黒竜はご飯が食べたい

ゆみ

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一章

3・3分の2は全裸

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天界の森の中、黒竜と女神は話し合いをしていた。黒竜は後ろを向き、女神は木の影にかくれながら。
第三者が見たら「かくれんぼ?」と聞きたくなる光景だ。
更に異様な事に…話し合いの参加者は全裸だった。

黒竜は仕方ない。人間に近い姿をした竜人族は服を着るが黒竜は竜族。服を着る文化がなく、そもそも着る意味がない。人化魔法という例外はあるが。

女神は天使に服を持ってくるように頼んだ。
天使は「色々言いたい事がありますが…」と言いながら服を取りにいった。

「てな訳で人間に転生させてくれ」

「良いよ~」

女神は全力で職権乱用した。

「でもいくつか注意事項があるわ」

「ふむ?」

女神は真面目な顔をしながら言った。黒竜には見えていないけど。

「一つ。何処に転生するかは分からないわ。一応時間をかければ出来るけど?」

「今直ぐお願いします」

「二つ。転生後の性別は『女』になるわ」

「俺雄なのに?」

「転生後も雄の方が楽なんだが」と言いながら女神に聞く。

「黒竜君、魔法下手で人化魔法で女の子になっちゃうでしょ?で、『一応人だし、このままでいいや』って放置していたのが原因よ。簡単に説明すると、そのせいで魂の形が『人間になるなら女』に固定されてしまったの」

「人間の雄と雌で味覚は違うのか?」

「同じよ」

黒竜にとって一番重要な所は大丈夫な様だ。その事に安堵していると女神が次の注意事項を言った。

「三つ。転生後、少ししたら人間じゃなくなるわ」

「えぇ…。何故に?」

「初代竜王…黒竜王の魂だからね、人間になっても色々と影響出ちゃうのよ。でも味覚とか見た目は変わらないと思うから大丈夫よ。」

「なら良いや」

「せいぜい竜の羽とか尻尾が出し入れできたりとか、力が人間と比べてアホみたいに強いとかかな?まあ、今よりは確実に弱くなるけど」

「ふーん」

黒竜は(竜人族みたいなものか?)と思った。人間に竜の羽と尻尾を生やし、個体によっては鱗もある姿を想像する。

「一応割合的に三分の一が『人間』で、もう三分の一が『竜』。残りが『その他』になるわね」

「その他って何だよ?」

「難しいし長くなるけど聞く?」

「遠慮します」

「四つ。転生したら黒竜君の今の体は仮死状態になるわ。カビとかキノコとかが生えてくるかもしれないから注意してね」

「そこは妹か従者に頼むか」

「最後。転生の事、ちゃんと皆に言って来てね。その間に転生の準備しておくから」

女神との話が終わり、黒竜は空を見上げ翼を羽ばたかせる。

「行って来まーす」

女神は黒竜が飛び立った時の衝撃を結界を張り防いだ。流石幼なじみ、こうなる事が分かっていたようだ。
しかし分かっていない者が一人空にいた。女神の服を持ってきた天使は衝撃をもろに受けそのまま落下していく。
運が良いのか悪いのか、天使は女神の近くに落ちた。だがお世話係のプライド故か手にした服は汚れておらず、傷一つなかった。
この時、天使と森の木々や草花達の想いが一つになる。(来るときは出来たんだから、帰りも気をつけて下さい)と。
転生してご飯を食べる事で頭がいっぱいな黒竜にこの想いが届くことはなかったが。



女神は天使に服を着せてもらっていた。自分一人でも着れるのだが主神っぽいからと天使にやらせたのだ。

「女神様、よろしかったのですか?」

「何がー?」

事の重大性に気づいていないような言い方に天使は呆れつつ答えた。

「黒竜様が天界から居なくなれば大変な事になりますよ。いえ、黒竜様は人間になるのですから余計に酷いです。最近地上では魔王が封印された魔神を復活させようと動いています」

「みたいね」

「魔神の封印されている場所を知っている女神様を狙って魔王は天界に攻めて来るかもしれませんよ!守備の要である黒竜様も居ません!」

(封印場所、殆ど忘れちゃったけど黙っておこう)

駄女神爆誕である。唯一の救いは天使が気づいていない事だった。

「他の神様達は仕事があって、こちらの事まで手をまわせないはずですし…!」

女神の創った神々の仕事は世界の維持。多少は大丈夫だが長く離れると世界が荒れてしまう。
もし魔王達が天界に攻めてくるなら神々への対抗手段はあるはずだ。そうなれば長期戦となり世界が荒れてしまう。
ちなみに女神の戦闘能力はかなり低く、腕力に至っては10歳の女の子並みであった。回復・サポート特化型な女神様だった。幼女並みな腕力……それで良いのか生命の女神?

ヒロインはか弱いものよ。by生命の女神

「封印場所は黒竜君も知っているはずよ?(忘れてるだろうけど)」

昔、女神と黒竜は協力して魔神を封印していた。勿論天使もその事は知っている。

「あのですね女神様。黒竜様から封印場所を聞き出されるかもしれないんですよ!むしろ人間になった黒竜様の方が天界を攻めるより簡単です!」

「大丈夫だって。黒竜君は弱くなるけど、黒竜君の従者達はそのままなんだよ?魔王のせいで黒竜君に何かあったら、あの集団絶対魔王殺しに動くわよ」

「それは…そうですが」

天使は黒竜の従者達を思い浮かべた。すると不安感なくなり(あれ?何とかなりそう)と思えてくる。黒竜の従者達は頭がおかしい事で有名だ。

黒竜には一匹の妹と四人の従者がいる。
それぞれが神と同等かそれ以上に強く、もちろん女神では歯が立たない。女神は自己再生能力が高いので負けることはないが…一方的にボコボコにされるだけである。
本当にそれで良いのか生命の女神。主神なのに…。

「それよりも転生の準備しないとね」

女神は天使を伴って宮殿へと向かった。
衝撃で荒れ果てた森をそのままにして。



「あ!天使ちゃん、森の整備よろしくね」

「はい?」




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