らい、神の定め給う運命をしかと受け止め、それに沿うが人なれば違うこと叶わず」

 パールホワイトの言葉に神聖力が溢れている。ぞわりと背筋に恐怖が走るような心地がする……いや、これはただの恐怖じゃない。人の手に余る大いなる力の流れに本能が畏れ慄いている感覚。身構え、ぎゅっと身を硬くしかけてやめた、フロウライトが一瞬だけ握った手を強めて、そして元に戻したから。大丈夫だ、何も害はない。正しく言葉を聞けばいい、そう言っているように感じたからだ。
 大丈夫なのか?と思ってみれば畏怖はあれど、こちらを攻撃しようという意図はないような気がする。相手がただただ大きすぎる故の恐怖であり、こちらを害する気はない……むしろ親しみと寿ぎしかないように感じる。

 え? 祝われてんの? なんで?

「幾久しく共にあるよう、死が二人を分かつまで」
「は?」

 あ、パールホワイトの目が滅茶苦茶怖い……軽蔑しきった目だぞ、なんでだ!!

「凛莉、お前がそこまで鈍いとは知らなかった。分かった、悪かった。はっきり言おう。〈ご結婚おめでとうございます〉」
「は?」
「私が取り次ぎ神と誓約したから違えることはできない。浮気は死」
「は?」
「それはそれは惨たらしい最期を迎えることになる、違えればヒトの原型はなくなる。体中の穴という穴から血を吹き出し……」
「やめろ、パールホワイト。お前何言ってんの?」
「神を裏切りし、人の末路だが??」
「いやそうじゃなくて! 何!? 結婚って何!?」
「今朝早くフロウライトが是非頼むと大金を積んだし、主神より神託があった故に執り行ったが、なにか問題でも?」
「聞いてねえ……」
「今、聞いたな。良かったな」
「……パールホワイトお前、澄ました奴だと思ってたら意外と面白い奴だな」
「私も何故、凛莉があれほど神より愛されているか大変不満。お前特別扱いされ過ぎだ、嫉妬する、お前嫌い」
「好かれちゃ迷惑だ」
「お前嫌い。さっさと帰れ!」

 えーなんだなんだ、すげえ理不尽だろ! 神が特別扱い……ああ、凛莉師匠と俺を入れ替えたのはきっとその神とやらなんだろう……何を思ってそうしたかは未だよくわからないが、特別扱いということか。
 とりあえず、大量の情報が一気にやって来た……手を付けやすい所から処理していくか。祭壇の向こうで威嚇する犬よろしくこちらをみて睨みつけているまな板。やーい、絶壁ぃ。

「凛莉、お前失礼な事考えてる!がるる……!」
「……」

 パールホワイトは置いておこう。あいつ女性キャラ人気投票でかなり上位にいる奴なのにどうしてああなのか……。俺にはあいつの良さがさっぱりわからない、貧乳だし。それが良いのか? 俺、巨乳派。相入れない。

「……フロウ……フロウライトさん」
「……」

 ずっと手を握ったままなのだが、一言もしゃべらない俺の筋肉巨乳を見上げるとなんか泣いている……何故。

「お前、どうしたの……」

 つい口調がマークから凛莉に戻っているけれど、この場には俺達とパールホワイトしかいないから大丈夫だろう。

「神よ……感謝いたします……!これで私達はずっと一緒だ」
「……え?」

 そういえばなんかとても重い誓約だった気がする……えっ、結婚ってそんな風だっけ?浮気は死とか、どうなってるの??
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